一層表現力が増すエディットとエフェクター
パッドに読み込んだループは、「SLICE EDIT」、「EDIT」、「EFFECTS」、「STEP EDIT」を使用することができ、簡単な波形編集とエフェクト処理が行えます。
BEATSCAPEにあらかじめ用意されているループ(ライブラリ)は、どれもサウンド・クオリティが高いので、そのまま使ってもまったく問題ありませんが、これらの編集機能やエフェクトを利用することで、より表現力を高めることが可能となるのです。
●SLICE EDIT

▲画像9:SLICE EDITの画面
この画面では、波形やスライスの状態を確認できるだけでなく、ループ再生させる長さや、波形そのものの編集も行えます。
・ループ再生の長さを変更する
画像9の素材は、「32拍=8小節」のループですが、画面右の青い縦線を移動するだけで、短いループを作ることが可能です。それでは実際に、ループの長さを8小節から2小節に縮めてみましょう。
・波形を編集する
スライスされた波形は、無音にしたりリバース(反転)させたり、波形を入れ替えるなどの編集が可能です。ここでは、5拍目の波形をリバースさせてみました。キックの波形が反転してアタック感が変わるので、ちょっとしたアクセントに使えますね。
楽しくてどんどん編集しちゃうと思いますが、編集し過ぎて音がおかしくなった場合は、迷わず「Revert Edits(元に戻す)」ですね(笑)。
●EDIT&PAD SETTINGS

▲画像13:EDITの画面
「Pan(定位)」や「Transp(トランスポーズ)」、「Tune(音の高さ)」、「Swing(スウィング感)」など、サウンドの基礎的な編集が行えます。また[PAD SETTINGS]セクションの「Speed」では、再生スピードを変更することも可能です。これらの編集機能で、ループのようなオーディオ素材でもMIDIデータのように扱えるのが面白いですね。
それでは、今回使用しているビートの「Swing」と「Transp」の値を変更して、その変化を確認してみましょう。

▲画像14:「Swing」と「Transp」の値を少し上げてみました。スウィング感が強めの、やや変わったビートになりましたね。
[PAD SETTINGS]セクションについては、前回も一部を紹介しましたが、ここではループの再生スピードについて説明します。
「Speed」は等速(×1倍)、半速(×0.5倍)、倍速(×2倍)のいずれかをセレクトできます。では、試しに再生スピードを半分にしてみましょう。

▲画像15:「SPEED」を「.5×」に変更するとBPMが半分になります。ブレイク・ビーツが、バウンス・ヒップ・ホップみたいになっちゃいました。
BEATSCAPEの再生スピード・コントロールは、いわゆる"オーディオ・ストレッチ"とは違う技術が使われているので、再生スピードを半分にしてもサウンドのクオリティーが劣化しません。これは大きな特徴ですね。
●EFFECTS

▲画像16:EFFECTのメニュー。18種類のエフェクトを搭載。
BEATSCAPE内の処理で、最大3つのエフェクトをかけることができます。コンプやディレイなどの定番エフェクトから、モジュレーション系、フィルター系など、全18種類が用意されています。次のサンプル音は、今回ずっと使っているループにエフェクトをかけたものです。エフェクトだけで、ここまでガラッと雰囲気を変えることができるのです。
●STEP EDIT
「Pan(定位)」や「Volume(音量)」、「Cutoff(フィルターのカットオフ周波数)」など、5つのパラメーターの値をステップ・ジェネレーターに書き込むことで、時間軸に合わせてサウンドを変化させることができます。
実際にCutoffを書き込んで、サウンドに変化を加えてみましょう。ここでは、Cutoffの値がだんだん上がっていくように書き込んでみました。この効果を覚えてしまうと、ダンス・ミュージックを作る際に欠かせないツールとなるでしょう。
こちらも、編集し過ぎて意味不明の音になってしまったら、迷わず「Reset Steps」を実行しましょう!(笑)
自分が持っているサンプル素材を
BEATSCAPEにインポート&エディット!
BEATSCAPEは、4GBにも及ぶ膨大な付属ライブラリ以外にも、お手持ちのRX2ファイル(ループがビート単位でスライスされたREX形式のファイル)やWAVファイルをインポート(取り込み)して使用することができます。
試しに、以前に自分で作ったWAVファイル(BPM80のビート)をインポートしてみました。
インポートの方法は、画面左エリアで[User]を選択し、取り込みたいファイルをそのエリア内にマウスでドラッグ&ドロップします。これでインポート完了です。今回は、SONAR 8の外からインポートしてみます。
インポートされたファイルは、「IMPORTED」というフォルダの中に入れられます。今回インポートしたファイルは、スライス処理がされていないWAVファイルでしたが、パッドに読み込んでみると、ちゃんとスライスされていることが分かりますね。
では、BPMをオリジナルの「80」から「120」に変更して聴いてみましょう。随分とスピード感が増しますね。それでも、音質の劣化がないのがさすがです!
最後に
前回から引き続き読んでくれた方は、もうすっかりBEATSCAPEを使いこなせるようになっているのではないでしょうか!? いや、ぜひともそうなって欲しいという想いで、いつもよりもたくさん書いてしまった気がします......。それでも、まだまだBEATSCAPEのすべてを紹介しきれていないのですが(例えば、16パッドを外部にパラ出力できたりだとか)、おおよその主要な操作方法は紹介できたと思っております。
ソフトウェアながら、ハードウェアのサンプラーのように、太く迫力のあるサウンド。リアルタイムに、テンポよくビートを組んでいけるのは痛快ですし、ループをスライス単位でコントロールできたり、編集機能でさらに踏み込んだ音作りも可能だったりと、まさに至れり尽くせりのループ・パフォーマンス・インストゥルメンツ......。我々の中ではすでに定番ツールとなっていて、BEATSCAPEで素早くビート組み、SONAR 8のフリーズ機能を使ってオーディオ編集するという手法が、もはやスタンダードな手法となってきています。
BEATSCAPEは、これまでのSONARにバンドルされてきたプラグイン・シンセの中でも異色なタイプなので、ひょっとしたら"食わず嫌い"で手をつけなかった方もいるかと思いますが、とても面白く、しかも超実用的なソフトウェア・シンセです。ぜひ、トラック制作に活用してみて欲しいと思っています!
T:2回に分けてお送りしたBEATSCAPE大解剖スペシャル。改めてその特徴をまとめてみると、本当にいろいろなことができるソフトウェアであることが分かりますね。
Y:録音したラップの一部をインポートして、チョップド・アンド・スクリュー(あえて再生スピードを落として間延びさせるヒップ・ホップの手法のひとつ)みたいなことも可能だと思うし、まだまだ面白い使い方はありそうです。
T:今後の連載の中でも、BEATSCAPEを使った小ネタを紹介できればといいな、と思っています。
Y:それでは次回は、SONAR 8に新しく搭載されたエフェクターに迫ってみようと思います! ではまた!!!


profile:BLIND LOOP MASTER(鈴木貴幸/鈴木善典)
2000年、岩手県盛岡市で鈴木貴幸、弟の鈴木善典、佐々木崇により結成。ヒップ・ホップ、ブレイク・ビーツを中心に様々な音楽を吸収し続け、従来のヒップ・ホップ・ユニットとは違った独自のユニットに発展。2004年にCDデビュー。アルバム『クロスロード』では、最もリスペクトするマッシヴ・アタックの元エンジニアでブリストルを代表するアーティストALPHAをゲストで迎えている。現在は、DJやライブのみならず、プロデュース、リミックス、CM音楽の制作、執筆など多岐にわたり活動を継続。WINDOWSマシンでの楽曲制作においては10年以上のキャリアがあり、メイン機材としてCakewalkシリーズを使用。現在は「SONAR」シリーズを使用し、レコーディングからミックスまで行っている。また鈴木貴幸と善典の両氏は、プロデュース・ユニット"OKYD(オーケーヤード)"としても活動しており、ラバーズ・ロック・スタイルによるJ-POPカバー・アルバム『This is Japanese Lovers Vol.1~Cover』をトータル・プロデュース。2008年3月26日には、次作『Lovers Style』がリリースされた。同年7月23日にはその第2弾として『Lovers style-memories of summer breeze』が発売。SONAR 7を核として制作が行われ、J-popの夏の名曲をスゥイートかつエレクトロニックなラバーズ・ロック・スタイルのレゲエミュージックとしてカヴァーしている。J-POPカヴァー好きやレゲエ好きはもちろんのことSONAR 7で作った音に興味があるという人にもオススメなアルバムとなっている。
http://blindloopmaster.seesaa.net/
Blind Loop Master Myspace:
http://www.myspace.com/blindloopmasterdotjp









