mnavi Interview

Vol.3 Plastic Tree(ササブチヒロシ/ナカヤマアキラ) 機材に使われるのではなく、「自分の想像したものを表現するんだ」という強い気持ちで最新機材を活用すれば、もっと人の心を動かせる音楽が生み出せると思います。

1997年の1stシングル「割れた窓」のリリース以来、今年でメジャー・デビュー10周年を迎えたPlastic Tree。多彩な音楽からの影響を独自の世界観で消化した唯一無二のサウンドは、国内はもとより、海外でも高い評価を受けている。その進化形が、6月にリリースされた『ネガとポジ』だ。ここに収められているPlastic Treeの音楽は、一体どのようにして生み出されたのだろうか。ドイツ公演から帰国したばかりのササブチヒロシとナカヤマアキラの2人に、Plastic Treeマジックの秘密を解き明かしてもらった。

ひとつのバンドで迎えた10周年。こんな記念めいた忙しさは、気持ちいいですよ(ナカヤマ)

─ ドイツでのライブは昨年に続いて2度目ということですが、現地の反応はいかがでしたか?

ササブチ(以下、S):昨年は、何もかもが初めての状況でしたが、今年はライブの数日前とはいえ、欧州でもCDをリリースしたうえでのライブでしたから、多くの方に興味を持ってもらえたようで、観客もたくさん集まってくれて、楽しくライブをすることができました。

ナカヤマ(以下、N):今回は、手持ちの機材もかなり減らして、大半を現地でレンタルしたんです。ドラマーは機材を現地レンタルすることに慣れているでしょうけど、僕はギターまでレンタルするのは初めての経験で、ある意味、とても面白かったですよ(笑)。

S:現地でレンタルした機材のほうが、自分の楽器よりも良かったりしてね(笑)。

─ 今年はメジャー・デビュー10周年ということで、9月の武道館公演など、これまで以上に精力的な活動を展開していますね。

10周年について語るナカヤマ氏

N:"10周年"という冠を掲げちゃった以上、ただの武道館ライブでもなくなってしまったりして、今年はいろいろと大変です。特別"10周年"を掲げないでスルーしておけば、平年並みの忙しさですんだんでしょうけどね(笑)。でも、こういう記念的な仕事というのもなかなかいいものだなと、最近は感じています。10年って、ひとつのバンドではなかなか到達できない時間ですからね。これから先、もし新しいバンドを組んだとしても、もう10周年というのはあり得ないでしょうから、こういった忙しさは、やり甲斐もありますし、充実していて楽しいですよ。

ナカヤマ氏メインギター

▲写真1:ナカヤマ氏のメインギター、Washburn/ヌーノ・ベッテンコート・シグネチャー・モデル。15年ほど前に購入したもので、ほぼPlastic Treeの歴史と同じ期間愛用しているギター。「もう、音がどうこうといった細かいこと以上に、家族の一員みたいなギターですね」(ナカヤマ)。

─ その記念の年にリリースされたアルバム『ネガとポジ』は、実にドラマチックな楽曲揃いで、しかもメロディアスな曲からデス・メタル調のハードな曲まで、実にバリエーションも豊かですが、ナカヤマさんはいつもどのように曲作りをしているのですか?

N:僕は、今でもカセットを使っているんですよ。ギターを持って、思い付いたフレーズを鼻歌を歌いながら演奏してカセットにスケッチするんです。そこから、その素材を持ってすぐにPCに向かう場合と、1週間程度の時間を置いて、改めて判断する場合がありますが、いざPCで作業を始めたら、ひとまずメンバー想定しながら曲の頭から最後までザックリと形を作ります。メンバーなら、これくらいのことはできるであろうという想定のもとでフレーズを作っていくんです。ですから、デモの段階では、ドラムは凄く難しいんですよ(笑)。

─ そうして作ったデモをメンバーに配るわけですか?

N:バンド内のデモ発表会があるんですよ。「みなさん、この日までに曲を作りましょう」っていう日程が設定されて。そこにみんなドキドキしながら、自分のデモを持ち寄るわけです(笑)。

─ その際のデモ完成度というのは、どの程度まで仕上げているのですか?

N:そのままいってもいいし、バンド・アレンジで変わってもいいし、という、どう転んでもいいような状態ですね。結局、4人でスタジオに入ることを前提にデモは作っていますから、スタジオでバンド・アレンジする余地は残しています。

シーケンスと仲良くするためには、自分のグルーヴをよく知ることが大切(ササブチ)

─ ナカヤマさん作曲の「オレンジ」などは、ドラムがとても"歌っている"という印象を受けましたが、こういったフレーズもバンド・アレンジで生み出したのですか?

ドラムについて語るササブチ氏

S:全部、自分で考え出します。でも今回は、これまで以上に自分の直感を大切にしてレコーディングしていったんです。ギターのフレーズやベースのプレイなど、バンドで音を出すと譜割などがデモとは変わってくるじゃないですか。それを自分の耳で聴いて、身体で感じて、そこから自然に出てくるフレーズを詰め込んでいった、という感覚です。

N:もちろん、デモはPCで作るのでスクエアなリズムで打ち込みますが、だからといって、スクエアなプレイを求めているものではなく、やっぱり人間がプレイするわけですからね。そういう意味では、想定した通りの仕上がりになりましたね。

─ この楽曲にはシーケンス・フレーズも入っていますが、ロックの中で生ドラムとシーケンスを融合させるポイントは、どこにあると感じていますか?

N:確かに、シーケンスと仲良く叩けないドラマーもいますよね。ブチオ(ササブチ氏)はクリック聴きながら、シーケンスと仲良くしてくれますけど。

S:ライブの時は、実はシーケンスは自分のモニターには戻してないんです。バンドの出音をモニターして、ヘッドホンで聴いているのもクリックだけなんです。もちろん、クリックに対してどういうシーケンスが入っているのかは、事前にチェックはしておきますけどね。

─ それは、どういうことですか?

S:つまり、シーケンスの音の位置を把握しておくわけです。僕は、クリックのジャストなタイミングに対して、自分の手の動きはこのくらいのタイミング、足はこのくらいということを理解できているんです。いわゆる、グルーヴですね。それが分かっているので、そこからシーケンスと仲良くするために、じゃあ手は気持ち早めに、足はこう、と補正していくんです。それとは逆の発想もあって、自分のグルーヴにシーケンスのほうを合わせ込んで作ってもらう場合もあります。その場合は、自分はクリックに専念して叩くというスタイルですね。

─ クリックに対するグルーヴは、SONARなどのレコーディング・ソフトに録音して、波形でチェックするのですか?

S:波形を見ることもありますけど、基本的には音でチェックします。

N:おそらく、アマチュアのバンドマンって、必要以上にクリック、つまりレコーディング・ソフトの画面上の"グリッド"を意識し過ぎるんだと思いますよ。グリッドに騙されてしまう瞬間なんでしょうね。PCのディスプレイ画面ばかりを見ていると、グリッドに合っていることがいいプレイだと思いがちですが、でも、音楽を聴く人は画面を見ているわけじゃないですから。バンドで録音して、「みんなグリッドに揃ってないぞ!」とか言い出す前の、楽しい気持ちで演奏しているほうが、絶対に音楽になっているんですよ。シーケンス・フレーズはタイミングを細かく作り込めるから、特にレコーディングではバンドのグルーヴを大切にして、それに対してシーケンスを組み立てていくという考え方もいいと思いますよ。その反対に、ライブでは疲れ知らずでビートをキープしてくれる便利なツールとして活用するというスタンスにシフトしていくのも面白いと思うし。

S:一度、ローランドの大昔のリズムマシンCR-78を使ったことがあるんです。これって、リズムマシンなのにリズムがヨレるんですよ(笑)。でも、それが凄く気持ちよくて、クリックなしで、CR-78の"チキチキポン!"っていうリズムを聴きながらレコーディングしました。でも、やってる曲はハード・コア、みたいな(笑)。でも、いいグルーヴでしたよ。

─ ちなみに、クリックにはどんな音色を使っているんですか?

S:カウベルを4分音符で鳴らすことが多いです。僕は、スティックの音がダメなんですよ。スティックの音色だと、響きが残る感じが気になって、どうもうまくリズムが取れないんです。それに、カウベルよりも音の芯が柔らかいし。ですから、クリックに合わせづらいと感じているドラマーは、音色もいろいろと試してみるといいですよ。あと、ドラムの入りとかエンディングの合図に、アキラがクリックの音色はそのままでピッチを変えて入れておいたりしてくれるんですよ。

N:そうしておくと、ドラマーがある程度熱くなっていても、冷静に終われるんですよ。「ハイ、ココで終わりですよ!」って(笑)。

Animagic2007でのライブ・ステージ

▲写真2:7月28日にドイツ・ボンで開催された『Animagic2007』でのライブ・ステージ