mnavi Interview

Vol.04 山中千尋 「音楽が大好きで “自分でも真似して楽器を弾いてみたい”とか “歌ってみたい”とかそういう気持ちがあるっていうだけで、とてもステキなことだと思います。」

ニューヨークを拠点に、世界中を飛び回って音楽活動を展開するジャズ・ピアニストの山中千尋。ソロ活動は主に、ジャズの伝統的編成であるピアノ・トリオで行っているが、彼女自身はクラシックとジャズの広範な知識と演奏能力を持ち、ロックやポップス、テクノなど、幅広い音楽にも強い興味を示しながら、ジャズの枠組みには到底収まらない、新鮮な音の世界を生み出している。とはいえ、彼女の音楽はいたずらに難解な芸術音楽ではなく、とにかく聴いて楽しいのが大きな特徴だ。8月に発表されたばかりの新作『アビス』は、これまで以上にバラエティに富んだ一大エンターテインメント作品に仕上がっている。今回は、美しい音色の持ち主でもある彼女に、ローランドピアノ・デジタルRG-3Mを試奏していただきながら、お話をうかがった。

スタジオでしかできない作業で幻想世界を創り出すように工夫してみました

─ 新作『アビス』は、編成としてはピアノ・トリオによるアルバムですが、曲のバリエーションが豊富で、とても楽しいですね。

山中千尋(以下、Y):ありがとうございます。今回のレコーディングでは、ピアノ・トリオというよりもむしろ、バンドとして音を作り込んだんです。シカゴ風やエルトン・ジョン風、トッド・ラングレン風の雰囲気も取り入れています。トリオでさらりと演奏したジャズの曲や、コラージュ的な手法を取り入れた曲もあって、全体として華やかさを出せたと思います。

─ シカゴの「サタデー・イン・ザ・パーク」が突然始まったかと思うような曲もあって、面白いですね。

Y:あれは一種のパロディなんですけれども、この素材はどんな状況で使ったらおかしいかを考えたんです。あの後、凄くカッコ良くドラムが入ってくるので、それを私なりにちょっとユーモラスにするというか……本当はドラム・ソロとかもフィーチャーしたかったんですが、それはライブで、違う形でやろうと思いますが、アルバムではスタジオでしかできない音楽というのを半分ぐらい入れたんです。レコーディングは私にとってひとつのチャレンジなので、演奏は生ですが、スタジオでしかできない作業で幻想世界を創り出すように工夫してみました。ちなみに、エレクトリック・ピアノ以外のキーボードの音は、全部ローランドの楽器です(笑)。

─ スタジオ作業を駆使した曲の合間に、思いっきりストレートなジャズの演奏が入っていますが、とても効果的ですね。

Y:今回のリズム・セクションは、普通にジャズをやると物凄くうまいので、一応、「私たちジャズのトリオです」っていうところも押えておこうと思ったんです(笑)。

─ 「フォー・へヴンズ・セイク」は、ピアノの小さな音が凄くきれいですね。

Y:バラードは少し抑えて弾くのが好きなんです。バラード以外の曲だと、どうしても弾き過ぎちゃうので(笑)。

─ いろんなタイプの曲が盛り込まれていますが、アルバム全体を通して聴くと、物語の流れのようなものが感じられますね。

Y:私自身、できあがってみるまでどうなるか分からなかったですけれどもね。

─ 今までのアルバムの中で、一番いろいろなことをされているんじゃないですか。

Y:わりと振り切れたアルバムっていう感じはしますね(笑)。でも、自分が聴いたことのない音楽を作ってみたいなと思っていたので、作業をしているときは楽しかったです。

RG-3Mはクリーンな音がきちんとしているというのがとてもいいと思います

─ ローランドピアノ・デジタルRG-3Mを試奏された感想はいかがですか。

ローランドピアノ・デジタルRG-3M

▲ローランドピアノ・デジタルRG-3M

Y:サンプリングの倍音が凄く豊かで、とてもリアルだという印象を受けました。キーボードは仕事でよく使いますが、ピアノの音というのは、弾いたつもりの音と聴こえてくる音とがあまりにも違って混乱するので、普段はあまり使わないんです。でも、RG-3Mの音だと使っても気持ちいいかなって思いますね。電子ピアノだっていうことをあまり意識せずに使えるような気がします。

─ アイボリー・フィールの鍵盤のタッチに対する反応はいかがですか。

Y:凄く自然な感じがします。ペダルの反応もとてもなめらかですし、鍵盤も気持ちいいですね。

─ エレクトリック・ピアノの音はいかがでしょう。

Y:非常にコンディションのいい、クリーンなエレクトリック・ピアノの音がします(笑)。機械式の発音機構を持つエレクトリック・ピアノは個体差が大きくて、レコーディング・スタジオに置いてあるものでも使えなかったりするんですね。その点、RG-3Mはクリーンな音がきちんとしているというのがいいと思います。ハープシコードやビブラフォンは、もともとローランドの音が凄く好きでよく使っています。

─ 調律も平均律だけじゃなく、純正調などの古典調律に切り替えられるようになっているんですよ。

Y:えぇ!? そうなんですか! ハープシコードは湿度に弱い楽器なので、こういう電子楽器があるといいですね。今、バロックも結構流行っていますし。

─ ライブで使えたらいいなとおっしゃっていましたが。

Y:ジャズの場合はドラムと一緒にやるので、ピアノの音もアンプで増幅することが多いんですね。だから、アコースティック・ピアノを使っていても音が変わってしまうので、それだったら逆に、RG-3Mみたいな電子ピアノを使ってもいいと思います。あと、気持ちのいいリバーブがかかるので、お部屋で弾いてもちょっとしたホールのような感覚が味わえて、凄くいいと思います。サイズも小さくて、仕上げもきれいですから、お部屋に置くのに向いていますね。リビングに置いて、映画を観ながら自分で伴奏を付けてもいいでしょうし。

─ 演奏データがMIDIで記録できるというのも、作曲やアレンジには便利だと思うのですが。

Y:私は作曲する時にはピアノを使いませんが、アレンジの時には、MIDIデータをそのままほかのシーケンサーなどで利用できて便利ですし、MIDIファイルを電子メールに添付して送れば仕事がすんでしまうこともあると思います。あと、アメリカでは、お誕生日に曲をプレゼントすることも多いので、例えば自分の好きな曲を弾いて、お友だちに電子メールに送ってあげるのも楽しいんじゃないでしょうか。

─ なるほど。そういう楽しみ方もありますね。