mnavi Interview

Vol.05:beatmania ⅡDXサウンド・クリエイター:dj TAKA/L.E.D./DJ YOSHITAKA/Sota Fujimori
 「自分の作った楽曲が受け入れられたりハジかれた時に、「なぜか」を考えることが、アマチュアとプロの壁を打ち破る、ブレイク・スルーの瞬間ですよね。」

DJシミュレーション・ゲームとして絶大な人気を誇るKONAMI『beatmania ⅡDX』シリーズ。単なるゲームとしての楽しさを超越し、ひとつの文化を確立した"ビーマニ"の魅力の一端を支えているのが、クオリティの高いゲーム・ミュージックだ。そんな音楽を日々クリエイトし続けるbeatnation Records所属アーティスト4人に一堂に会してもらい"音楽談義"を敢行。曲作りの手法からアマチュア・ミュージシャンへのアドバイスまで、これまで彼らの口から語られることのなかった、貴重な対談の様子をお届けしよう。

お互いの音楽的バックボーンを語り合うなんて、初めてのことです

─ まずはみなさんが、どのようにしてコンピューター・ミュージックを始めてゲーム・ミュージックの制作に携わるようになったのか、その経緯から教えてください。

dj TAKA(以下、T):僕は20代の前半までバンド活動を一生懸命やっていて、ライブハウスにもよく出ていたんです。でも、そのうち1人、2人と仲間が音楽から離れて行ってしまって、自分1人で音楽を続けることになったんです。そうすると、どうにかしてバック・トラックを作る必要が生じてきて。その時に「コンピューターで音楽が作れるらしいぞ」ということを知って、コンピューター・ミュージックを始めたんです。ですから、sotaくんのように、シンセの音色に惹かれて......、というのとは、ちょっと違う入り方なんです。

─ バンドをしていたとは意外でした。ちなみに、パートは何を担当していたのですか?

T:ちょこちょこといろんなパートをやっていましたが、実はメインはボーカルだったんです。これを言うのは、ちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。

インタビューに答えるL.E.Dさん

▲写真1:L.E.D

L.E.D.(以下、L):僕の場合は、すべてはYMOから始まりました。リアルタイムでYMOを初めて聴いたのが5~6歳の時で、幼いながらも、YMOの音楽に近未来的な輝きを垣間見たんです。そんなYMOの象徴がシンセでしたから、自然とシンセに興味を持つようになって。それからしばらく時が経って、とあるゲーム・ミュージックのサントラを聴いたんです。その時に、かつてのYMOを初めて聴いた時に感じた同じテクノ・ポップの香りを感じて、違和感なくゲーム・ミュージックを聴くようになったんです。高校時代には、バンドでYMOのコピーやゲーム・ミュージックのコピーもやってました。そのうちに音楽の道に進みたいと思い始めて、ゲーム・ミュージックの制作会社にアルバイトで入ったんです。ちなみに、私のファースト・シンセは、ローランドのD-10なんですよ。

Sota Fujimori(以下、S):エリック・パーシングのデモ・ソングが内蔵されたシンセですね(笑)。(注:D-10は初のROMプレイ機能が搭載されたシンセサイザー)

─ さすが、お詳しいですね(笑)。

L:当時、10万前後で買えるPCMシンセの中でも、ドラムの音がめちゃくちゃカッコよかったんですよ。JUNO-106の音も好きだったんですけど、最終的に打ち込みで1人で音楽を作りたいという気持ちもあったので、ドラム・サウンドが内蔵されたD-10を選びました。あのドラムは衝撃でしたね。そうは言っても、後にJUNO-106も買うんですけど(笑)。

beatnation summitで使用されたローランド・シンセ

▲写真2:『beatnation summit -beatmania ⅡDX premium Live-(2007年8月11日/CLUB CITTA)』のステージにセッティングされたローランド・シンセ。この日は、V-Synth GTFantom-X7Fantom-X8、そしてSH-201をメインに、各アーティストのパフォーマンスが繰り広げられた。

DJ YOSHITAKA(以下、Y):僕は、ガキの頃から習い事として電子オルガンの教室に通っていたんです。でもその頃は、音楽に全然興味がなくて。それがその後にバンド・ブームが起こって、結構本格的に、3バンドくらいやっていたんですよ。でもTAKAさんと同じように、次第に仲間が音楽から離れていくのと同じタイミングで、クラブに通い始めたんです。そして、その世界にハマっていって上京したんです。そうしたら、もうドップリとつかってしまって、という流れでDJを始めました。ですから、僕はずっとプレイヤーだったんですよ。でも僕は"直感タイプ"だから、その時々でカッコいいと感じるものを追いかけていって、時代によって自分の音楽スタイルを変化させていったんです。その結果、最終的に音楽の作り手側に回った、という感じですね。だからL.E.D.さんの話を聞いて、「理系的な歩み方なんだなぁ」って思いました。

T:僕も、どっちかって言うとそっち側だよ(笑)。

Y:そう、僕とTAKAさんの2人が文系な感じで(笑)。音楽とファッション、流行を追いかけながら、なおかつそれを仕事にできる職業を突き詰めて考えた結果、今の状況に落ち着いたわけです。でも、クラブにハマってた当時は、4つ打ちのハコなんか全然行かなくて、ソウルとかR&Bのハコばかり行っていたんですよ。それが今は、4つ打ちの音楽ばかり作ってます。仕事となると、やっぱり人間って、変わりますね(笑)。

─ Sotaさんは、いかがですか?

S:シンセに興味を持ったきっかけは、小学生時代に聴いた、KONAMIの「グラディウス(Gradius)」というシューティング・ゲームの音楽なんです。その音楽にもの凄く感動して。小学校の教室のオルガンで、この曲を弾いていた友達がいたんですよ。それで、自分も弾けるようになりたいと思って、それから電子オルガンを習い始めました。中学時代は電子音楽ばかりを聴いていたし、バークリー音楽大学では、シンセ学科(Music Synthesis)を専攻しました。まあ、でも、何も学ばなかったんですけどね(笑)。そして大学卒業後、帰国して、さあ就職はどうしようと思った時に、KONAMIのサウンドクリエーター募集が目に留まったんです。「そう言えば、僕はKONAMIのゲーム・ミュージックを聴いて、音楽が好きになったんだ」と思って、応募したんですよ。

─ みなさん、お互いの経歴を興味深そうにお聞きになっていましたが、こういった話をしたのは、ひょっとして初めてですか?

S:そうですね。YOSHITAKAくんが、電子オルガン習っていたなんて、全然知らなかった。

Y:普段はクールなビジネスの関係ですから、あまり知らないんです(一同爆笑)。

L.E.D.さんのライブ・パフォーマンス

▲写真3:L.E.D.のライブ・パフォーマンス
(beatnation summit -beatmania ⅡDX premium Live-/2007年8月11日/CLUB CITTA)

ゲームを楽しむお客さんがグルーヴを作れるように、音楽はキッチリとクオンタイズをかける

─ これだけ音楽的バックボーンが違うと、曲作りの手法も違ったりするのでしょうか?

インタビューに答えるDJ YOSHITAKAさん

▲写真4:DJ YOSHITAKA

Y:おそらく、2ミックスにたどり着くまでの手法は、4人とも全然違うと思いますよ。

L:僕の場合は、どういう曲にするか、最初におぼろげに曲のイメージを考えるんです。そこからリズムを組んでベースを入れていくわけですが、その際のベースのフレーズはあくまでも仮のフレーズで、実はどうでもいいんです。でも、音色はかなり作り込みます。僕の曲作りでは、フレーズよりも音色が決まることのほうが重要で、そこが固まると自分の中でレールが敷かれたような状態になって、あとはイメージに近いフレーズを考えていくわけです。

Y:うわぁ~。僕とまったく違いますね。L.E.D.さんの曲を聴くと、いつも3D空間のピラミッドの中に自分が入ったようなイメージが凄く沸くんです。やっぱり、理系的主観の曲作りですね。とてもロジカル。しかもL.E.D.さんは、絶対締め切りも守るしね(笑)。

S:性格が出るよね(笑)。

─ その一方で、文系的な(笑)YOSHITAKAさんは、どのような手順で曲作りを行っているのですか?

Y:これが、意外に普通なんです(笑)。歌モノだったらメロディを作って、アレンジをしていって。でも、インスト曲は、これがなかなか特殊で。beatmania ⅡDXでは、インスト曲が50曲くらい収録されているんですが、その中に「ボス曲」と呼んでいる曲があるんです。ゲームの難易度が高い楽曲ですね。これを作るのは非常に大変で、細かいフレーズをたくさん重ねたり、奇をてらった展開をいくつも入れていくんです。

L:beatmania ⅡDXの音楽は、一般的な音楽よりも音数が多いんです。それはゲームをするお客さんにボタンを叩いてもらうためで、通常の2割り増しくらいのイメージの音数で、シーケンス・パターンを組んでいくんですよ。

Y:あと、beatmania ⅡDX特有の作業として、フレーズにクオンタイズをかけるんです。つまり、音楽はカッチリと作っておいて、グルーヴはゲームをするお客さんに作ってもらう、というわけです。ですから、ボタンを叩いてもらうために、音楽はキッチリとクオンタイズをかけておく必要があるんです。でも、その一方で「ここはボタンを叩くような場面じゃない」というところだけは、シンセを手弾きして、そのまま録音することもありますね。ここらあたりは、beatmania ⅡDXの音楽制作ならではの部分でしょうね。

beatnation summitで使用されたmotion dive .tokyo performance package

▲写真5:『beatnation summit -beatmania ⅡDX premium Live-(2007年8月11日/CLUB CITTA)』での映像パフォーマンスには、エディロールのmotion dive .tokyo performance packageV-4PCR-300が使用された