mnavi Interview

Vol.10:Rodger Joseph Manning Jr.(ロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.) X  西脇辰弥 Fantom-Gこそが、これからのシンセサイザーの新しい常識ですよ

90年代初頭に登場し、いまだに多数のミュージシャンからリスペクトを受け続けているパワー・ポップ・バンドの筆頭、ジェリーフィッシュ。そのキー・パーソン、ロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.が、今年2月、東京と大阪で開催されたローランド・サウンド・スパーク2008のステージに登場した。JUPITER-8、SH-101、そしてFantom-Xといった歴代のローランドの名機を愛用し、今なおポップ・ミュージックのカリスマとして君臨している彼を迎え、作/編曲家、サウンド・プロデューサーとして長いキャリアを持つ西脇辰弥との夢の対談を敢行。サウンド・スパーク2008のバックステージで、ともにステージでプレイした新世代ワークステーション・シンセFantom-Gについて、大いに語り合ってもらった。

Fantom-Gが、「まだシンセには上のレベルがあるんだ」ということを教えてくれた

─ 早速ですが、本日のサウンド・スパーク2008のステージでもプレイされていました最新のワークステーション・シンセFantom-Gのファースト・インプレッションについて、それぞれ聞かせてください。

ロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.(以下、R):僕はまだ使い始めたばかりなので、まだそのすべては知りつくしてはいないんだけど、予想していた以上に、数多くの特徴的な機能が搭載されていて、サウンド面でもとても向上していることを感じたよ。僕は、Fantom-X8を愛用しているけど、そこからすべての面が良くなっている印象だね。

西脇(以下、N):ローランドのシンセサイザーって、もはや音がいいのは当たり前。だって、そもそもFantom-Xだって、充分に優れたワークステーション・シンセじゃないですか。

R:僕もそう思う。Fantom-Xは、本当に素晴らしい楽器だよ。

N:そんなFantom-Xを超えるワークステーション・シンセって、一体どんなものなんだろうと思っていたんだけど、さらにその上のレベルがあるんだってことを、このFantom-Gが教えてくれましたよ。1つ具体的な話をすると、これまでのデジタル・シンセだと、パッチ(音色)を切り替えた時に音が途切れることは、当たり前だったじゃないですか。それがFantom-Gでは、リリース音を残したまま音色を切り替えられるんですよ。これは、ワークステーション・シンセサイザーとしてFantom-Gが世界で初めて実現したことらしいんだけど、シームレスにパッチを切り替えられるようになったことで、例えばストリングスの余韻を残したまま、ピアノの音色に切り替えて演奏できるようになったわけです。

R:細かいことだけど、プレイヤーにとっては、とても重要な進化だよ。

N:この20数年間、僕らキーボーディストは、パッチを切り替えると音が途切れるということは、当たり前のことだ、仕方のないことだと思い込まされてきたわけです。ある意味で、それがシンセサイザーの常識だったんですよね。ところが、このFantom-Gが登場したことで、これからは「音が途切れない」というFantom-Gのスタイルこそが、シンセの新しい常識になるはずです。それに加えて、新しいコンセプトで開発されたSuperNATURALエクスパンション・ボード、ARXシリーズARX-01ARX-02)への対応ですね。これまでのエクスパンション・ボードは、いわゆる音色のバリエーションを増やすといったものでしたが、ARXは音源方式を加えていけるという、新たな可能性を提示してくれました。この、サンプリングとモデリングの中間とも言えるSuperNATURALの発想は、本当に新感覚の音源ですよね。

すべての道具が用意され、音楽性を限定しないシンセ、それが"ローランドらしさ"

─ Fantomシリーズが進化したことによって、どのような新しい可能性を感じましたか?

N:僕が個人的に嬉しく思っているのが、Fantom-Gではコントロール・ペダルを2つ使えるようになった点なんです。これによって、エクスプレッション・ペダルやフット・スイッチでいろんな機能がコントロールできるようになったので、これだけでも充分にインスピレーションが湧いてきますね。そしてもう1つ、僕はベンダーのところに用意されている[S1/S2]という2つのボタンに注目しているんですよ。

R:このボタンは、どのように活用するんだい?

N:例えば、バイオリンであれば、アルコ(弓弾き)からすぐにピチカート奏法に変えられますよね。ギターでも、ミュートやハーモニクスといった奏法を用いることで、すぐに音色を変化させられます。でも、従来のシンセって、バイオリンやギターのように奏法によって音色を変化させるというような表現が苦手だったじゃないですか。でも、この[S1/S2]ボタンをオン/オフさせることで、ストリングスの音色のまま、アルコとピチカートをシームレスに切り替えることが可能になったんです。その他にも、このボタンでギターのようにフィードバックをかけたり、ボタンを連打すれば、オクターブを連続的に切り替えることもできるんです。この機能によって、演奏表現の可能性や幅が、実に大きく広がったと感じています。

R:サウンド・スパーク2008のステージで、キミがこのボタンを使ってプレイしていたのを覚えているよ。ヤン・ハマーのように、キーボードをまるでギターであるかのようにプレイしていて、本当に表現の自由度が高い、エキサイティングなパフォーマンスだったよね。こういったプレイができるのも、本当にテクノロジーの発達のおかげだと思っているよ。

─ おふた方ともに、長年に渡ってローランドのシンセをお使いになっていますが、この最新のFantom-Gにも"ローランドらしさ"を感じる部分はありますか?

R:僕が音楽を作る時は、いつも特定の楽器の機能やサウンドありきで作り始めるのではなくて、例えば絵を描く時に、目の前に真っ白なパレットといろんな色の絵の具が揃えられている、そんな状態からスタートするんだ。それが自分にとって、ユニークな音楽を生み出すことができて、インスパイアされる最高のシチュエーションであって、ローランドのシンセには、いつもそれに近いものを感じている。Fantom-Gも、そんな多くの可能性を秘めているところが魅力的だね。

N:僕が感じている"ローランドらしさ"は、「道具は全部用意しておく」というコンセプトですね。Fantom-Gには、ピッチ・ベンドに新しいモードが追加されているんですよ。これまでのように、すべての音のピッチを一様に上げ下げするだけではなくて、トップ・ノートのピッチだけをコントロールするといったようなことが可能になったんです。僕は、この機能が大好きなんです。でも、ひょっとしたら、この機能を喜んでいるのは、僕だけなのかも……、なんてことも思ったりするんですが、でもそれは言い換えれば、こんな少数派の人のための道具まで用意してくれているという証でもあるわけですよ。だって、ある人にとっては一生使わない機能でも、別の人にとっては、音楽を作るうえで欠かせない機能かもしれないじゃないですか。だから、何かをやりたい、表現したいという発想が湧いた時に、ローランドのシンセには、それを実現できる道具が必ず用意されている。このことは、楽器がユーザーの音楽性を限定しないという意味でもあります。そんなたくさんの道具が、中途半端なものではなくて、あくまでもプロ仕様のクオリティで用意していてくれる。しかも、新しいモデルには、必ず可能性を広げてくれるプラスアルファが加わっている。今回なら、SuperNATURALですね。僕は、そこが"ローランドらしさ"だと思ってるし、ローランド・シンセのとても好きなところなんです。