mnavi Interview

Vol.11:KREVA 自分さえ楽しければいいという音楽は、僕は作れない。誰かとつながりたいから、音楽を作ってるんです。

BY PHAR THE DOPEST、KICK THE CAN CREW、そしてソロと、日本のヒップホップ・シーンを切り開いてきたKREVAが、ソロ・デビュー以来の4年間の活動をまとめた豪華なベスト・アルバム『クレバのベスト盤』をリリースした。華麗なキャリアを一望できるエンタテインメント性に優れた作品である一方で、彼のサウンドへのこだわりや、トラック・メイキングの変遷が同時に楽しめる興味深いアルバムでもある。そこに見え隠れする"KREVAサウンド"の本質、そして音楽観。今回、リニューアル後本邦初公開となるKREVAのプライベート・スタジオ『mondaynight studio komaba』を訪ね、これまでの自身の音楽活動の軌跡を振り返ってもらうと同時に、音楽について、そして楽器について、語ってもらった。 【撮影:在津完哉(ライブ写真)】

Fantom-XRを買ってから、制作スタイルが大きく変わった

─ 『クレバのベスト盤』は、最新作から始まり、ソロ・デビュー作(2004年)までが時代を遡るような形で順番に収録されていますが(ラストは書き下ろしのボーナス・トラック)、デビューから4年間の楽曲の変遷を改めて振り返って、KREVAさんご自身は、何か感じるところはありましたか?

1stアルバム『新人クレバ』

▲1stアルバム『新人クレバ』

KREVA(以下、K):初期の頃の曲は、音数が少ないですね。その頃は、今よりも"サンプリング"という部分にこだわっていて、ドラムも「すべてサンプルでやる」と言うポリシーでトラックを作っていたんです。今、改めてファースト・アルバム(『新人クレバ』)を聴くと、何だか不思議な音楽に聴こえました(笑)。それでも当時は、「音数が少ないですね」と言われても「そうですか? これで全然足りていると思うんですけど」と言うような返答をしていたんですが、今聴くと、やっぱり音数はかなり少ないですね。

─ それでも、かえって音数が少ないことで、ひとつひとつの音色が持つ存在感や、音色そのものの強さというものを強烈に感じました。

K:ありがとうございます。そうやって音色にこだわってトラックを作ってきた分、音を選ぶスピードは、格段に速くなりましたね。自分のジャッジが、物凄く速くなってきた。最近では、それこそ音源が何であろうとも、自分が欲しいと思うサウンドであれば、その音を使うことに抵抗がなくなりましたね。昔なら、例えば「CDからはサンプリングしない」とかね、必ずレコードから、というこだわりは強かったんですけれども。

─ こだわりがなくなる、何か具体的なきっかけがあったのですか?

K:まず昔は、僕はMIDIの使い方がよく分かっていなかったんですよ。だから、欲しいなと思うフレーズがあったら、実際に手で弾いて入れていたんです。上手く弾けるまでやって、それをサンプリングするという手法(笑)。そこから、MIDIの使い方を教えてもらって、フレーズをMIDIで組んでいけるようになってから、変わっていきましたね。今回、ローランドさんの取材だから言うわけではないんでんすけど、Fantom-XRを買ってから、制作スタイルは大きく変わりました。Fantom-XRのドラム・キットが凄くよかったんです。自分が欲しいと思うサウンドが、たくさん入っていた。それまでは、気に入った音色があると言っても、大抵は1台のシンセに1~2音色程度で、「ハイハットの抜けをよくしたいなら、じゃあこのシンセのハイハットをサンプリングして」という使い方をしていたんです。でもFantom-XRを使い始めてからは、「ドラムは全部Fantom-XRに任せて、ネタだけサンプラーで鳴らそう」というような発想になってきて。ですから、Fantom-XRがドラムの中心になってからですね、大きく変わったのは。これは本当の話なんです。

─ この4年間での"KREVAサウンド"の変化は、KREVAさんの音楽的な進化だけでなく、機材の進化による影響も少なくはなかったと?

KREVA氏所有のFantom-XRとXV-5050

▲画像1:KREVA氏所有のFantom-XR(上)とXV-5050(下)。

K:それはありますね。主要な曲の制作を手伝ってもらっている"G.M.KAZ"というエンジニアさんがいるんですけど、彼が「音楽の進歩は、楽器の進歩とほぼイコールだ」と言っていたんです。特に、僕がやっているような音楽はね。その話しを聞いて、なるほどな、と思ったんですよ。僕は音楽をやっていて、それで生きているわけだから、音楽で得たお金は、やっぱり音楽に投資すべきだというように考えているんです。だから、新しい機材が出たら、それが面白いと思えればすぐに手に入れて試してみるんです。そうしてFantom-XRを使ってみたら、そのドラムのサウンドがまさに時代にフィットしていて、実際に楽曲にも使うようになっていきました。ですから、自分自身が機材の進歩に助けられて、前に進んで行けているという想いは強いです。楽器ファンの方でしたら、そういう機材面の変遷も想像しながら『クレバのベスト盤』を聴いてもらうと、面白いかもしれませんね。

いろいろなスタイルを経験すれば、トラックを作る感覚が変わってくる

─ 具体的なトラック制作のスタイルを教えていただきたいのですが、やはりリズムから組んでいくのですか?

K:最近は、まずレコードを聴いて、サンプリングしたいと思ったサウンドをどんどんサンプリングしていく、という作業をします。もちろん、最終的に使う/使わないはあるんですが、そうやってレコードからスタートすることが多いですね。それをきっかけにして、ネタに合ったドラムを組んでみて、そこからネタを外すのか、そのまま使うのかを考えていくパターンです。

─ ヒップホップのトラックでは、ループの良し悪しが非常に重要なポイントを握っていると思います。KREVAさんの作品では、そのループに、一度聴いたら忘れられないほどのパワーを感じるのですが、そうした強いループを生み出すコツなどはあるのでしょうか?

K:普段から、どんな音楽を聴く際にも「ここのフレーズは抜けるな」という耳で聴いているところはありますね。

─ いつも研ぎ澄ました耳で、音楽に接しているんですね。

K:そうですね。すべてをレコードからのサンプリングで作っていた時期に、自分なりの気に入ったサンプルを集めた"マイ・キット"を作ったんです。これは皆さんやることだと思いますけど、そのキット作りの作業をすることで、「自分はどういうサウンドが欲しいか」ということが分かってくるんですよ。その過程で、ループを見抜く感覚を身に付けてきた、という感じはありますね。それは料理と一緒で、どのくらいの塩加減がいいのかということは、実際に料理を作ってみないと分からないものじゃないですか。

─ レシピ通りに作っても、自分が本当に求めている"味"にはならないわけですね。

K:まさにその通りです。それを繰り返し何度もやっていくことで、自分なりに掴んできたという感覚があります。

─ そうしたループを土台にしたトラックは、トラック単独で完成させるのですか? それとも、ラップの制作と同時進行で練り上げていくのですか?

K:基本はトラック先行ですね。それで一度録ってみて、足りない部分があれば足す、という感じです。そこで足したり引いたりという作業はしますけど、ほぼ100%、常にトラックが先ですね。

─ ラップを最大限に活かしつつ、存在感のあるトラックを作るという意味では、ヒップホップのトラック・メイキングは、いわゆるロック/ポップスの楽曲制作とは大きく違う点があるように感じますは、その点に関しては、どのように考えていますか?

K:例えば、インターネットとかでもいろんな人のトラックを耳にしたりしますけど、歌い手さんの作るトラックというのは、いいところで止められていることが多い印象ですね。こう、こねくり回さない、というか。僕も、ある程度トラックを作ったら、「ここまでくれば歌えるな」と感じたところで止めるんです。もちろん、歌えるかどうかだけで言えば、ドラムさえあれば歌えるんですけど、「これだったら、人前で披露できるな」という点が、僕のジャッジのポイントになっています。ラップ、声を活かすトラック・メイキングは大切ですよね。そう考えると、確かにラップをやる人が作るトラックと、ラップをしない人のトラックは、ちょっと違うもののような気がしますね。さらに、"DJのトラック"というのもあるじゃないですか。僕は、自分でDJもするし、ラップもします。だから、トラックを作ろうとしている人は、いろいろなスタイルを経験してみるといいんじゃないですかね。今なら、CDも簡単に作れるし、まあCDまで作らないにせよ、自分で作ったトラックでDJしてみれば、自然と自分のトラックに何が足りないのか、気付くことができると思います。もちろん、プロのCDと違ってマスタリング前の状態だから音圧の問題とかは出てくるかもしれないけど、それでも自分の好きなトラックと聴き比べて、自分には何が足りないのかを考えてみることは大切だと思います。あとは、普段は歌わない人でも、ちょっとラップを書いてやってみるとか。そういうことを取り入れてみると、トラックを作っていく感覚も全然変わってくるんじゃないですかね。