mnavi Interview

Vol.13:トータス松本 バンドとは、常に思い通りにならないもの。でも、そこが魅力であって、僕にとってバンドはかけがえのないものなんです。

今年で結成20周年を迎えた、日本ロック・シーンの唯一無二な存在、ウルフルズ。その"超"が付くほど個性豊かなバンドのフロントマンを務める男、それが、言わずと知れたトータス松本だ。そんな彼が、デビュー20年目にして初のオリジナル・ソロ作品「涙をとどけて」をリリースした。ソロ活動を始めるに至った過程、そしてバンドに対する想い、さらには普段の曲作りのスタイルなど、トータス松本の日常を語ってもらった。

ウルフルズという"村"も楽しいし、それ以外の"村"も楽しんでいる

─ トータス松本さんは、この20年間でご自身の音楽的な変化を感じる部分はありますか?

トータス松本(以下、T):20年前にウルフルズで活動するようになってから、僕は曲を書き始めたんです。ウルフルズ以前は、曲を書いたことがなかったんですよ。だから、僕が曲を書いたり歌ったりするのは、常にウルフルズとしての前提で考えていたし、ウルフルズとして歌うことで、自分の創作表現も充分にできていたんです。でも最近は、ウルフルズだけが自分の歌の表現の場ではないかもしれない、という気分になってきて。そこが、一番変わった部分かもしれませんね。

─ そのような気分になったのは、何かきっかけがあったのですか?

T:長い間ひとつのバンドを続けていると、誰でも自然と「違うグルーブも試してみたい」と思うようになるんですよ。バンドって、良くも悪くも"村"なんですね。ひとつの"村"でずっと過ごしていると、他の"村"のことはまったく分からない。他のバンドも"村"なわけですから。ところが、ライブとかレコーディングでサポートのミュージシャンと一緒になると、彼らはいろんな"村"を知っているから、彼らと仕事をするのが単純に楽しいんですよ。「へぇ~、そうなんや」と思うことがたくさんあって。まだまだ、知らない世界がいっぱいあるということに気付くと、ひとつの"村"だけで過ごしていることが、ちょっと損しているようにも思えてくるわけなんです。もちろん、そこは心地よい"村"なんですけどね。だからウルフルズは、僕にとって、ものすごく大事なものなんですが、それとは違う部分も知りたいなという、純粋な気持ちですね。

─ ウルフルズを成立させつつ、外の世界も覗いてみたいと?

T:そうそう。今も楽しいけど、外の世界も楽しそうやな、みたいなね。

─ でも、ウルフルズのフロントマンでありボーカリストという側面と、ソロでの活動という2つの側面を両立させるのは、かなり難しいように感じるのですが、実際はいかがですか?

T:いや、難しいと思ったことはないですね。その難しさもひっくるめて、今はすべてが楽しいと感じているから。まあ、結局僕が何をやっても、ウルフルズは付きまとってくるわけやからね、そこも楽しんでしまおうとしているのかもしれないですね。

ウルフルズとソロとでは、言葉を選ぶ基準が変わってくる

─ 初のソロ作品「涙をとどけて」の曲作りは、どのように進めていったのですか?

T:この曲は、テレビドラマの主題歌ということもあって、原作も読みましたけど、そこで描かれていることが、人間の普遍的な悩みとかだったんですね。それは、自分が普段から音楽で表現したいと思っていることと同じでズレがなかったから、それほど強くドラマの内容を意識することもなく、普段通りに曲作りができました。

─ 歌詞に関しても、かなり人間の内面に迫っている印象を受けました。

T:そうですね。でも、歌詞が派手か地味かの違いだけで、歌ってる内容そのものは、ウルフルズで歌ってるものと大きくは変わってないんですけどね。

─ ウルフルズとソロでは、言葉の選び方が変わってくるんですか?

T:言葉のチョイスの基準が、やっぱり変わってきますよね。ウルフルズだと、どうしても派手な言葉や、あまり耳に馴染みのない言葉、奇をてらった表現が多くなります。それがソロになると、もっと自然な言葉を使うようになりますね。

─ その一方で、曲作りの発想や手法に関しては、バンドとソロで違いがありますか?

T:曲を作るきっかけに関しては、ウルフルズでもソロでも直接的な違いはないけど、ウルフルズの曲を作る場合は、やっぱり肩のあたりにメンバーの顔が乗っかってきますよね(笑)。ギター・リフを作っても、コード進行やリズム・パターンを考えても、やっぱりメンバーのことを考えますね。あいつはこういうの好きかなとか、このフレーズは演奏しやすいかな、とか。でもソロだと、そういうことは一切考えなくてすみますから。自分の好きなものだけを作ればいいわけで。その違いはありますね。