mnavi Interview

Vol.17:向井秀徳(ZAZEN BOYS) 繰り返される諸行は無常。私は繰り返すことが好きなわけであって、だから、ディレイが好きなんです。

知性と狂気の狭間で魂の叫びを音楽に昇華させる超個性派ミュージシャン、向井秀徳。最新アルバム『ZAZEN BOYS 4』は、バンド・セッションが生み出す激しい衝動性と、メロディアスなシンセ・フレーズを融合させた音楽性の高い作品となっている。今回、ZAZEN BOYSのホームでもある向井氏の"MATSURI STUDIO"を訪ね、これらのサウンドが生み出された過程と、アルバム・ジャケットの裏面に姿を現した"ディレイ・マン"に込めた意味について話を聞いた。

コンピューターでの作曲は、
想像していた以上にフィジカルで楽器的だった

─ 最新作では、打ち込みを大胆に導入した曲があったり、メロディの構築の仕方など、これまでのZAZEN BOYSからの変化を感じたのですが、こういった方向性は、制作をスタートさせた段階からイメージしていたのですか?

向井(以下、M):大きな要因として、曲の作り方が多少変化しまして。これまでバンドで曲を作る際には、このスタジオ(MATSURI STUDIO)にバンドで入って、ギターのリフから発展させていくようなパターンが多かったんです。シンセで曲を作るにしても、普通に弾いてコードやリフから発展させていく。いずれにしても、バンド・サウンドで曲を構成していく作り方が多かったんですけれども、今回のアルバムではコンピューターを使いまして、このスタジオだけでなく、ラップトップのコンピューターでいろいろな場所で曲を作りました。ツアー先の地方のホテルだとか、ライブハウスの楽屋とかで作った曲が多かったですね。このような作曲手法はあまりやってなかったので、そこが今までとちょっと違うところですかね。

─ コンピューターで曲を作るようになったきっかけは?

M:デモを作る際は、このスタジオに普通にマイクを立てて録音するわけですよ。まあ今だったら、ハードディスクにマルチ・トラックで録るんですけども、例えば高校生の頃、宅録の時代はカセットMTRでやっていました。さらにそれ以前になると、ダブルデッキ・ラジカセで、いわゆるピンポン・ダビングというところから宅録を始めました。今ではコンピューターで録るんですけれども、結局はMTR的な使い方をしていたんですよね。演奏して、それを録ってデモを作る。そういうやり方から、いわゆる音楽制作ソフトを使ってみようかなと、去年ぐらいから思い始めまして。

ただ、ずっとアナログ的な使い方に慣れてますんで、ちょっと抵抗があるわけですよ。音楽制作ソフトって難しいんじゃないか、とか。でも、ちょっとやる気になりまして、トライしてみたところ、思ったより全然難しくないんです。手軽だし、非常にスムーズに作業ができたんですね。昔、カセットテープのピンポン・ダビングなんて、回数を重ねるごとに、ベースなんかの音像がだんだん遠くなっていくわけです。そんな方法で、微妙なバランスを取りながら頑張っていましたが、今の音楽制作ソフトでは、そんなことまでちゃんとやってくれますから、今の高校生が羨ましいなと思いました。自分が高校生の頃にこういったものがあれば、どれだけ楽だったか......。何より、使い勝手が便利でした。いわゆる"打ち込み"という感覚で作っていくわけですけれども、想像していた以上にフィジカルに、楽器のように扱えたんですね。そこが良かったです。演奏して、それが反映されるまでのスパンが短いというか。

─ イメージを形にするスピードが全然違ってくるわけですね。

M:すぐ録って形にできるし、しかもその段階ですべてのエフェクトまで入れられますから、全体像が見えやすいですね。昔の"打ち込み"っていうのは、ステップ入力で1音1音を打っていって、さらに後からミックスをどうするか、エフェクトをどうかけていくかっていう段階を経て制作していたと思うんですけれども、音楽制作ソフトを使えば一発で、バッとイメージが見えてくるわけです。そこが、自分にとってすごく使いやすかった点でしたね。もうホテルの部屋で、ガンガン曲を作っていきましたよ。

─ 作曲手法が変わったことで、何か音楽を作るうえでの新しい発見などはありましたか?

M:コンピューターで曲を作ると可能性が広がり過ぎるから、結局、作業がなかなか終わらなかったりするんですよ。何でもできますから。オーケストラを構成することもできるわけですからね。ただ、可能性が広がるっていっても、自分がやりたいことはある程度決まってますので、例えば、「何でもできるから、オーケストラのストリングスを入れてみよう」という発想はしないですね。

─ 音楽を表現するうえで必要なものだけを引っ張ってくる感じですか?

M:ええ、そうです。だからもちろん、できることや可能性の広がりはあるんですけれども、使う側にとってそれが必要であるかないか......、そういうことですかね。だから、コンピューターを使ったことで、表現そのものが大きく変わったということは、あんまりないとは思うんですけど。

コンピューター上でタイミングをずらして
生っぽくするという手法には興味がない

─ 向井さんがいつも行っている、曲作りやデモ制作の手順を教えてください。

M:曲を作っている段階では、思いついたリフのフレーズだったり、そういうものをマイク内蔵型の簡易レコーダーですぐに録ります。デモっていうより、メモみたいな感覚でしょうね。そのほうが、改めてコンピューターで録ったり、あるいは譜面を書くより速いですし、録らないと忘れますから。スタジオにマイクを立てて、マルチを回してデモを録る以前に、メモだけでもある程度の全体像は記録できますので、これはよくやりますよね。コンピューターで作る曲に関しては、それ自体が作品になっていきますので、デモを作るという概念はないかもしれないですね。

─ 向井さんの中で、この曲はバンド・サウンドでやろう、この曲は打ち込みで完成させようという判断は、どの段階でされるのですか?

M:ギターで作った曲がいつの間にか打ち込みになっていた、という時もありましたね。バンド・サウンドにするかどうかの選択は、あんまり意識的には行ってないですね。おのずとそうなった、みたいな。

─ フレーズやリズムがどちらのテイストを呼ぶのか、という判断ですか?

M:そうですね。例えばギターでコードを弾いて、ある種のバッキングを思いついたとします。その段階ではギターのコードだったんですけど、試しにシンセで同じコードを弾いてみたら、やっぱり聴こえ方が全く違うわけです。そこで、シンセのほうがいいと思ったらシンセでやりますし、やっぱりギターのほうがカッコいいと思えば、そのままギターで進んでいくわけです。

─ 例えば、1曲目の「Asobi」は完全に打ち込みで作られていますよね。ZAZEN BOYSには超強力なリズム隊がいるだけに、この打ち込みサウンドはかえって衝撃的でしたが、これをライブで演奏する際には、どのように打ち込みサウンドとバンド・サウンドの融合を図っているのですか?

M:打ち込みの曲に関しては、完全に自分1人で作りましたから1人の世界ではあるんですけども、ただライブでは、それをZAZEN BOYSとしてアウトプットするわけです。打ち込みで作った曲であっても、ライブではメンバー4人で演奏しているわけで、打ち込みのキックの音をいかに肉体的に鳴らすかという点は、ZAZEN BOYSにとって大きなテーマになっていますね。

─ 具体的には、どのような手法を取り入れているのですか?

M:コンピューター上でタイミングをずらして生っぽくするっていう手法には、あんまり興味がないんです。機械を使うなら、それは機械ですからステディでいいと思うんですよ。そうではなく、例えばシーケンス・フレーズをぶつ切りにしまして、個々のパーツに分けたものをSP-303に取り込むんです。ライブでは、SP-303を手打ちで鳴らして、それに合わせてドラムを叩くわけです。SP-303を鳴らすのは人間ですから、もう、ずれるわけですよ。ずれたくなくても、ずれるわけです。これを肉体的と言うかどうかは分かりませんが、そういったことをやったりもしています。今後も、これらをうまく組み合わせてライブをやりたいと思ってるんですけどね。