mnavi Interview

シンセの音色から想像が広がり、
曲に発展していく瞬間がある

─ MATSURI STUDIOには、ギターだけでなくシンセもセットされていますが、向井さんが最初に手にした楽器は、やはりギターですか?

M:はい。ギターしかできないです。鍵盤を習った経験はないですね。私の場合、シンセは"叩く"ことがメインですから(笑)。ただやっぱり、シンセを使い始めたきっかけっていうのは、メロディを作った際に、それを明確にさせるためには歌で歌うんじゃなくて、鍵盤で弾いて確認するためだったんです。ですから、シンセはメロディを確認するために使っていただけで、シンセをバンドに取り入れたことはなかったんです。ただ、何となく弾いておりましたら、ギターを弾いて「これはいいリフだ」って曲に発展していくのと同じ感覚で、シンセの音色や鍵盤から生まれるコード感からワーッっと想像が広がり、そして曲になっていくという瞬間が自然と訪れまして。それ以来、シンセを使うことが多くなりました。

─ JUNO-106は、どのようにして使い始めたのですか?

M:最初は、兄貴が持っていたデジタル・シンセを実家から持ってきて使ってたんですが、そのうちにJUNO-106に興味を持ちまして、中古で入手したわけです。ヴァン・ヘイレンの「JUMP」が弾きたくて。(実際に演奏しながら)これです、これ。まさに「78番(※注)」の音色(笑)。そういうきっかけもあるんですけど、一番刺激されたのが「52番(※注)」の音色なんですよ。番号で言っても、シンセ・マニアの方しかわからないと思いますが(笑)、オルガン風というんでしょうか? 何と表現したらいいのかわかりませんが、この音色でテンション・コードを弾いた時の倍音感が、他の楽器では得られないものがありまして。この独特な音色がもたらす「雰囲気」とか「匂い」みたいなやつが、すごく自分は気に入りまして、「52番」で何曲か作りましたね。音色とコードが偶然にマッチして、ワッと曲に発展していくということは、よくありますね。

─ イマジネーションをかき立ててくれる音色だったわけですね。

M:そうですね。「いい音」っていう概念は人それぞれで、クリアな音が「いい音」なのかどうなのかというと、その判断も人それぞれで違うわけで。ちょっと壊れかけたシンセのサウンドが、これまた良かったりして、それが想像力を刺激することもあるし、いろんな「いい音」があるわけです。

▲写真1:向井氏所有のJUNO-G(左)とJUNO-106(右)。JUNO-106の上には、左にボスDD-20、右にSP-303が置かれている。
【※注】中古で購入したというJUNO-106は工場出荷状態になっており、向井氏が語っている音色の番号は、発売当時のプリセットのことを表している。

─ JUNO-Gを購入したきっかけは?

M:JUNO-106は20年以上前の製品ですから、少々不具合も出てくるようになって、それでライブ用にもう1台購入したんですが、JUNOの新しいモデルが出たことを知りまして、それならJUNO-Gをライブで使ってみようかと思いまして。とにかく軽いじゃないですか、だからツアーでも、非常に使い勝手がいいわけです。

─ サウンド面での感想は?

M:自分にとって「いい音」と感じたのは、ウーリッツァー風のエレクトリック・ピアノの音色です。プリセット・パッチの「A038 Curly Wurly」ですね。とても雰囲気のある響きで、すごく好きですね。他の一連のエレクトリック・ピアノの音色も、かなり気に入ってます。何がいいかと言うと、自分はシンセを叩いて演奏しますから、アタックの切れ具合というか、音の立ち上がりがいいと言いましょうか、非常にアタッキーなサウンドが出せるんですね。バンド・サウンドの中で叩きまくると、このエレクトリック・ピアノの切れ味がすごく鋭くて、非常に気持ちいいわけです。ライブで使う場合は、これをギター・アンプJC-77で鳴らすわけですよ。ギター・アンプに突っ込むことで、さらに切れ味が増しますし、ライン・サウンドをベストな音にできるんです。

─ シンセをギター・アンプで鳴らすのですか?

M:ライブでバンドと一緒にシンセを鳴らす際には、ギター・アンプで鳴らすとなじみが非常にいいんです。バンドの中には、ギター・アンプとベース・アンプと生ドラムがあるわけです。つまり、演奏時のモニタリングっていうのは、生音なんですよ。ドラムの生音、ギター・アンプ、ベース・アンプから出てくる音。それをモニターしながら演奏するわけですけれども、鍵盤系だけラインで鳴らすと、別世界の音になってしまいます。だからこそ、ライン楽器用のアンプが必要になるわけです。ZAZEN BOYSはギター・サウンドをメインとしてやっておりますので、単純に「ギター・アンプでいいか」と思いまして。JC-77はギターにもシンセにも使えますし、あのサウンドと持ち運びしやすいサイズが好きなんですよ。ただ、ボリュームを大きくすると、ギター・アンプですからディストーションがかかってくるんです。エレクトリック・ピアノの音色でしたら、程よい飽和感があって最高なんですが、それ以上に大きくしたい時には、最近は出力の大きいキーボード用アンプのKC-350を使っています。音色がそのままで、音量だけを大きくしてくれるアンプって、なかなかないんですよ。KC-350はマイクも入力できますし、ストリートで演奏している方たちにも便利なんじゃないでしょうか。我々のようなバンドでも、これは非常に使い勝手がいいですよ。

ディレイは非日常のサウンドだからドリーミーでファンタジー

─ アルバム・ジャケットの裏面で、向井さんがボスのギガ・ディレイDD-20を被っていることに逆に我々のほうが驚いてしまいまして(笑)。実はそれが今回取材させていただくきっかけにもなったのですが、DD-20のどのような点が気に入っているのですか?

M:DD-20は、4種類のディレイ・サウンドをメモリーできますよね。曲によって、それをすぐさま選択して鳴らすことができるという便利さもありますが、もっと根本的に言うと、パキッとしたディレイ・サウンドが気に入っています。もちろん、アナログ的な、音質がなまっていくようなディレイ・サウンドも作れますが、パキッとしたディレイを返してくれることは、私の好みでもあります。非常にブライトで、サウンドにきらめきを与えてくれるディレイという印象ですね。ディレイは、私がもっとも多く使うエフェクターなんです。ギターに関しても、他の素材に関しても。ディレイ・サウンドっていうのは、日常にはないサウンドだから、非常にドリーミーでファンタジックな気がしますね。だから好きです。私の歌詞の中にも「繰り返される諸行は無常」という言葉を繰り返し使っているんですけれども、物事を繰り返していくということが、そもそも好きなんです。

▲写真2:アルバム『ZAZEN BOYS 4』の裏面ジャケット。ボスのギガ・ディレイDD-20を被った男「ディレイ・マン」が登場している。

─ ということは、ジャケットにDD-20を使われたというのも、そういった深い意味があったのですね。

M:もちろん! もちろんですよ。この男、「ディレイ・マン」っていう名前なんです(笑)。ずっといろんなものを繰り返しているんですよ、この男は。いろんな思い入れだったりをずっと繰り返して。人間、何回繰り返しても失敗したりしますし、逆に失敗しても、何回でも繰り返しやっていくというポジティブな考え方もありますし。

─ 我々は、ビジュアル的にDD-20を使われたのかと思っていました。

M:でも、この色合い、見た目もいいですよね。とにかく、ボスのコンパクト・エフェクターっていうのは、バンドマン必須のブツなわけですから。これだけ何十年も使われ続けている理由がありますからね。

─ 向井さんにとっての、ボス・コンパクト・シリーズの魅力とは?

M:ひとつはハードなライブ・ツアーに耐えうる強靭さです。ライブは何回もやりますけど、それに耐えうるタフなボディという要素は、とても重要だと思います。ペダル・スイッチ式のコンパクト・エフェクターって、ライブではなかなか大変なんですよ。90年代に"Dinosaur Jr.(ダイナソー・ジュニア)"というバンドがありましたけれども、ギター・ソロに突入する瞬間に、何個かのコンパクトを同時に踏み込んで歪み系サウンドを炸裂させるわけです。あれは、突入する瞬間が大事なわけですよ。突入する瞬間に、サウンドを踏み込むわけです。その時の圧力っていうのは演奏に比例しておるわけですから、とてつもない圧力がかかっているんです。その踏み込む瞬間、突撃の瞬間に耐えうるものじゃないと駄目なんですよ、やっぱりエフェクターって。ボスのコンパクトは、それに耐えうるものだから、エモーショナルなプレイヤーに愛され続けているんではないかと思っています。

─ ちなみに、向井さんが最初に買ったエフェクターを覚えていますか?

M:やはりディレイでしたね。赤色のアナログ・ディレイ。DM-2か3だったと思います。それと歪み系もボスでした。黄色いオーバードライブ/ディストーション、OS-2。私のみならず、ほとんどすべてのエモーショナルなバンドマンの足元に、今でもボスのコンパクトが置かれてると思いますよ。

─ それでは最後に、楽器を楽しんでいる読者にメッセージをお願いします。

M:私はアマチュアの方たちから、デモもたくさんいただきますし、他にも、例えば"myspace"などには実にさまざまなアーティストがいて、それこそアンダーグラウンドのバンドもいますし、プロフェッショナルなミュージシャンも同列にたくさんいますよね。その中で、全然知らない人なんだけど、何かすごい音楽をやってる人のページにたまたま出会うことがあって、「なんだ、これは?」と思うことはよくあります。私がどういう音楽に惹かれるのかと言うと、歌でも演奏している人でもいいんですが、歌い手や演奏者の顔が見えると言いましょうか、やってる人の心の内を感じ取れる音楽が、やっぱりグッときますね。「この人がやってるんだ」ということが、しみじみと実感できるものと言いましょうか。気持ちだったり願いだったり、そういうのが伝わるかどうか、でしょうね。サウンド面では、「いい音」に決まりはないと思いますので、自分が感じる「いい音」を楽しむことがベストです。自分が気持ちいいと思う音、それが音楽、楽器を楽しむすべてだと思います。そこから、自分なりの表現が生まれてくということです。

 
Profile:向井秀徳(ZAZEN BOYS)

1973年生まれ、佐賀県出身。1995年に福岡で「NUMBER GIRL」を結成。博多を中心に数多くのライブ活動を展開し、1998年に東京に進出。シングル「透明少女」でメジャー・デビューを果たす。同年7月にメジャー1stアルバム『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』をリリース。急速にファンを拡大し続けながらも、2002年に惜しまれつつ解散。NUMBER GIRL解散後、ギター1本で弾き語りを行うというスタイルで「無戒秀徳アコースティック&エレクトリック」のソロ活動を行う一方、それと並行して「ZAZEN BOYS」を結成。唯一無二のオリジナリティ溢れるロック・サウンドを追及している。2008年9月17日に、ZAZEN BOYSの4枚目となるアルバム『ZAZEN BOYS 4』をリリースした。

オフィシャル・サイト:http://www.mukaishutoku.com/main.html

 
Information
■CD

『ZAZEN BOYS 4』

ZAZEN BOYS 4

MATSURI STUDIO
MSAL-0011 ¥2,600


■ライブ

ZAZEN BOYS LIVE(11月以降)

11/2(日) 大阪市立大学野外特設ステージ
11/7(金) 代官山 UNIT
11/9(日) 沖縄 桜坂セントラル
11/20(木) 東京 SHIBUYA-AX
11/29(土) 札幌 PENNY LANE 24
12/1(月) 仙台 CLUB JUNK BOX
12/3(水) 青森 CLUB QUARTER
12/4(木) 盛岡 CLUB CHANGE WAVE
12/8(月) 広島 CLUB QUATTRO
1210(水) 大阪 なんばHatch
12/11(木) 神戸 VARIT
12/12(金) 高松 DIME
12/15(月) 鹿児島 CAPARVO HALL
12/16(火) 福岡 DRUM LOGOS
12/21(日) 金沢 AZ HALL
12/22(月) 新潟 CLUB RIVERST
12/24(水) 長野 CLUB JUNK BOX
12/25(木) 名古屋 CLUB QUATTRO

※詳細は、上記オフィシャルサイトをご覧ください。