mnavi Interview

Vol.19:TETSUJINO(櫻井哲夫×日野

70年代後半よりカシオペアのベーシストとして一世を風靡し、日本の音楽シーンをリードし続けているベーシスト櫻井哲夫。天才トランペッター日野皓正を父に持ち、幼少時代から世界トップレベルの音楽に親しんできたベーシスト日野"JINO"賢二。この2人のスーパー・ベーシストが"TETSUJINO"を結成し、衝撃のデビュー・アルバム『ダブル・トラブル』をリリースした。豊かな音楽性と高度なテクニックにより構築されたダブル・ベースの世界は、どのように生まれたのか。"TETSU"と"JINO"の2人にたっぷりと語ってもらった。

音楽が会話になる。
「この人はジャズなんだ」って思いました。

─ まずTETSUJINO結成のきっかけから教えてください。

▲櫻井哲夫

櫻井(以下、S):ある雑誌の企画で「誰かとコラボレーションしませんか?」と声をかけていただいたんです。その時に、せっかくだから今一番気になっている人と組みたいと思って。それが、JINOだったんです。彼のデビュー・コンサートも観ていたし、僕も参加していた『プレイ・ジャコ~トリビュート・トゥ・ジャコ・パストリアス 』っていうキング・レコードのコンピレーション・アルバムで、その時は共演はしなかったんだけど、10数曲収録されている中で彼の作品が一番面白くて。プロデュース力もすごいし、プレイも素晴らしかった。そういったトータルな面で、JINOというベーシストに興味を持っていたんです。それが、最初のきっかけですね。

日野(以下、H):櫻井さんは、僕のアイドルなんです。カッコいいし、素晴らしいベーシスト。僕が「こういう風になりたい」と思って演奏をコピーした日本人ベーシストは、櫻井さんだけ。カシオペアの「DOMINO LINE」でのベース・ソロは、アマチュアの頃からコピーして弾いてましたよ。ソロにストーリー性があって、リズムがカッコよくて、日本人のプレイに聴こえなかったんですよ。だから、最初に電話がきて「一緒にどう?」って言われた時は、どうして僕なのかは分からなかったけど、本当に嬉しかったです。それで、実際に会ってスタジオに入ったわけですが、パッとレコーディングした時の相性がものすごく良くて。やっぱり僕も『プレイ・ジャコ』で櫻井さんのプレイは聴いてたし、もちろん、抜群のテクニックを持ってることは昔から知ってたしね。それで一緒にプレイした時が、すごく楽しくて。音楽が、ちゃんと噛みあって、会話になってるんですよ。「この人はジャズなんだな」って思いましたね。

▲日野"JINO"賢二

S:あのセッションは、本当に面白かったよね。会ってから帰るまで6~7時間、ずっとしゃべっていて、これはすごい人だなと思いましたよ(笑)。JINOはずっとアメリカで育っているからね、事前に「JINOは日本語があまり得意でない」っていう噂を聞いてたんだけど、ずっと日本語をしゃべってるから「すごいな」って。もちろん、演奏もすごかったけどね(笑)。

H:喜んでいいのかどうか、分からないです(笑)。

─ (笑)。その企画が終わって、本格的にTETSUJINOとしてアルバム制作に入るわけですね。

H:そうです。櫻井さんから電話かかってきて「一緒にやりたい」って言われた瞬間、すごく嬉しかったんだけど、一度「ちょっと考えさせて」って言って、2秒で「ぜひやりたい!」って返事したんです。でも櫻井さん、そのギャグを分かってくれなくて(笑)。

S:「そうだよね、レコード会社の問題とかスケジュールとか、いろいろあるもんね」とか言って(笑)。

H:逆に僕のほうが「やるって言ってるじゃん!」ってムキになって(笑)。でも、僕からすると櫻井さんは遠い存在の人だったから、一緒にアルバムを作れるなんて、本当に夢のようでしたよ。


上手い人とセッションすればするほど、
自分のプレイが何倍も上達する

─ お2人で実際にレコーディングをしてみて、一番印象に残ったことは何でしたか?

S:彼に限らず、アーティストには必ず"自分のやり方"というものがあるんですよ。僕にも僕なりのやり方があるし、どの方法もその人にとっては正しいわけです。それが共同作業になった時に、やり方が食い違うことで摩擦が起きるのか、逆に歯車がより加速してスムーズに回せるようになるのかという部分は、すごく面白かったですね。僕らの場合は、圧倒的にプラスに作用することが多かったですから。

─ 逆に、お互い「正反対だな」と感じたよう面はありましたか?

S:レコーディングのスタイルかな。僕は、事前に打ち込みでアレンジを完成させて、録音に時間をかけないタイプなんです。作曲とアレンジメントに時間をかけて、スタジオに入ると悩まないタイプなんですよね。でも彼はそうじゃない。スタジオでのハプニング性を活かすというやり方が得意ですよ。そういったJINOの手法は、印象的でしたね。

H:それこそ"ジャズ"ですよ。「今日はちょっと跳ねてるね」とか「今日はストレートの16ビート」、「今日はバラードだね」って、何でもOKなんですよ。音楽的であって、その人の光る部分がちゃんと作品にできれば、それでいいんです。だから僕は、自分のバンドのメンバーにも「同じ曲を、毎回同じように弾くな」って言ってるし、自分でもそうしようと思ってるんです。もちろんね、アルバムを気に入ってくれているファンのために同じフレーズのソロを弾くことはあるけど、2コーラス目には変えるとかね。それでOK。それが人生だから。櫻井さんは学校の講師もやってるじゃない? それで「生徒さんに何を教えてるの?」って聞いたら「人生だよ」って。やっぱり、カッコいい!

S:え? そんなこと言ったっけ?(笑)

H:言ったよ。料理をするにも、ケーブルを巻くのにも、ベースの弦を張り替えるのにも、彼は何をやるにしてもパッション(情熱)が入ってる。すごくいい人です。これだけ大スターで、僕よりもキャリアが長くて、10代からカシオペアで活躍してるのに、「ベース・ブラザーだよ」って言ってくれる。すごく海外ミュージシャンっぽいです。音楽のことを話す時にも、日本人っぽく「はい、そうですね」と言う感じも全然ないし、本気で「ここがいい」、「悪い」ということを言ってくれる。本当のことを言ってくれる人って少ないですから。家族か先輩くらい。駄目な部分を指摘してくれるのは、"愛"ですからね。そういう人を、僕は絶対的に信用しますし、そんなプレイヤーと一緒にセッションすると、必ず何らかの影響を受けるんです。知らず知らずのうちに勉強させてもらっていて、いい面を吸収できる。だから、上手い人と一緒にプレイすればするほど、自分のプレイが何倍もよくなりますよ。そういう意味でも、櫻井さんとセッションすると、レコーディング中でも自然にいろんなことを考えさせてくれるんです。プレイしながら「櫻井さんはそうきたか。じゃあ僕は反対のことをやろう」とかね。それが人生ですよ。エブリデイ人生。

S:そういう風に思ってたんだ(笑)。

H:ちょっと感じてた(笑)。

S:面白いですよ。僕ら本当に、相性がいいんですよ(笑)。