最新作のデモ段階では、自分でパーカッションを叩いて
グルーヴを生み出していった
─ 最新作『Season's greetings II~夕凪』は、どのように制作を進めたのですか?
O:まずパーカッションの小物類でグルーヴを生み出すような感じで、デモのリズム・トラックを作りました。
─ ご自宅でのレコーディング・システムは?
O:cakewalk SONAR 7 PRODUCER EDITION(現在はSONAR 8 PRODUCERを使用)とオーディオ・インターフェースがエディロールUA-25です。あとはマイクとアコースティック・ギターですね。基本的には、これで事足りています。
─ リズム・トラックは、ループやサンプル素材で作っていくのですか?
O:SONARに内蔵されているループ素材やサンプル音も使いますし、あとは実際にパーカッションの小物を手で叩いてマイク録りしたり。もちろんMIDIの打ち込みもやりますし、時と場合によって使い分けています。細かくフレーズを作る時にはステップ入力を使いますし、大雑把にグルーヴが欲しい時には手で楽器を叩いて、という感じですね。ただ、リズム・トラックに関しては、ドラムンベースやジャングルを作っていた昔の頃の癖が残っていて、どうしてもパーカッションで音を埋めていってしまうんですよ。でも今は、先ほども言ったように引き算の方向性を選びたくて。特にここ数年、ブルースやブラジル音楽などで聞かれるような、不思議なキックとちょっと壊れたようなスネアの音だけでも十分に成立してしまう音楽と出会ってからは、自分としてもそういう方向に行きたいと考えているんです。
─ グルーヴを作るために必要な最小限な音数に絞るわけですね。
O:そうです。できるだけ音を引いていくように心がけています。そうなるとデモとは言え、やっぱり打ち込みよりも生楽器を録って作ることが多くなるんです。例えば、サンバを表現するんだったら、サンバの楽器を叩いてグルーヴを作りたいという感じですね。そうして作ったデモをメンバーに聴いてもらって、細部を詰めてレコーディングしていきました。
─ 本作はご自身の楽曲のセルフ・カバーを中心に構成されていますが、オリジナルの楽曲を作った当時と、今改めてアレンジを加える際に、何か感覚的な違いはありましたか?
O:全体的には、当時打ち込みで作ったものを今回は生楽器のスタイルでやりたいという思いで、構成やアレンジを考え直しました。今では、SONARのようなシステムで生楽器がいい音で録れますし、編集もとても楽ですからね。オーケストラのサウンドも、実際は倍くらい録ったし、曲の間奏などにも録音していたんですが、最終的にはカットした部分もあって。そういった作業も、今のテクノロジーを使えば簡単にできますからね。

「いい音だな」と思えるだけで嬉しくなる。いい音でいい音楽を聴くことが一番の快楽。
─ アマチュア時代のカセットMTRから始まって、デジタル・テープ・レコーダー、そしてコンピューター・ベースのDAWシステムと、これまでのレコーディング・システムの変遷をご存知の大澤さんですが、今の音楽制作環境をどのように感じていますか?
O:トラックス数にしても、プロになった当初は16チャンネルで、そこから24、32、48チャンネルになって、そしてデジタルの時代に突入して。その中で今、改めてDAWシステムやデジタル・レコーディング技術の進化に対して感じる魅力は、やっぱり音像の奥行き感や広がり感の素晴らしさですかね。この部分は、アナログ時代とは全然違いますし、そこって音楽を作っていくうえで一番深くて楽しい部分ですからね。「いい音だな」と思えるだけで、僕は嬉しくなるんです。だって、「いい音で、いい音楽を聴く」ということは、一番の快楽ですから。もちろん、狙いを持って、わざとビット数を落として劣化させたような音でも、音楽的な音として成立していればそれもひとつの個性であって、僕はそういう音楽も好きなんです。
─ これだけ誰でも手軽にいい音が追求できる時代の中で、なおかつオリジナリティのある音楽を作り出すためには、何が大切だと考えていますか?
O:結局は、自分の好きなことを突きつめていくということが大切になってくるんだと思います。今では、環境的にはアマチュアとプロの境目もなくなってきていますし、いつでも自分から情報を発信できる時代ですから、問題は「自分はどういう音楽を作りたいのか?」ということだけだと思いますよ。そこさえはっきりしておけば、誰でもミュージシャンになれて、歌い手になれる時代が、今まさにやって来ているんだと思います。だからと言って、SONARを使うのであれば、SONARのすべてを熟知しなければいけないとは、僕は考えてないんです。自分が求めている技術、自分の音楽を作るために必要最小限なことだけを覚えていれば、基本的にはそれで十分だと思うんです。もちろん、できることが多いほど、知識や情報が多いほどいろんなことができる可能性は広がっていくわけですが、まずは自分がどんな作品を作りたいのかを明確にして、その目的にたどり着く道具として、優れた機材や楽器を利用するということが、一番いいんじゃないかなと思います。
─ あくまでも、「自分は何を表現したいのか」が重要なわけですね。
O:まず、それがありきだということです。その部分を忘れて技術論に走っちゃうと、肝心な音楽そのものが退屈なものになってしまいますから。肝は作品であって、そのいい作品を作るために、SONARのような素晴らしい道具を利用しない手はないと思っています。

Profile:大澤誉志幸
1981年4月に「クラウディー・スカイ」のボーカル&ギターとしてビクターよりデビュー。2枚のシングルと1枚のアルバムをリリースする。その後、沢田研二、中森明菜、山下久美子、吉川晃司等へのシングル曲を提供し、メロディ・メーカーとしての才能を世間に認知させる。1983年6月にエピック・ソニーよりソロ・デビュー。「そして僕は途方に暮れる」等の大ヒットでシンガーとしての地位を不動のものとする。その傍ら、吉川晃司、アンルイスをはじめとする数多くのアーティストへの楽曲を提供や、鈴木雅之、本木雅弘等のプロデュースを行なう。また、バブルガム・ブラザース、杏子、鈴木聖美等を集めてのクリスマス・アルバムの企画&プロデュース等も行うなど、ソロ活動を中心にその活動の幅は多岐に渡っている。1995年にはワーナーレコーズに移り、3枚のアルバムを発表した後、シンガーとしての活動を停止し、作曲&プロデュース活動に専念する。2002年、2年半の充電期間を経て活動を再開。"大沢誉志幸"から本名である"大澤誉志幸"に変更し、「Nova Bossa nova」、「summer breeze」等、CD・BOOKやシングルを発売。2003年、ソロ・デビュー20周年を記念したアルバム『y』を古巣エピック・ソニーより発表。20周年記念ライブも大盛況を博す。2004年より、三洋信販のCM「Stand by me(カバー楽曲)」がオン・エアー。これに際し、フェバリット楽曲のカバー・アルバム『Favarite』(sorte-001)を自身のレーベル"SORTE"よりリリース。2005年、限定マキシ・シングル「夏の終わりの午後」を発表する。また、山下久美子25周年企画アルバムにハウンド・ドッグ大友康平と参加、旧友3人で名曲「you've got a friend」をカバー(大澤はボーカルの他、ギター、コーラスも担当)。2006年、TOYOTA車のTOYOTA RAVE4 CM(ボーカル"KOTO")をプロデュースし、同時に作曲/ギター/サブ・ボーカルも担当する。同時に、Strawberry Rockin' Soul Girl「KOTO」のCM曲を含むCDシングル「LOVE FOR YOU / cw. SHINY SHOES」をプロデュース。2007年、Avex新人女性ボーカリスト高杉さと美の大澤楽曲「そして僕は途方に暮れる」のカバーをきっかけに彼女の新曲2曲をプロデュース。2008年、ソロ・デビュー25周年のANNNIVERSARY YEARを迎えるにあたり、東・名・阪・福で前哨宴SPECIALライブを展開。5/7にシングル「そして僕は途方に暮れる」、5/28にアルバム『Season's greetings~春』をユニバーサルよりリリース。さらに10/15には『Season's greetings II~夕凪』をリリース。2009年春には東・名・阪・福でSPECIALライブを予定。さらに、6月以降に『Season's greetings』シリーズの第3弾をリリース予定。2004年~2009年現在、ほぼ3ヶ月タームでライブ活動を展開するなど、ジャンルを越えた多様な編成(ソロ弾き語り、DJやバンド・スタイル)で、大澤流クロス・オーバー・ミュージック(BOSSA NOVA /ROUGE/JAZZ/ROCK/RHYTHM AND BLUES)をシリーズ化して展開している。
オフィシャル・サイト:http://www.y-ohsawa.jp/
Information
■CD
『Season's greetings II~夕凪』(初回盤)

UMCK-9228(DVD付) ¥2,980
『Season's greetings II~夕凪』(通常盤)

UMCK-1267 ¥2,500
■LIVE
3/29(日) Special Acoustic Live 1st&2nd LIVE(STB 139)
4/10(金) ビルボードライブ福岡
5/8(金) 名古屋ブルーノート
5/9(土) ビルボードライブ大阪
※詳細は、上記オフィシャルサイトをご覧ください。
