mnavi Interview

Vol.22:宮崎隆睦 一緒に演奏できる仲間を見つけること。それが音楽を楽しむ一番の方法だと思います。

"T-SQUARE"への参加など多彩なフィールドで活躍するサックス・プレイヤー、宮崎隆睦。現在はポップ・ジャズ・バンド"木原健太郎 with ベリー・メリー・オーケストラ"のメンバーとして、高い演奏テクニックと優れた音楽表現を併せ持った最高のサウンドで、多くの音楽ファンを魅了し続けている。そんな彼の音楽性を育んできたバックボーンとともに、ミュージシャンの原点である「音楽の楽しさ、素晴らしさ」について、じっくりと語ってもらった。

サックスは独学。手本となるレコードを
聴きまくって練習した。

─ "ベリー・メリー・オーケストラ"でご一緒に活動されている木原健太郎さん(Pf&Vo)とは、米国バークリー音楽院時代からのお付き合いなんですか?

宮崎(以下、M):そうです。トランペットの田中(充)君も、時期がちょっと違うんですが、同じバークリーです。ドラムの末藤(健二)君は、木原くんと同じ北海道出身つながりであったりと、何か同窓会のようなノリで集まったメンバーで、とても楽しく活動しています。テナー・サックスの橋爪(亮督)くんも、バークリー時代からの友人です。彼はバークリー時代、デイヴィッド・サンボーンが大好きな人だったんですけど、そのうちにアルト・サックスからテナー・サックスに転向して。それで普段、彼はECMレーベル(ドイツの現代音楽的なジャズ・レーベル)・テイストの音楽をやってるんですけど、このバンドだと、歌うようなフレーズを吹きたがるんですよ。

─ ベリー・メリー・オーケストラの「年齢層を問わず楽しめる懐かしくも新しいポップス」というコンセプトからしても、実に楽しそうですね(笑)。

M:そうなんですよ。ですから、アレンジにしても、あまり小難しくならないようにしてます。元々は、木原君がハリー・コニック・Jr.のビッグ・バンドのような音楽が好きで、そういう編成でやりたいと言い出したのがきっかけなんです。それで、4管編成なら何とかできるかなということで、このメンバーになったんです。

─ 宮崎さんは、本当に多彩なフィールドでご活躍されてますが、そもそもはどのようなきっかけでサックスを始められたのですか?

M:僕が通っていた中学校は男子校だったんですが、入学した時に、たまたま隣の席の子にブラス・バンドを見に行こうと誘われて、付いていったんです。そしたら、彼がトランペットをやると言うんで、じゃあ僕も一緒にやってみようかって。

─ 最初はトランペットだったんですか?

M:そうなんです。ただトランペットって、押さえるところが3つしかなくて、口で音程を変えるんですよね。それがなかなか難しくて、「すみません、他の楽器はないですか」って言ったら、サックスを渡されたんです。僕は小学生の頃からリコーダーが得意だったので、「これならできるかも」と思ったのが、サックスを始めたきっかけですね。

─ その部活での練習はハードだったのですか?

M:いえ、それがそのブラス・バンドはまだ同好会レベルで、正式なクラブ活動ではなかったんです。運動会の時に校歌を演奏するような活動だけで、メンバーも5~6人程度でした。それで、僕が入学して翌年にようやくクラブになったんです。そんなブラス・バンドも、今ではビック・バンドで全国的にも有名な学校になったんですよ。

─ そうだったんですか。当時はどのように練習されていたのですか?

M:ほとんど独学ですね。最初はマウスピースのはめ方も分からなくて、上下を逆さまにしてリードを上にしていたんです。そしたら「それ、逆だよ」って先輩が教えてくれて。それを教えてくれる先輩はいたんですが、これ以上のことは、あまり教えてもらってません(笑)。

─ (笑)。てっきり、小さい頃からサックスの基礎を学んで、バークリーに進まれたのかと思ってました。

M:それが全然違うんですよ。バークリーに行くまでは、本当に楽器を人に習ったことがありませんでした。ただ、両親が音楽好きだったんですね。楽器はやってませんでしたが、イージー・リスニング的な音楽が大好きで、僕も小さい頃にカーペンターズやポール・モーリア、バート・バカラックのコンサートを生で観に行ってるんです。グレン・ミラーのジャズも、両親が聴いているのを耳にしていましたし、ピアノを習ってる姉がいて、その姉と一緒にピアノ教室にも行ってました。最初は遊びに付いて行ってただけなんですが、どうやら「自分も習いたいと」言ったらしく(笑)、小学校の4年生くらいまでの3年間ほど、ピアノを習ってました。

─ 音楽そのものには、幼少の頃から親しんでいたんですね。

M:そうなんです。だからサックスの練習も、基本的にはお手本となるレコードをたくさん集めて、とにかく聴くことから始めました。最初に買ったレコードが、渡辺貞夫さんの『オレンジ・エクスプレス』。これをひたすら聴いて、そっくりそのまま吹けるように練習したんです。あとはMALTAさんの演奏をコピーしたり、中学3年の頃にはTHE SQUARE(現T-SQUARE)を初めて聴いて。実は、中学3年生の頃にバンドをやっていて、それがTHE SQUAREのコピー・バンドだったんですよ(笑)。

─ そうなんですか! まさか自分がそのバンドのメンバーになるとは......。

M:本当に驚きですよね。でも、当時一緒にバンドをやってた仲間の方が、もっとびっくりしてました(笑)。

なるべく多くのチャンスを作って生音を体験して欲しいし、
僕らも生音の素晴らしさを伝えたい

─ 実際にプロになろうと意識し始めたのは、いつ頃ですか?

M:先ほど言ったブラス・バンドは中学3年生でやめたんですが、それからバンドをやり始めたりして、高校1年の終わりくらいにジャズのライブ・ハウスに遊びに行ったんです。そうしたら、たまたま僕が楽器を持って行ってたこともあって、出演者に無理矢理ステージに上げられたんですよ。何かやれって(笑)。でも、アドリブなんか当然できないわけで、仕方なく当時練習していた渡辺貞夫さんの「ボディ&ソウル」を演奏したら、えらく喜ばれて。ピット・インのライブ盤を丸まるコピーしてたから、向こうも面白がってくれたんですね(笑)。そしたら、毎月レギュラーで出ようというような話になって。

─ それもまた、すごい話ですね(笑)。

M:でも、そこからが苦労の始まりでした。曲は知らないわ、アドリブはできないわ、ジャズのルールも知らないから、曲のエンディングをどうするのかも分からないし、すべてが手探りの状態でした。でも、ライブに出ることは面白くて、しかも小さい頃にピアノを習ってたこともあって、どうやら絶対音感は身についていたんですね。アドリブはできないけど、この音は使っちゃいけないというようなことは感覚的に分かったんです。でも理論は全然知らなくて、和音を聴いても何のコードだか分からない。それで、やっぱり理論的な部分も勉強したいと思って、日本で4年制の大学を卒業した後に、バークリーに留学したんです。バークリーは日本の音楽大学と比べて堅苦しい雰囲気もなくて、授業が終ると教室を生徒に開放してくれて、そのままセッションしたりするんですよ。知らない人がやってても、面白そうだと思ったら乱入するような、自由な雰囲気がありましたね。それで楽しければ「イェーイ」って(笑)。

─ いかにもアメリカらしい雰囲気ですが(笑)、ミュージシャンになるには、そういう積極性も必要なんですね。

M:変な言い方ですが、ある程度、図々しいぐらいの性格の方が、こういうセッションは得意でしょうね(笑)。でも僕も、元々はすごく人見知りするタイプの人間なんです。小さい頃は、会った人にもなかなか挨拶もできなくて、よく親に怒られてました。そういう性格的な部分は変わらないかもしれませんが、楽器を持つと人格が変わるという人も多いじゃないですか。人前で歌うのは恥ずかしいけど、楽器だったら、という部分もありますし。ですから、そういうサックスという楽器に出会えたのは幸せですね。

─ それでも、人前で演奏するにはやっぱり勇気も必要ですよね。最初の一歩が踏み出せないという方も多いと思うのですが、何かアドバイスはありますか?

M:人前で演奏するのは、やっぱり緊張しますよね。でもそれって、「上手く演奏しよう」とか「カッコよくやろう」と思うから、余計に緊張してしまうんですよ。僕も全国各地でスクールやセミナーをやってますが、「上手く演奏しようと思わなくてもいいから」ということは、よく言うんです。やっぱり1人で練習していても、楽器の上達には限界もありますから、スクールでもいいですし、一緒に演奏できる仲間を見つけることが、音楽を楽しむ一番の方法だと思います。

─ その点、ベリー・メリー・オーケストラのライブは、本当に楽しそうですよね。5月には関西ツアーが行われて、神戸と高知公演は「宮崎隆睦スペシャル」だそうで。

M:そうなんです。出身地の神戸と毎月レッスンに行っている高知で、スペシャルなライブをやらせていただきます。このバンドは、同じ時期に一緒に勉強していた仲間が集まってるので、ライブをやっていてもずっと笑いっぱなしなんですよ。メンバー紹介も、普通に紹介するだけでなくて、ちょっと趣向を凝らしたりしているので、お客さんにも楽しんでもらいたいですね。それと同時に、生の音のよさも感じてもらいたいと思ってます。よく学校や社会人の吹奏楽部の演奏会にゲストで呼んでいただくんですが、出演後に先生から「生徒たちが見違えるように練習をするようになった」と連絡をいただくんです。生音って、それだけ影響力があるんだな、と実感しています。インターネットで手軽に音楽を楽しめる時代に、ライブに行くって時間もお金もかかりますけど、その分、得られるものも大きいはずです。なるべく多くのチャンスを作って、生音を体験してもらいたいですし、僕らもそこを伝えていきたいですね。