mnavi Interview

Vol.23:浩一(Bahashishi) メロディや音色には色があって、その色を表現したいと思ったんです。

スワヒリ語で"心"という意味を持つBahashishi(バハシシ)が、その"心"を多くの聴き手に届けるべく、最新作『COLOR of LIFE』を完成させた。このアルバムに収録されているカラフルなメロディを紡ぎ出しているのが、ギタリスト浩一だ。彼にアルバムの制作秘話を披露してもらいながら、自ら「大好きだ」と語るマルチ・エフェクターの最新モデル、ボスME-70を試奏してもらった。

当たり障りのない曲にならないように
曲作りの際はギターを持たない

─ 最新作は『COLOR of LIFE』というタイトル通り、楽曲がとてもカラフルですね。

浩一(以下、K):シングル曲「Story...」がドラマチックな曲だったので、アルバムは意識して幅広い楽曲を取り入れようと考えていました。「明るい」と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、僕個人のイメージとして、いろんな色を散りばめたようなアルバムにしたかったんです。僕は、メロディにはメロディの、音色には音色が持つ色があると思っていて、その色を表現できたらいいなと思ったんです。この曲は音色で、この曲はフレーズ、この曲は歌のメロディといったように、ひとつひとつの曲に明確なカラーを持たせようという点は、すごく考えました。ですから、ただ単にコードとメロディ、リズムがあるだけ、という曲は避けようと思って、1曲1曲を丁寧に作っていきました。

─ 曲作りをする際は、どこから始められますか?

K:やっぱり鼻歌から始まることが多いですね。僕は曲作りの際には、ギターを持たないようにしているんです。

─ それは、なぜですか?

K:ギターを手にすると、すぐに曲ができてしまうんですよ。でも、それは手癖であったりとか、結果的に全部が似通った曲になってしまいますし、しかもそれが、別に悪いメロディでもないから、それなりに満足してしまうんですよね。当たり障りのない曲になってしまいがちになるんです。そういったことは極力避けようと思って、ギターで曲を作らないようにしているんです。

─ では、鼻歌で思いついたフレーズは、何らかの方法でストックしていくのですか?

K:はい。昔使っていた携帯電話のボイス・レコーダー機能を使って、録音するんです。なぜだかそれが、一番使いやすいんですよ。でも、結果的にストックしたフレーズは、ほとんどダメだったりもするんですけど(笑)。

─ (笑)。例えば、シングル曲の「Story...」の場合は、具体的にはどのようにして鼻歌から発展させていったのですか?

K:「Story...」は、実は作り方がちょっと違っていて、本を読んでいたら、急に頭の中でフレーズが流れ始めたんです。その段階で、エンディングのフレーズが、ほとんど形になっていました。ファンタジー的な本を読んでいたんですが、まるでその本の主題歌のような感じでフレーズが流れたので、「ありがとうございます。いただきます」って、曲にしました。ですから、今ここで本を読むのをやめようかどうしようかって、すごく迷ったことを憶えています(笑)。

─ そこからは、ようやく楽器を手にするわけですね。

K:そうです。僕は、最初はドラムから作っていきます。ドラム、ベースの順かな。ギターは最後ですね。後からどうにでも入れられますから。

─ ギタリストであるにもかかわらず、ギター・パートは最後に考えるのですか?

K:逆に自分の苦手なパートから構築していかないと、最後の最後に、どうにもならなくなってしまうんです。ですから曲作りの際は、ギターのことよりも「どういう風にマイクを立てて録るか」とか、そういうことばかりを考えています。例えば、「この曲はオフマイクを立てたほうがいいんじゃないか」とか、「ドラムは天井が高いところで録ろう」だとか。

─ フレーズを描いた段階で、サウンドの方向性までイメージを作り上げるんですね。

K:頑張って考えます。デモを作る際は、できるだけ自分の頭の中にあるものをみんなに正確に伝えたいんです。ですから、最終的なイメージを忠実に再現できるように、デモを完成させます。誤解されて、受け取られたくないんですよ。「デモはこうだけど、完成品はもっとよくなる」というような提示の仕方は、あまりやりたくないんです。

5人分のアレンジ、5倍のアレンジ力を持っていることが
僕らの音楽の一番の強み

─ デモの制作は、どのような環境で行っているのですか?

K:Windowsパソコンを活用しています。実は僕がコンピューター・ミュージックを始めたきっかけが、ボスのGS-10なんです。あれって、当時のSONARをベースにしたシンプルなDAWソフト(Cakewalk Music Creator)が付属されてたじゃないですか。それを使って、曲作りをしていました。GS-10にはエフェクターも搭載されているし、本体にスピーカーも内蔵されてるので、すごく重宝しましたよ。ですから、僕はSONAR派なんですよ。今では他のソフトも使ってますが、最新のSONARはマスタリング・エフェクトも充実しているようですし、V-Vocalもすごく進化しているようなので、とても興味を持っています。

▲写真1:浩一氏のメイン・ギター、ギブソンES-335。Bahashishiを結成した頃に、当時の現行モデルを購入し、それ以来、ライブとレコーディングを通して、ずっとメインの1本として使用している。PUセレクターはセンター・ポジションを基本とし、レコーディング時にソロを弾くような場合は、フロントを使用することもあるという。

─ レコーディングでは、ギターはどのように録っているのですか?

K:基本的には、アンプを鳴らしてマイク録りをしますが、ライン録音もしますよ。今回も、自宅でGS-10を使ってライン録音したフレーズも何曲かで使ったんです。「繋いだ手と手」という曲で、ボトル・ネックのリード・ギターがあるんですけど、あれは自宅で録ったトラックなんです。

─ それは最初から、採用する意識で自宅録音したのですか?

K:いえ、録音した時は、本チャンで使う気はなくて。自宅で録ったテイクだし、クオリティも低いだろうと思っていたんですが、スタジオで再生してみたら、これが意外にもいい音だったので、ちょっと使ってみました。普段のレコーディングでも、アンプのマイク録りと同時に、ラインでも録ってもらうようにしているんです。

─ 両者のサウンドは、どのようなイメージで使い分けているのですか?

K:エッジが効いたギターが欲しい時や、できるだけデッドな響きにしたい時に、ライン録音のトラックを使います。アンプのほうは、膨らみ感だとか、音圧感ですね。

─ 今回のアルバムは、ギター・サウンド自体もとてもカラフルですが、曲の構成ごとに楽器やアンプを変えて録ったのですか?

K:基本的には、「この曲はギタリストが何人必要か」という考え方で、ギター・サウンドを作っていくんです。ですから、フレーズごとに、ギター・テックの方に用意していただいたギターを弾いて、「じゃあ、Aというギタリストはこのギターで、Bはこのギターで」というような形でギタリストの数だけ楽器を選んで、ベーシック・トラックを録っていきました。

─ ベーシック・トラックは、いわゆる"一発録り"ですか?

K:そうです。ただドラム、ベース、ギターとブースを分けたうえでの一発録りなので、ドラムとベースのいいテイクが録れたら、あとは上モノを重ねていくという流れです。でも今回の作品では、ブースを分けずに録った曲もあったんです。「小さな事でも」は、メンバー全員が同じ部屋で、そこに思いっ切りドーンとマイクを立てて録ったんです。もちろん、個々の楽器にもオンマイクを立てるんですが、僕のアコースティック・ギター用のマイクが明日香(key)のグロッケンの音をめちゃくちゃ拾っちゃって。結局、グロッケン用のオンマイクは使わずに、アコースティック・ギター用のマイクだけを活かしたんですよ。これでもうやり直しは効かないな、という感じで(笑)。

─ 今日お話を伺っていて、いちギタリストにとどまらず、プロデューサー的な視点で曲作りに取り組んでいる印象を強く受けました。

K:それはあると思いますね。そもそも、ギターが入ってない曲があっても構わないと、僕は考えているので。ギターが必要なければパーカッションでもやろうかなって(笑)、それくらいの意識で曲作りに取り組んでます。そういった中で今回の作品は、僕らはメンバーが5人いますから、5人分のアレンジがうまく出せたと思っています。僕がいなければ「小さな事でも」のアレンジはできなかったと思いますし、Hajime(Dr)がいないと「似た者同士」は、あのアレンジにならなかった。他の曲も全部そうで、つまり僕らは5倍のアレンジ力を持っているんです。そこが、Bahashishiの音楽の一番の強みかなと感じています。

▲写真2:左から、JARI(Bs)、明日香(Key)、ユラリ(Vo)、Hajime(Dr)、浩一(Gt)