全員が好きなことをやってアルバムを作ったら、
聴き手の反応に手応えを感じた
─ 11/25にリリースされるアルバム『paratroop』は、どのようなコンセプトで制作を進めていったのですか?
田中(以下、TN):コンセプトというわけではありませんが、前作(『archive』)が、当時の僕らのベスト盤的な意味合いが強かったので、そこでひと区切りをつけて、また新たな挑戦ということで、フラットな気持ちで、いろんな要素を入れていこうという想いで制作しました。
─ 曲作りは、どういうスタイルで行っているのですか?
成山(以下、N):全員が曲を作るんですけど、その方法は、みんなちょっとずつ違います。俺は歌モノを作ることが多いので、アコースティック・ギターを弾きながらそれを録って、そこからみんなで肉付けをしていきます。山内は、パソコンを使って曲を作ってくる感じですね。
TN:僕の場合は、まずベースでリフを考えて、ドラム・パターンまで作ったら、それにみんなで肉付けをしてもらいます。

▲写真1:成山剛(Vo, Gt)
津波(以下、TS):僕も部分的なんですが、ベースとドラムだけを考えたりとか。あとは、だいたい口で説明したりします。
N:だから、"リズム発信"か、"歌発信"か、という感じですね。それに対して、山内が作るデモは、雰囲気というかSE(効果音)っぽいギターが主になっていたりしていて、そこからメロディというか、曲の風景、世界観がパッと見えてくる感じです。
─ 各自のアイデアを、バンドでアレンジしながら組み立てていくという流れなんですね。
N:そうです。だけど今回は、プリプロではそんなにスタジオには入らなかったですね。
TN:これまでよりも、パソコン上での作業が多かったと思います。そうやって作ったものを、ファイルでやり取りしたりだとか。
山内(以下、Y):これまでは、全員でスタジオに入って、その場でどんどん作っていくというスタイルだったんですが、今回は、個々での作業も多かった。コーラスをたくさん試してみたり、ベースも5本くらい重ねて録ってみたりだとか......。そうやって1人で多くのことを試しながら、最後に4人で曲を構築していくという感じでした。
TS:ドラムも、プリプロではエディロールR-09で録ったんですよ。手元に置いて、レベルさえ調整しておけばキックの音まできれいに録れて、すごく楽チンでした。以前は、1曲のアレンジを詰めるのに何週間もかけて、何度もバンドでセッションしていたんです。
N:特にドラム録りになると、すごい量の機材を持ち込んで、マイクを立てて録ってましたからね。

▲写真2:山内憲介(Gt)
TS:それが今回はR-09を使ったことで、例えば、山内から「こんな感じのドラムを録って」と連絡が来て、叩いて、録って、データを送る、という感じで、やり取りもスムーズになり、ものすごく作業効率が上がりましたね。「俺達は今まで何をやってたんだろう?」って思うくらい、何倍ものスピードで作業を進められました。
Y:そうそう、R-09と言えば、以前にこれでイカの声を録ったんですよ。函館まで行って。

▲写真3:津波秀樹(Dr)
N:「さかなになって」という曲があって、海の音をいっぱい入れようということになって。それで山内が、わざわざ函館まで帰って「キュン、キュン」っていうイカの音を録ってきたんです(笑)。
Y:そのまま、SEとしてCDに収録しました(笑)。
─ そういったフィールド・レコーディング的な要素も含め、美しいメロディと浮遊感のある音響系サウンドをバンド・スタイルで生み出すというsleepy.abの方向性は、どのようにして生まれたのですか?
N:バンドを結成した当初は、もっと音響系の志向が強かったんですが、3枚目のアルバム『palette』に入ってる「メロディ」っていう曲を作って、そこからスタンスが大きく変わったような気がします。それまでは、アルバムのカラーに統一感を持たせようという意識が強かったんです。でも、それに少し飽きてきた頃で、「もっと、みんな好きなことをやればいいじゃん」という感じで作ったアルバムだったんです。
TN:僕ら4人は、そもそも聴く音楽も格好も、バラバラですからね。
N:全員、同じ音楽専門学校に通ってたんですけど、当時はまったく違うグループで、交流がなかったんですよ。聴く音楽も、俺はイギリスっぽい音楽が好きだったし、山内はソウルだとか。
Y:あと、フォーク。サイモン&ガーファンクルとか。
N:で、ベースはメタル?

▲写真4:田中秀幸(Bs)
TN:僕は元々ギターを弾いていたので、当時はギター・ヒーローに憧れていましたね。
TS:僕はジャズ・ファンクが好きで、中学、高校の頃から、ずっと聴いてます。
N:そういうバックボーンがあるわけだから、全員がそれぞれ好きなことをワーッとやってアルバムを作ったら、これがウケたんですね。聴き手の反応に手応えを感じたというか。それで、「あ、これでいいんだ」って思えるようになったんです。






