ミックスしていると、自分でもこの音がギターなのか
シンセなのか、分からなくなってくる

─ ギター・バンドのスタイルでありながら、ドラム・サウンドも、かなり手の込んだ処理がされていますね。
N:レコーディングに関しては、ドラムもかなりエフェクティブに仕上げることはありますね。その場合は、津波が山内のところに素材を送ってきて、山内が作り込んだりします。
TS:僕自身も、ドラム音を歪ませたりするのは好きなんです。配信限定リリースのシングル「アクアリウム」では、キックにかなりリバーブをかけたりもしました。
Y:処理自体はプラグインですることが多いですが、プリプロの際にも、ドラムにディレイをかけて遊んだりして、いろいろと試すんです。
─ 津波さんは、ドラムにボスDD-20を組み込んで使っているとのことですが、どのような使い方を?
TS:マイクからPAに送られたキット全体の音をDD-20に戻してもらって、それを足元で操作するんです。山内もフレーズをループさせて重ねていったりするので、それに合わせながらドラムもループさせるのは、かなり難しいんですけどね。だけど、リバース・ディレイとか、ものすごく迫力のあるサウンドにできるんですよ。これはイイな、と思って。
Y:普通だったら、一度録音して波形をリバースさせれば、音もいいし簡単なのに。効率が悪いですよね(笑)。でもやっぱり、みんな"生音"が好きなんですよ。
TS:そう、"人力"でやりたいんですよね。シーケンサーを使って同期させることもできますけど、それはあんまり好きじゃないんです。山内がマルチ・エフェクターを使わずにコンパクトにこだわってるっていうのも、人力でやることへのこだわりなのかもしれませんね。

▲写真8:津波氏所有のギガ・ディレイDD-20。かつてジョジョ ・ メイヤー(Dr)が、パッドとループ・マシンで自分のプレイをループさせている映像を目にしたことがきっかけで、「ドラム・セットでもやってみよう」と導入を決めたのだそうだ。
N:以前は打ち込みの音もたくさん入ってましたが、最近は、生音の比率が上がりましたしね。オルガンやストリングスなどは、プロデューサーの田中一志(注:『mnavi Interview Vol.27:田中一志』参照)さんにお願いしていますが、シンセ的なサウンドも、今ではギターに置き換える場合が多いです。で、ライブをやるって時に、「これはシンセの音だっけ? ギターだっけ?」みたいになって(笑)。
Y:自分でも、ミックスしていると、ギターで作った音なのか、シンセなのか分からなくなる時があるんですよ。でもそれが狙いでもあるし、そういう意味では、まろやかな音色を作るという点は強く意識してます。フィルターを何段もかけたり、テープ・エコーにしても、1回だけじゃなくて何回も同じものを通して、溶けちゃうような質感を作るんです。今回のレコーディングでも、どうしてもホルンの音が作りたくて……。
─ ホルンの音を、ギターで?
Y:はい。でも、ギターでは出せないわけですよ(笑)。だから、とりあえずギターでシンセっぽい音を作って、そこからフィルターでバーッと広げて、ものすごく細かいトレモロをかけて「ブーッ」っていう楽器を吹いてるような音を作ったら、「あ、ホルンになった」って(笑)。ギターで何でも作れるんだなって、改めて思いました。
N:パッと聴くとシンセのような音でも、ギターを弾いて、それを切り刻んでフレーズを作ったり、散りばめたりするという作業は、とても面白かったですね。
─ そういう意味では、楽器を始められた頃と今では、随分と音楽や楽器の楽しみ方が変わってきたんですね。
TS:それでもやっぱり、これから楽器を始めようという人には、そういった楽しみ方のうえで「人前で演奏する」ということも、十分に楽しんでもらいたいですね。ドラムでもギターでもそうだと思うんですけど、個人でやってると力量の限界が見えてきてしまうじゃないですか。それでも、人前で演奏することで、それを超えられる楽しさがあると思います。
─ それでは最後になりましたが、これからもみなさんは、やはり"札幌"にこだわって制作活動をしていこうというお考えですか?
N:そうですね。ここで生きていることが、いろんな面でのバランスが一番よく感じるんです。今回は、東京のエンジニアさんにわざわざ札幌まで来てもらってレコーディングをしたんですけど、「ドラムの音がいい」ってエンジニアさんが言うんですよ。東京では録れない音だって。空気が乾いているとか、そういう話もあるとは思うんですが、でもそれ以上に、北海道の風景だったり風だったり、そういったものが、僕らの音楽に反映してるんじゃないかなという想いがあって。札幌では言われないんですけど、道外に行った時に「北海道っぽい音ですね」って言われることがあって。そう言われると、やっぱり北海道で音楽を作っている意味があるんだなと、今は強く感じています。





