ずっと続けてきた基礎練習が積み重なって、
僕のドラム・スタイルが確立している
─ 普段、バンドではどのようなスタイルで曲作りを行っているのですか?
N:基本的には、TKが曲を作ってきて、それをバンドでアレンジしていくという形ですね。最近だと、ある程度の形になっているデモ音源があって、それを生でやってみましょうという感じでスタジオに入る場合と、「こんな感じでやってみて」という指示をもらいながら演奏したものを録音して、それを素材として後から構成を組み立てていく方法のどちらかですね。TKから「ちょっと激しいの、ちょうだい」とか言われて、ドコドコ叩いたり(笑)。そういったアレンジの経緯を、僕は全部ノートに書いてあるんですよ。
─ と言うのは?
N:僕は必ずノートに書かないと、プレイできないんです。だから、「これはやめて、こういう風に変えよう」ってなると、ノートのその構成の部分にバツ印を付けて、新たに書き加えていくわけです。
─ アレンジの変遷が、履歴になってノートに全部残ってるんですね。
N:他の人が見たら「このノートで何が分かるの?」っていうくらいグチャグチャなんですけどね(笑)。スタジオでそういう作業を繰り返して、その日の最後に、その段階での構成で録音するんです。それを家に持ち帰って聴き直してみて、次にスタジオに入った時に、「やっぱり、一度ボツにしたアレンジに戻そう」ってなったら、さらにノートにバツを付けて、「やっぱり、これ」って一度消した部分に赤丸を付けたりして(笑)。
─ と言うことは、フレーズが生み出された瞬間は感覚的な要素が大きいのかもしれませんが、それを客観的に構成し直して、最終的には譜面に忠実に演奏する感覚なんですね。
N:そういったスタイルですね。そのプリプロも、DAWソフトを使ってメンバーできちんと録ってるんです。エフェクトもかけて、完成形を見据えながら録っていく感じです。ですから、プリプロと本番のレコーディングで、それほど大差はありません。あわよくば、本番テイクとしても使えるように録ってます。やっぱり、演奏の鮮度を大事にしたいんですよ。曲に慣れてくると、ノリとかタイム感が変わってくるので、そこをどちらがカッコいいかを見極めながら、レコーディングをしています。

─ そういった緻密さと鮮度を重視したレコーディングの一方で、ライブでのピエール中野さんのプレイはかなり激しいですよね。体力維持のために、何か日頃から心がけているようなことはあるのですか?
N:体力が落ちたなと感じたら、走るようにしてます。もう、ライブでは死にかけながら演奏してますからね。……と言うか、「ツアーの途中だけど、まあ、このまま死んでもいいや」というくらいのつもりで(笑)。そういう気持ちでないと、「凛として時雨」のライブは無理ですよ。ただ本当のことを言うと、ドラムの演奏自体には、基本的にはそれほど体力は必要ないんです。だって、60歳や70歳でも、ものすごいプレイをするドラマーってたくさんいるじゃないですか。だから僕のライブでの動きは、ドラムを叩くといううえでは、はっきり言うと無駄な部分が多いわけです。でも僕は、最初にも言ったようにYOSHIKIさんと同じで、とにかくそこに命をかけているし、だからこそ出せる音色もあるわけです。そして、そのステージを観てくれる人が、それを楽しんでくれたり、カッコいいと思ってくれると考えてるんです。
─ それだけ激しいプレイをしながらも、ピエール中野さんのドラミングはどこかクールというか、フォームも乱れることもなく、とてもスマートですよね。
N:グリップの持ち方を変えるだけでも、楽に速く叩けたりするんです。そういう部分と、ずっと続けてきた基礎練習の1つ1つが積み重なって、今の僕のドラム・スタイルが確立したんだと思ってます。もちろん、基礎練習が嫌になった時期もありましたけど、メトロノームを聴きながら専門学校に通学してましたからね。今日は「BPMがいくつ」って決めて、歩きながら頭の中でドラムのフレーズやフィルインを考えるんです。学校に着いたら、それをすぐに五線譜に書いて、実際にプレイしてみるということを日課にしていました。歩きながら、3連符の裏拍を取る練習をしたりして。傍から見てると危ない学生ですよね(笑)。
─ そこまでドラムを追求していたんですね。
N:いや、なるべく遊びたかったので「どれだけ日常生活に練習を組み込めるか」という発想だったんですよ(笑)。通学時間もトレーニングに充てれば「練習はサボってない」って言えるから、それで遊びに行ったりしてましたから(笑)。
─ 何だか、すごくポジティブなストイックさですよね(笑)。
N:嫌なストイックさだとは思いますけど(笑)、確かに負のオーラはなかったでしょうね。とにかく「上手くなりたい」、「人をアッと言わせるドラムを叩きたい」という気持ちは、誰よりも強く持ってましたから。やっぱり、最初に衝撃を受けたものが「人を圧倒する演奏」でしたから、ああいう風になれたらすげーカッコいいだろうなって、ずっと思ってたんです。そういう欲が、ものすごく強かったし、1つのことを突き詰めることで、それが他のことにもちゃんと結びついていくということも、体験によって理解してましたから。だから今でも、「まずはやってみよう」という気持ちは、いつも持ち続けていますね。




