アルバムとして気持ちのいい流れとなるように、
『BESTOISU!!!!』の選曲を行った
─ 1/13にリリースされたベスト・アルバム『BESTOISU!!!!』は、各曲が作られた年代の差を一切感じることなく、すべての曲が見事にフィットしていて、とても楽しめました。
ハヤシ(以下、H):それは自分でも感じましたね。曲順についてはかなり考えたんですけど、時代ごとに順を追っていくということはあまり考えなくて、1枚のアルバムとして、気持ちいい流れで聴けるものを作ろうという意識でした。あとは、フェスで盛り上がる曲だったり、ライブでよくやっている曲を中心に選曲しました。
─ ヤノ(Dr)さんが加入後のベスト・テイク集となりますが、『Now is the time!(2005)』から3曲、『KARATE HOUSE(2007)』から5曲、『We ate the machine(2008)』と『Absolute POLYSICS(2009)』からはそれぞれ4曲ずつ(他に未発表曲を収録)と、4作品からほぼ均等なセレクトとなってますね。
H:あ、そうなんですか?
─ はい(笑)。
H:そうなんだ(笑)。そこは、まったく意識してませんでした。去年秋にやったツアー(「POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2009!!!! ~秋はウハウハ!ツアーでOH! OH!~」と「POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2009!!!! ~AbsoluteでGO!!!!~」)の間に選曲を考えていて、移動中はずっと曲を聴いていたという感じでしたね。
─ このベスト・アルバムが完成した今、改めて4枚のオリジナル・アルバムを振り返っていただきたいんですが、まず『Now is the time!』は、どのような気持ちで制作したのですか?
H:そうですねぇ......。2004年にヤノが加入した時に、自分達の音楽性やバンドの体制を、もう1回、イチから作り直そうと思ったんです。それと同時に、ちょうど海外でのライブも増え始めた時期で、自分達が本当に伝えたい音は何なのだろうかということも、改めて考え直しました。その結果、「自分達がやりたいことは、とにかくニューウェーブ・パンクなんだ」と、マインドがシンプルになりましたね。もちろん、ニューウェーブ・パンクって言っても、アダム&ジ・アンツ(80年代ニューロマンティック・ムーブメントを作り出した英国バンド)から、ディス・ヒート(1975年に英国で結成されたポスト・パンクバンド)まで、ものすごく幅広いわけじゃないですか(笑)。POLYSICSだって、それらとはまた違うわけですし。そこで、シンプルに初めてボクらを観る人でも楽しめるようなライブをやろうと思ったんです。もちろん、ボクらの言う「楽しい」というのは、ただの「ハッピー」じゃなくて、そこにクレイジーな要素が凝縮されているわけで、そういった部分が伝わればいいなと思って。そう考えるようになってから、曲作りも自然と変わってきましたね。
─ そのマインドが『Now is the time!』という1つの形にまとまったんですね。
H:そういうことです。年に100本くらいのライブをやっていく中で、掴んだものがあって。特にヤノが加入して最初にやったUKツアーは、めちゃくちゃ濃密で。そこで、自分もリーダーとしての自覚が出てきたというか、ちゃんとバンドを引っ張っていかなきゃいけないって強く思いましたし、ヤノはもちろん、カヨも、フミも、1人1人がやれることを全部やっていこうというような意識になったんです。そういったことは、それまでのPOLYSICSにはなかったことで、生活面でもライブの演奏面でも、4人の関係性がギュッと深くなったという感覚はありましたね。それが、どんどん"音"として表現できるようになった時に、それまでには得たことがないようなバンドの一体感、メンバー同士の"音"の信頼感が、一気に増したんです。これは、その後のPOLYSICSにとって大きかったですね。

▲POLYSICSのメンバー。左から、ヤノ(Dr)、フミ(Bs/Voice/Synth)、カヨ(Synth/Voice/Vocoder)、ハヤシ(Gt/Voice/Prog)。
─ 当時、ハヤシさんは「バンドの体力が上がった」というように話してましたよね。
H:そうそう。演奏自体も、確実によくなったしね。そういう中で『Now is the time!』を作って、あらゆる面でイッパイイッパイではあったんですが、その時にボクらができることをすべてやった作品なんです。新体制になったPOLYSICSのデビュー・アルバムを作ろうという意識で、「ボクたち、POLYSICSっていうバンドです」っていう名刺代わりに、このアルバムで「ボクらは、こういうバンドです」ということが伝わればいいなと思ってました。
─ その方向性をさらに突き進めることで、『KARATE HOUSE』につながるわけですね。
カヨ(以下、K):ハヤシくんが言ったように、ヤノが入って、ゼロではないにせよ、またイチからバンドが始まるような状態だったので、『Now is the time!』の時は、本当に試行錯誤の繰り返しでした。でも、それがひとつの形にできたことで方向性が見えてきて、『KARATE HOUSE』では変に気を張ることなく「こういうこともやってみよう」、「ああいうのもやってみたい」というように、広げていく感触がありました。
H:そうだね。『Now is the time!』ではできなかったことに挑戦していく中で、『KARATE HOUSE』が生まれていったという感じでした。そこで4人のアイデアをぶつけ合った結果、自分が想像していた以上の化学反応が起こせたんです。その時点で、4人の関係性が"絶対的"というか、ものすごく面白いものになり始めたということが実感できました。
K:だからこそ、このアルバムではすごくバラエティに富んだ曲が入っているし、「どんなジャンルをやっても、POLYSICSの音楽になるんだ」っていう自信もつきましたね。POLYSICSというフィルターを通せば、どんな音楽でも作れるんだっていう。
H:そもそもボクは、エレクトロ・ミュージックのファンだけとか、テクノ・ポップのファンだけとか、パンク・ファンだけとか、ひとつのジャンルに固執する音楽が、昔から好きじゃなかったんです。だからこそ、ジャンルの垣根を越えたバンドを組みたいと思った時に、DEVOだったり、初期P-MODELの"あの感じ"、――つまり、テクノ・ポップ好きの人だけが楽しむ音楽ではないという感覚――、ここにすごくはハマったんです。音楽が好きであれば、誰しもが興奮するようなキャパシティの広さを感じたんです。それ以来、自分がやりたい音楽はこれなんだと、ずっと思いながら音楽を作ってきました。
─ 初期衝動の根幹は、POLYSICS結成当初から、まったく変わってないわけですね。
H:ずっとそこを目指してやってきましたから。......POLYSICSのお客さんって、実はDEVOファンやテクノ・ポップ好きって、そんなにいないんですよ。
─ ええっ!? 多いと思いますが......。
H:あ、いや、もちろん他のバンドに比べれば多いとは思うけど(笑)、全員が全員そういう感じではなくて、ロック好きの人が普通にロックとして楽しんでくれているじゃないですか。たくさんロック・フェスに出ているからかもしれないけど、そうできたことが、すごく嬉しくて。今思えば、デビュー当初は、そこがうまく伝えられなかったんですね。自分達のバンドとしての体力不足もありましたし。だから、デビューしたばかりの頃、イベントでいろんなバンドを観る度に「このままじゃダメだ。早く一人前のロック・バンドとして認識されたい」と痛感したんです。それで、そこを目指してずっと頑張ってきた感じですね。






