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カジュアルに音楽を作れる時代だからこそ、
「一流」と「アマチュア・レベル」の差が歴然と出てくる

─ お話を伺って、まさに天性のプロデューサー気質ということが分かりました(笑)。

T:自分でも、そう思います(笑)。でも僕は、そういうことが苦手なタイプのミュージシャン、つまり、とにかくプレイに没頭するようなタイプのプレイヤーと一緒の方が、面白いものを作れるんですよ(笑)。人前でプレイするのが大好きっていう人もいるだろうし、宅録が大好きという人もいますよね。やっぱり自分が向いているスタイルというか、自分がコンフォータブル(心地よく)に音楽ができる環境や楽器を見つけることは大切かもしれません。ストレスを感じながら音楽を続けることほど、つまらないものはないですから。せっかく音楽をやっているんだから、自分が一番のびのびとできる環境の中でやった方がいいと思いますね。

─ 武部さんが、ご自分の適性に気付かれたきっかけは何だったのですか?

T:すごく逆説的なんですけど、自分が苦手なタイプの音楽、いわゆる90年代に一世を風靡したような、打ち込み主体でコンビニエンスに作られる音楽がムーブメントとなって、そういうタイプの音楽のオファーを受けた時に、気付きました。僕にはああいう音楽は作れないし、それを僕に求められても困るわけです。でも、そういった音楽がチャートの大半を占めていた時に、僕は自分にしかできないことを追求しよう、これなら誰にも負けないというものを持とうと考えたんですね。そうすれば、今の時代が過ぎ去っても、音楽を続けていけると思ったんです。そして一青さんと知り合って、自分が本当にやりたいことを彼女と共有できて、それを形にできた。だから、その音楽が広く認められた時には、とても自信になりましたね。同じように、そういった感覚をずっと共有できているのが、やっぱりユーミンのチームなんです。松任谷夫妻とはもうかれこれ30年の付き合いですが、ずっと離れずに仕事ができているということは、本質的な部分での価値観が共有できているからだと思っています。

─ 最近では、音楽制作の敷居がさらに低くなっていて、ある意味で簡単に音楽が作れる時代ですが、その中で作品をクリエイトしていくには、何が重要とお考えですか?

T:手軽に音楽が作れるようになったことは、決して悪いことではないと思います。僕が音楽制作を始めた頃は、MIDIもなかったし、レコーダーもアナログでした。それが、MIDIが生まれて、いろんなものがデジタル化された結果、今やスタジオに入らなくても、誰でもパソコン上である程度のしっかりとしたオケまで作れる時代になりました。それは技術の進化だし、手軽に音楽制作が楽しめるということは、とてもカジュアルでいいことだと思うんです。ただ、だからこそプロとアマチュアの決定的な差が出てきていると思います。もっと正確に言えば、「一流」と「アマチュア・レベル」の差、そこは歴然と出てきますね。

─ その差とは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

T:音楽って、作り方に対するこだわりがなくなったら駄目だと思うんです。そのこだわりこそが、プロとして仕事をしていくうえで、一番大事な部分です。アーティストでも、アレンジャーでも、プロデューサーでも、何十年も音楽の仕事を続けてきた人には、その人なりにこだわるポイントがあると思います。それは「音色」かもしれないし、「フレーズ」かもしれませんが、そのこだわりを音楽の中にどこまで込められるか、そこじゃないでしょうか。すごく苦労して1音色を作ったり、すごく苦労してアンサンブルを考えたり、どうやったらイメージ通りの音楽に仕上げられるか必死に考えたりすることで、作品に想いを込めていけるわけです。

僕がアレンジャーとして関わった作品で、初めてチャートに入って、業界でも評価されたのは、斉藤由貴さんの「卒業」という曲なんです。この曲は、本当にシンセの1音色1音色にこだわりを尽くしましたし、アンサンブルも、ワン・コーラスごとに考え抜いて、膨大な時間をかけて完成させた曲なんですよ。そういう想いって、ちゃんと作品に込められるんです。一青さんの「もらい泣き」や「ハナミズキ」を作った時も、同じ気持ちだったと思います。いわば"エネルギー"ですよね。作品に込めたエネルギーって、やっぱり聴く人に何らかの形で伝わるんです。そういった、聴く人の心を掴むこだわりは、失うことなく持ち続けたいと思っています。

─ 楽曲に込める"エネルギー"こそが、聴き手に感動を与えるわけですね。

T:僕は、そう信じています。そのこだわりを失くしてしまったら、もはや一流の音楽家とは言えないだろうし、たとえそれでいい音楽を生み出せたとしても、長くは続かないと思います。今のリスナーは昔と違って、歌詞カードを見ながら曲順通りにアルバムを聴く人なんて少数派だと思うし、ひょっとしたら45秒のサビだけを聴いて満足しているのかもしれないけど、それでも僕らが作品に込める想いをなくしてしまったら、ますますCDは売れなくなるし、後世に残る音楽はなくなっていくでしょう。だからこそ、僕ら音楽の作り手は、作品に込める想いやこだわりを忘れてはいけないと思っています。

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Profile

武部聡志

1957年2月12日生まれ。東京出身。国立音楽大学卒業。大学在学中より、キーボーディスト、アレンジャーとして数多くのアーティストを手掛ける。1983年より、松任谷由実コンサート・ツアーの音楽監督を担当。1990年より本格的にプロデューサーとしての活動を始め、一青窈、大黒摩季、今井美樹などのプロデュースや、CX系ドラマ「BEACH BOYS」、「西遊記」などの音楽担当、CX系「僕らの音楽~OUR MUSIC~」の音楽監督等、多岐にわたり活躍している。

オフィシャル・サイト(Halftone Music Group):
http://www.htmg.com/

Information

■LIVE
Smiles&Tears(武部聡志、加藤いづみ、小倉博和、他)
『東京文化会館ポピュラーウィーク』

2/28(日) 東京文化会館

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武部聡志+&斉藤由貴
『~シアタークリエで唱門来福~』

3/8(月) 東京・シアタークリエ

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武部聡志(音楽監督&出演)ほか
『卒業のうた'10 ~songs for tommorow~』

3/20(土) 東京・中野サンプラザホール

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※詳細は、上記オフィシャル・サイトをご覧ください。