これほどまでにV-Synth GTが好きな理由は、
とにかくサウンドがぶっ飛んでいるから
─ まず、長いキャリアをお持ちである浅倉さんの"シンセサイザー変遷"について伺いたいのですが、最初のシンセサイザーはどのようなモデルでしたか?
浅倉(以下、A):僕が初めてアナログ・シンセサイザーを買ったのが、確か1982年だったと思うんですが、ローランドのSH-101なんです。そういうこともあって、今回試奏した新製品のGAIAが「SH-01」となっていて、懐かしく感じました(注:浅倉さんのGAIA SH-01試奏インタビューはmnavi Worksを参照)。
─ ちなみに、そのSH-101は何色のモデルだったのですか?
A:スタンダードなグレーのタイプでした。グリップは買いませんでしたけど(笑)、SH-101が僕のファースト・シンセサイザーなんです。でも、実は最初に手に入れたローランド製品は、TR-606(リズム・マシン)なんです。パラレル・アウトができるように、改造したりもしましたよ(笑)。ただ、もっと自分で自由に音色を作りたいと思うようになって、それでSH-101を買ったんです。すると今度は、頭に浮かんだ手弾きでは絶対に演奏できないようなフレーズを鳴らしたくなって、マイクロ・コンポーザーMC-202とベース・マシンTB-303を買いました。ですから、この4台が僕にとって最初の"打ち込みセット"だったんです。
─ そうだったんですか。その他に、何か印象に残っているローランド・シンセはありますか?
A:いやもう、歴代の製品はほとんど使いましたよ(笑)。発売順に言えば、JUPITER-8はもちろん、SHシリーズ、MKS-30も持ってましたし、大ヒットしたD-50、D-550、JD-800、JD-990、JV-1080、XPシリーズにJP-8000、JP-8080など......。全部挙げたらキリがないです(笑)。いまだにプライベート・スタジオ(アインシュタイン・スタジオ)で使っている機材も多いですし、ライブ・ステージでは、V-Synth GTと、ちょっと前のモデルですけどFantom-Sを愛用しています。
─ V-Synth GTは、どのような点が気に入っているのでしょうか?
A:一番は「バリフレーズ(VariPhrase)」ですね。僕が、このテクノロジーに最初に注目したのは、VP-9000(バリフレーズ・プロセッサー)でした。これが発売された時は、「何てものを作ったんだ!」と思いましたね。オーディオのピッチとタイム、フォルマントを独立してコントロールできるなんて、それまで考えられないことでしたから「ここまで音を冒涜するのか!?」という衝撃を受けまして(笑)。これは絶対に面白い音源になると思ったんです。それで、VP-9000をかなり使い込みまして、そこからさらに進化したVariOSに移行したんです。一時期、コーラス・パートはほとんどVariOSで作ってましたよ。人に歌ってもらわなくても、これほどのクオリティでコーラス・パートを作れるということは画期的でした。そういったバリフレーズの進化を見守る過程で(笑)、V-Synthを知ったんです。

─ 最初は、ラック・タイプのV-Synth XTをお使いだったそうですね。
A:V-Synth XTは今でも愛用していますが、波形さえ取り込めば、どんな音でも瞬時にシンセサイズできるといアプローチが面白かったですね。今度は「ここまでPCM波形を冒涜するのか!?」って(笑)。そこからV-Synth GTにグレード・アップされて、本格的に活用するようになりました。僕が何でこんなにV-Synth GTが好きかというと、――これは褒め言葉なんですが――、とにかく内蔵されている音がぶっ飛んでいるんですよ(笑)。PCM音源やモデリング技術の発達で、どんどん他のシンセサイザーがリアルなサウンドに近づこうとしている時代に、ここまで"壊れた音"は聴いたことがなくて(一同爆笑)。それくらい強烈なインパクトのあるサウンドに加えて、デザインも素敵じゃないですか。ツマミにしても、高級感が漂ってますし。バージョン2に進化して、さらに操作性が向上しましたよね。V-Synth GTは、現在の僕のフェイバリット・シンセサイザーなんです。
─ SH-101からV-Synth GTにいたるまで、長年に渡ってローランド製品を愛用いただいている浅倉さんにとって、ローランド・シンセサイザーには、どのようなイメージをお持ちですか?
A:ひと言で表現するなら、「そのモデルにしか出せない音を持っている」という印象を強く持っています。同じシリーズでも、新しいモデルになると音がよくなっているんですよ。その反面、前のモデルの質感が欲しければ、やっぱりそれを使わないとその音は出せない。だから、手放せないんです(笑)。特に僕は「自分の気に入った音を使いたい」という想いが人一倍強いので、フェイバリット・モデルはスタジオからは絶対に外さないんですよ。今でも、ピアノの音色のためにJV-880をラックに入れてありますし、ストリングスのためにJD-990も使っています。そういった一番いい例が、TR-909ですよね。あのサウンドは、TR-909でないと絶対に出せない。今やダンス・ミュージックでTR-909のスネアが入ってない曲を探す方が大変ですよね。それくらい、モデルごとに強い個性を持っているのが、ローランド・シンセサイザーのイメージです。
それともうひとつ、ローランドってアナログ部分をすごく大切にしていて、そこにとてもこだわって設計しているように感じるんです。その時代の一番いい音を出そうとしている。そういう印象を持っています。ハードウェア楽器って、アウトプット部分が一番重要なんですよ。シンセサイザーで言えば、ライン・アウトの音質。ギタリストが、同じギターでもアンプを変えることでサウンドを激変させるのと同じで、いくら中身の音源チップが凝っていても、その波形を出力するアナログ部分がしっかり作られていなければ、結局は出音が細くなってしまうわけです。そういったアナログ回路部分が、同じシリーズでもモデルが新しくなるごとに見直されているように感じています。








