Top > mnavi Interview > Vol.42:濱瀬元彦&清水玲(濱瀬元彦 E.L.F Ensemble&菊地成孔)

interview Back Number

Vol.42:濱瀬元彦&清水玲(濱瀬元彦 E.L.F Ensemble&菊地成孔)

70~80年代に第一線で活躍し、90年代を研究と理論展開に費やした音楽家/音楽学者、濱瀬元彦が盟友・菊地成孔と共同プロデュースで17年ぶりの新作『"The End of Legal Fiction" Live at JZ BRAT』をリリースした。その"テクノ・ジャズ"の核となるサウンドを生み出す濱瀬氏と清水玲氏の2人のベーシストに集まってもらい、ローランドのGR-20、V-Bass VB-99、ボスGT-10Bを駆使したサウンド・メイクの秘密を大いに語ってもらった。

17年前は打ち込みでしか実現できなかった音楽が、
生演奏でできることは、プレイヤーとして痛快

─ 17年振りの新作が、いわゆる究極の"一発録り"であるライブ・アルバムということでとても驚きました。まず、どのようなきっかけで、こういったスタイルでのリリースとなったのか、その経緯を教えてください。

濱瀬:17年前の作品は、僕が全部1人で打ち込みで作りましたし、それ以前の僕のソロ・アルバムも、打ち込みを多用したものなんですよ。それはあくまでも、音楽的に打ち込みを用いているだけで、コンピューターを使うことが目的ではなかったんですが、今は今で、コンピューターを使って音楽活動を行うということが、割とやりにくくなってるんですよ。システムが複雑になってライブをやるにしても動きにくかったりしますし、そもそも全部生演奏でやった方が面白いですからね。だけど、僕らの音楽をスタジオでレコーディングしてしまうと、きっと打ち込みで作った音楽のように聴こえちゃうと思うんですよ。

─ 確かに、曲が終わって拍手が入らないと生演奏だと分からないほどの高度なプレイの連続で、デスク・トップで構築されたかと思ってしまうような、完成度の高さでした。

濱瀬:そうでしょ?(笑) ただ、以前は僕の作品を演奏できる人材がいなかったんですよ。だから、コンピューターを使っていたわけです。それが20年近く経って、そういった演奏ができるプレイヤーが出てきたわけです。彼(清水玲)や成澤(功章)くん、岡部(洋一)くんは日本のトップ・プレイヤーですから、以前は打ち込みでしか実現できなかった音楽を、生で演奏できるようになったんです。そうするとね、コンピューターでやるよりも断然面白いし、ライブをやるたびに変化が生まれてくる。これは、プレイヤーとして極めて痛快なことなんですよ。それを聴き手に伝えるためには、ライブ録音がいいだろうということだったんです。

▲写真1:写真左上から時計回りで、濱瀬元彦(Bs)、清水玲(Bs)、岡部洋一(perc)、成澤功章(Key)、そして菊地成孔(Sax)。

─ なるほど。その際のプレイヤーの1人として、濱瀬さんとは師弟関係にある清水さんに白羽の矢が立ったわけですね。

清水:今回、濱瀬先生に誘っていただいたのは、僕にとっては奇跡のように感じています。濱瀬先生に教わり始めて16~17年になりますが、本当に基礎からすべて教わって、今までやってきましたから。今回、こうやってご一緒できたのは、僕のキャリアの中でも、予想できないくらいの最上級の出来事でした。その中で、濱瀬先生の音楽が持っている複雑な響きをプレイするためには、ローランドの機材は不可欠でしたね。もちろん、やろうと思えば生音のアンサンブルでも再現できるんでしょうけど、さらにイメージを広げるものとして、GR-20V-Bass VB-99は必須でした。

─ 2人のベーシストがステージでプレイすることになりますが、どのように役割分担をしていたのですか?

濱瀬:僕は完全にソロ楽器としてベースをプレイしていて、彼は打楽器兼ベースといった感覚でしたね。だから、岡部くんと2人でパーカッシブなものを作っている点が、このアルバムのサウンド面での秘訣だと思います。そうは言ってもベースが2本あるわけで、普通にプレイすれば音的にぶつかってしまう。そこで、僕は生音とGR-20を重ねて鳴らしているわけです。ベースって、どうしてもハイポジションにいくと音量が小さくなってしまうんです。だから、今までだと音を硬くしたり音量を上げるっていう方向にいってしまっていたのが、GR-20のある種類の音色を重ねて鳴らすことで、低い音域ではきちんとベースの生音が鳴って、音域が上がるにつれてシンセ音のバランスが強くなるというプレイができるようになったんです。ですから、GR-20はものすごく重宝していますよ。

清水:僕もこのアルバムでGR-20を使っていますが、僕の使い方は、成澤さんがV-Synth GTでストリングスとかいろんな音を鳴らしつつも、1人では足りないところを補佐するようなイメージですね。ですから、ベースが休んでいる時に、そういった音色をGR-20で鳴らすことが多いんです。

─ 確かに、濱瀬さんと清水さんのプレイは、音色やフレージングで聴き分けられたのですが、かたやシンセ・サウンドとなると、ベースで鳴らしているのか、成澤さんがV-Syth GTで鳴らしているのか、まったく区別が付きませんでした(笑)。清水さんはさらにV-Bassも使用したそうですが、GR-20とはどのように使い分けたのですか?

清水:主にスラッピングの音にシンセ・サウンドをレイヤーしたい時に、V-Bassを使いました。スラッピングをすると、ものすごく強い高調波が出るんですが、その場合はGR-20ではなく、V-Bassの波形合成モードを使うとコントロールしやすいんです。そういった形で、適材適所でGR-20とV-Bassを使い分けてます。あと、濱瀬先生は、ボスGT-10Bも足元に置いているんですよ。でもこれが、ベースではなく、GR-20のシンセ・サウンドに使ってるんです。

濱瀬:そうそう。リバーブとディレイ、コーラス、それにピッチシフター。GT-10Bのピッチシフターは、本当に素晴らしいですね。以前だと20~30万円の専用モデルを買わないと実現できなかったようなことが、これ1台で十分ですから。しかもね、僕の場合はピッチ・シフトのシフト幅が全音だと困るんですよ。コンパクト・エフェクターのピッチ・シフターだと、全音単位かデチューンでしかシフト設定できないんですが、GT-10Bだと半音単位で設定できるので、すごく便利なんです。それでGR-20にピッチ・シフトをかけて、実音の上下というように複数の音程を鳴らしているんです。そうするとね、もう全然ベースの音じゃなくなってくるわけですよ。つまり、以前はシンセやサンプラーでやっていたことを、今は僕が生演奏でやってるわけです。

▲写真2:濱瀬氏の使用機材。インタビュー中に出てくるGR-20やボスGT-10Bの他にも、ボスのギガ・ディレイDD-20とコーラス・アンサンブルCE-20も使用している。

▲写真3:清水氏使用のV-Bass VB-99。

▲写真4:成澤氏使用のV-Synth GT。ほぼすべてのシンセ・サウンドをこの1台のみで奏でている。

▲ページの先頭へ

  • 次のページへ

Profile

濱瀬元彦 E.L.F Ensemble&菊地成孔

21世紀型マンドライブ・テクノ・ジャズの最高峰「THE ELF EMSEMBLE」。「ブルーノートと調性」「東京大学のアルバート・アイラー」「M/D」等に於ける圧倒的な理論構築力に よって名を知らしめた濱瀬元彦が、盟友である菊地成孔との共同プロデュースによる20年振りの新作『"The End of Legal Fiction" Live at JZ BRAT』を今年11月にリリース。2010年4月13日渋谷JZ Bratでの演奏を、無編集、無修正でパッケージしたこのアルバムは、ジャコ・パストリアス、オウテカ、スクエア・プッシャー等を経た2010年代の聴覚可能性を切り開く、100%手弾きによる驚異のテクノ・ジャズだ。ライナーノーツには、斎藤環(精神科医/評論家)、濱瀬元彦、菊地成孔の鼎談「音楽家と学者は、対話すべきなのか?」が収録されている。

エアプレーン・レーベル・オフィシャル・サイト:
http://www.airplanelabel.com/cdlists/ap1041.html

Information

■CD
『"The End of Legal Fiction" Live at JZ BRAT』

AP1041
¥2,625

■LIVE
『CD発売記念ライブ』

12/6(月) 東京・EATS and MEETS Cay

※詳細は、上記オフィシャル・サイトをご覧ください。