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mnavi Interview
> Vol.58:TOSHI NAGAI

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僕は頭の中でドラムのフレーズは絶対に歌わない。メロディにアクセントを付けていくようにプレイする

─ NAGAIさんは、いわゆる“歌モノ”の楽曲をプレイする機会が多いと思いますが、「歌いやすいドラム」をプレイするには、何が大切なのでしょうか?

NAGAI:僕は、ボーカリストのブレスのポイントを一番意識しています。先ほどの話と重なる部分もありますが、ドラムを叩く際に、僕は頭の中でドラムのフレーズは絶対に歌わないんです。「ツクツクタン」と考えるのではなく、メロディを歌って、そこにアクセントを付けていくようにプレイするんです。そうすれば、どんなメロディにも対応できるし、フレーズの出だしで少し間を取ってあげることで、ボーカリストがたっぷりと息を吸って歌うことができるようになります。その反対を考えると、ボーカリストが一番嫌がるのは、リズムが狭いドラムですね。息を吸って吐くという身体のリズムで演奏するボーカリストって、せせこましいリズムに合わせるのがすごく難しいんですよ。特にボーカルは、3連符や5連符とか、いろんなリズムを入れないといけないから、バックが「ドン」と「タン」の間にメロディを大きな流れで取ってあげて、なおかつブレスを意識することで、ボーカリストはその“間”のどこにでも複合リズムを入れられるし、どこでもブレスができるようになるわけです。これは、呼吸という意味では管楽器奏者も同じですし、ギター・ソロに対しても同じことなんです。

─ 氷室さんやGLAYなど、いろんなタイプのアーティストをサポートする際、その音楽性に合わせつつ、どのようにドラマーとしての個性を出そうとしているのかと思っていましたが、それ以前に大切なのは「歌に寄り添う」ということなんですね。

NAGAI:だから氷室さんの場合とGLAYとでは、プレイする感覚も、ドラムの役割自体も違います。氷室さんの音楽はビートが基本なので、ドラムの役割はとても重要です。それがGLAYになると、ドラムで歌をサポートする役割になります。もちろん、氷室さんのステージでも歌をサポートしているのですが、やはりビートが出てないとダメですし、氷室さんって、本当にカッコいいビートを作るんですよ。そういった部分を大事にしながら、そこに対してアプローチするのは自分だから、結果として、誰が聴いても「TOSHI NAGAIのドラムだ」って分かってもらえるんだと思っています。自分の個性を出すっていう意識はまったくないけど、でも結局、自分の表現しかできないんですよ。氷室さんの楽曲って、レコーディングでは海外ミュージシャンが演奏していますから、ツアーの際には、そのフレーズを全部コピーして、プレイしますよ。でも、いくらコピーしても、絶対に自分の歌い回しになるわけです。極論を言えば、ドラムを取っ払ってしまって「オレはオレ、あなたはあなた。そうだよね?」っていうくらいの感覚で、僕には僕のビートがあるし、おそらくみんなにも自分のビートがあるはずなんですよ。ただ、それが何なのかと言われると、自分でも分からないし、説明のしようがないですね。

─ とてもよく分かりました。ところでNAGAIさんは、教える側としても積極的にクリニックを行っていますが、その際に、どのような質問をされることが多いですか?

NAGAI:一番多い質問は、「メンバーから、ベースとドラムがズレると言われた」といった内容です。話を聞くと「いつもクリックに合わせて練習してる」って言うんです。じゃあ一回演奏してみてって言うと、一応はみんな合ってるんですよ。でも、まったくつまんない演奏なんです。そこでまず僕が言うことは、クリックでも何でも「合わせようとした段階で必ず遅れる」ということ。ただし、振り子式のメトロノームは別ですけど。

─ それはどういうことですか?

NAGAI:例えば、「(両手を広げて)せーの!」で「パン!」と手を叩くと、誰でもタイミングを合わせられますよね。でも、(再度、両手を広げて、いきなり手を叩いて)これだと、絶対に遅れますよね。クリックや点滅式のメトロノームは後者なので、合わせようとした時点で、もう既に遅れているんです。だから、もしクリックを使って練習するなら、表拍ではなく、裏拍として聴きなさいって言うんです。クリックを「カッカッ」ではなく、「ンカッンカッ」と鳴っていると捉えれば、グルーヴを感じながら、かつアクセント、つまり表拍を合わせられるんです。しかもそこには、合わせようとする基準のポイントがなくなるわけだから、“ズレる”ということ自体も、なくなるんです。

そもそも、メンバー全員が合う必要はまったくないんですよ。4人バンドなら、4人が一定の距離感を保ったままうねっていくからこそグルーヴが生まれるわけで、一直線上にタイミングが合っても、何の面白味もないわけです。4人の“ズレ具合のフォーメーション”があって、GLAYの場合、例えばバラードならTAKUROくんが前に行って、僕が後ろに下がったり、アップ・テンポの曲であれば、僕は前のめりにプレイして、JIROくんが後ろで支えるとか。それは話し合って決めたり、意識してズラすわけじゃなくて、「この曲をやろう」と決めた瞬間に、サッカーのフォーメーションのようにGLAYのフォーメーションができあがるわけです。それが、他の誰にも真似できない、そのバンドのグルーヴなんです。だから、全員が一直線上で、細かくバス・ドラムとベースを1つ1つ、すべて同じ点で合わせていこうなんて考えなくていいんですよ。

─ その感覚はどのようにして身につけていくといいのでしょうか?

NAGAI:メンバーで輪になって、口で自分のフレーズを歌うんですよ。言葉の方がズレたらすぐに分かるから、そうすると、みんなの身体が同じグルーヴで揺れ始めて、口で歌うフレーズが周りと合ってきます。それができたら、楽器持って演奏すれば、もうバッチリですよ(笑)。あと、最近はミクスチャー系の曲で、展開によってビートが大きく変わる構成があるじゃないですか。そういう時も、異なるグルーヴをパーツのように組み合せるのではなく、ポイントとなるグルーヴを1つ大きく持ちながらプレイするんです。例えば、大きなグルーヴを感じて歩きながら、パターンだけを8ビートから16ビートへと変えていくイメージです。そうすれば、グルーヴは統一されているので、ビートの変わり目でズレることもないですし、すごいグルーヴが生み出せるはずですよ。

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Profile

TOSHI NAGAI

1964年、宮崎県都城市出身。幼少の頃からドラムを始め、18歳で上京し、19歳でプロ・デビュー。ちわきまゆみ、CHAGE and ASKAなどさまざまなアーティストをサポートし、1989年から氷室京介のライブ・ツアーに参加する。そして1995年からはGLAYの楽曲制作、レコーディング、ライブ・ツアーをサポートし、メンバーから厚い信頼を得ている。これら多忙なスケジュールの合間を縫って、全国各地でドラム・クリニック/バンド・クリニックを積極的に開催し、若手ドラマーの指導にも力を入れる一方で、近年はジャズ・セッションも行うなど、多岐に渡って活動している。

オフィシャル・サイト:
http://www.toshi-nagai.net/

Information

DVD
TOSHI NAGAI参加作品

GLAY
『HAPPY SWING 15th Anniversary SPECIAL LIVE ~We Love Happy Swing~in MAKUHARI-Complete Edition』 

LSVB-0001/0002 ¥10,000
(GLAYオフィシャル・ストア限定発売)

東日本大震災復興支援チャリティライブ
『KYOSUKE HIMURO GIG at TOKYO DOME
“We Are Down But Never Give Up!!”』 

ALGN-0038 ¥7,800

KYOSUKE HIMURO
『COUNTDOWN LIVE 〜CROSSOVER05-06〜
1st STAGE/2nd STAGE』

TOBF-5640/5643 ¥9,500

LIVE
GLAY HIGHCOMMUNICATIONSTOUR 2011-2012
『RED MOON&SILVER SUN』
(4月以降の日程)

4/1(日) 福島・會津風雅堂
4/3(火) 岩手・盛岡市民文化ホール
4/19(木) 日本武道館
4/21(土) 日本武道館
4/22(日) 日本武道館

※詳細は、上記オフィシャル・サイトをご覧ください。

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