Top
mnavi Interview
> Vol.58:TOSHI NAGAI

mnavi interview Back Number

現代の速いフレーズの中にも、グルーヴの要になるアクセント、図太いビートを出した方がいい

─ 20代を中心とした若い世代のドラマーに話を聞くと、必ずと言っていいほど、リスペクト・ドラマーとしてNAGAIさんのお名前が出てきます。そんなNAGAIさんから見て、今の若い世代のプロ・ドラマーには、どのような印象をお持ちですか?

NAGAI:楽器を鳴らせていないと感じることが多いです。手足はものすごく速く動かせるんですよ。でも、楽器に触っているだけ、って感じがする。ベースがズンズン弾いている上で、ドラムがギターようにカッティングしているといった印象で、ボトムのビートが出せている人は少ないかもしれません。ソロは素晴らしいんですよ。でも、「もう1人、ドラムを入れたら?」って言いたくなるほど、「バンド・サウンドの骨はどこにあるの?」と思うことがありますね。

─ そのような傾向は、意識の持ち方から生まれてくるものでしょうか? それともトレーニング方法の問題なのでしょうか?

NAGAI:いや、僕が今の時代に生まれて、同じようなジャンルの音楽をやっていたら、僕自身もそうなりかねないと思います。ドラムのフレーズ自体が昔とは違って、スリップノットが出てきてからは、すごく速いですよね。そういった現代の速いフレーズを叩くには、どうしてもカッティング的に、ドラムに触るようなプレイの仕方になってしまうんです。だけど僕は、そういう音楽の中にも、グルーヴの要になるアクセント、図太いビートを出した方がいいと思うんですよ。ただ、若いドラマーたちだって、速いフレーズが叩けるように研究した結果、そういうカッティングのようなプレイ・スタイルになっているだけで、きっと知らないだけなんですよ。

─ もし、そういうドラマーがNAGAIさんのクリニックに来たら、どのように教えるのでしょうか?

NAGAI:まず、いつものように叩いてもらいます。本当に、ものすごく速く手が動くんですよ。そうしたら、BPM=50くらいのどっしりしたリズムで、16ビートを叩かせます。するとね、絶対に叩けないんですよ。本当は速く叩くよりも簡単なはずなのに、彼らは細かくリズムを取ってないと無理なんです。そこから、身体の動かし方や力の抜き方、リズムは細かく取り過ぎずに大きく取るということを教えると、ちゃんと叩けるようになって、「じゃあ、最初の速いフレーズを叩いてみて」っていうと、他の生徒さんが聴いていて「うわっ!」って声を出すくらい、ビートがまったく変わるんですよ。最初は、ただ「スタタタ」って刻んでいただけだったのが、聴いていて心地よいビートになるんです。それくらい、ほんのちょっとしたことで変わるんですよ。そういうことを若いドラマーに伝えたくて、クリニックを行っているんです。

─ 本当に勉強になるたくさんのお話、ありがとうございます。それでは最後に、本番でベストを尽くすために、どのようなことを意識してステージに臨んでいるのか、その点について教えてください。

NAGAI:リラックスすること。それだけです。僕は緊張はしませんけど、ツアーの初日とか、周囲の緊張感が伝染してくることがあるんですよ(笑)。そういう時は、家のソファでスティックをトコトコと動かしている様子を思い浮かべます。自宅のソファで緊張なんてしないじゃないですか。そういった、思い描くことでリラックスできる何かを用意しておくことは1つの方法でしょうね。あとは、演奏していて「あれ?」と思った時に、「間違うかも」と思わないで「できる!」って思うこと。何年経験を重ねても、新曲は次々に出来るし、忘れているような久しぶりの曲を1~2回のリハだけで本番ということもありますから、「あれ? 次、どうだっけ?」って不安になる時もあります。でもそこで「できる!」って思うと、自然と手足が動くんですよ。よく「緊張して頭が真っ白になる」って言いますよね。でも、冷静になれば全部分かっているじゃないですか。30分前のリハで間違わずに演奏していたのも、同じ自分なんですから。それが“「あれ?」と思った自分”に捉われるから、自分を失ってしまうのであって、“30分前の自分”に任せちゃうって考えるんですよ。これって、会社のプレゼンとかでも同じですよ。何度も練習して上手くできていたのに、本番で誰かに質問されて「あれ?」っと思ったことがきっかけで、言いたいことを全部忘れてしまう。その時も「あれ?」と思った自分に捉われずに、きちんと練習していた自分に任せちゃう。特にドラムなんて、リラックスして力が抜けないと、簡単なフレーズも叩けなくなりますから、どれだけ激しいプレイをしていても、「今、何かやったっけ?」というくらいリラックスするんです。

─ 肉体的なリラックスはもちろん、精神的なリラックスも大切なんですね。

NAGAI:ほら、針の穴に糸を通す時だって、糸を持っているだけなら手は震えないのに、針の穴が近づいただけで震えてきますよね。でもこれ、よく考えたら変じゃないですか。糸を持つ手は、まったく何に変化もしていないはずですよね。ドラムだって同じなんです。練習によって身体を鍛えるという方法もありますが、そういうリラックスできるマインドを持つということが一番大切だと思います。とにかく音楽は楽しまないとダメだし、楽しんで楽器をやれば、絶対に上手くなるんですよ。僕はよく「Have to(しなければならない)」は絶対ダメ、「Want to(したい)」でやりなさいって、クリニックで言うんです。

これは僕の勝手な論理ですけど、音楽という、人を楽しませることをやっているのに、僕らが苦労する必要はないんですよ。「Have to」の苦労って、苦しいじゃないですか。でも「Want to」なら、いくらでも努力ができるし、人を楽しませるためなら、喜んで練習するはずです。苦労が伝わってくるライブなんて、見ていてもまったく楽しくないですよ。だからみなさんに言いたいのは、楽しんでやりましょうということ。それともうひとつ、もしダブル・ストロークで左手がどうしても速く動かないっていう人がいたら、「左手が遅い」と考えずに、「今は遅いけど絶対に速くなる。だから練習している。」と思うこと。自分で「遅い」って決めつけて、制限しちゃうから、速くならないんですよ。「難しい」とか「できない」って思わないで、「今はできないけど、きっとできるようになる」ってイメージすることは大切です。僕だって昔、ジャズはできないと思っていました。でも今は、どんどんジャズ・セッションもやっています。自分の制限をすべて取っ払って臨めば、音楽や楽器が、本当に楽しくなりますから。

  • Check
Prev 1 2 3

Profile

TOSHI NAGAI

1964年、宮崎県都城市出身。幼少の頃からドラムを始め、18歳で上京し、19歳でプロ・デビュー。ちわきまゆみ、CHAGE and ASKAなどさまざまなアーティストをサポートし、1989年から氷室京介のライブ・ツアーに参加する。そして1995年からはGLAYの楽曲制作、レコーディング、ライブ・ツアーをサポートし、メンバーから厚い信頼を得ている。これら多忙なスケジュールの合間を縫って、全国各地でドラム・クリニック/バンド・クリニックを積極的に開催し、若手ドラマーの指導にも力を入れる一方で、近年はジャズ・セッションも行うなど、多岐に渡って活動している。

オフィシャル・サイト:
http://www.toshi-nagai.net/

Information

DVD
TOSHI NAGAI参加作品

GLAY
『HAPPY SWING 15th Anniversary SPECIAL LIVE ~We Love Happy Swing~in MAKUHARI-Complete Edition』 

LSVB-0001/0002 ¥10,000
(GLAYオフィシャル・ストア限定発売)

東日本大震災復興支援チャリティライブ
『KYOSUKE HIMURO GIG at TOKYO DOME
“We Are Down But Never Give Up!!”』 

ALGN-0038 ¥7,800

KYOSUKE HIMURO
『COUNTDOWN LIVE 〜CROSSOVER05-06〜
1st STAGE/2nd STAGE』

TOBF-5640/5643 ¥9,500

LIVE
GLAY HIGHCOMMUNICATIONSTOUR 2011-2012
『RED MOON&SILVER SUN』
(4月以降の日程)

4/1(日) 福島・會津風雅堂
4/3(火) 岩手・盛岡市民文化ホール
4/19(木) 日本武道館
4/21(土) 日本武道館
4/22(日) 日本武道館

※詳細は、上記オフィシャル・サイトをご覧ください。

ページの先頭へ