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SYNTHESIZER V-Synth GT 第2回 V-Synth GT サウンド・メイク術 その2 ~楽曲の土台を支えるベースを作ろう~ 齋藤久師

皆さん、こんにちは! 齋藤久師です。今月は、あらゆる楽曲の中でもなくてはならない重要な存在である"ベース・パッチ"を作ってみたいと思います。

ベースとひと言で言っても、アコースティック・ベースやエレキ・ベース、そしてシンセ・ベースなど、実に様々な音色が存在します。しかし、いずれの場合でも、ベースは楽曲の土台となる低音部分をしっかりと支えるパートです。しかも、リズム・パートとのコンビネーションによってグルーヴ感を生み出したり、メロディアスなフレーズによってダイナミックな楽曲の流れを作り出したりと、とても重要な役割を担っているのです。特に近年のエレクトリック・ミュージックやダンス・ミュージックにおいては、ドラムと並んでベースは主役パートと言っても過言ではありません。さらに、ベースの音色が少し変わるだけで曲のイメージが大きく変わってしまうほど、楽曲全体に強い影響力を持っているパートなのです。

それでは早速V-Synth GTを使って、クールで芯のあるベース・サウンドを作ってみましょう!

V-Synth GT

▲画像1:ローランド・シンセサイザーのトップ・モデル、V-Synth GT

 
・ワンポイント

今回紹介するベースのサンプル音は、パソコンの内蔵スピーカーでは聴き取りにくいことがあります。その場合は、ヘッドホンや外部モニター・スピーカーを利用してベースの低音感をチェックして下さい。

 

ベースは音の「芯」が命

ベースは、その名の通り楽曲の中でもっとも低い帯域の周波数をカバーしているパートです。そのため、極論を言えば、重低音感だけが欲しいのであれば、まったく何も加工していないシンプルなサイン波を使うというのもいいでしょう。実際に、V-Synth GTに搭載されているサイン波は、アナログ・モデリングによるとてもきれいな波形なので、どのキーを押さえても、実に安定した低音を鳴らしてくれます。

では、V-Synth GTに搭載されている素のままのサイン波によるベースと、リズム・ループのアンサンブルを聴いてみましょう。

OSC1の波形選択画面

▲画像2:Analog OSC(アナログ・オシレーター)で、無加工のサイン波「sin wave」をベースとして使用した状態。このように、たった1つのサイン波を使うだけでも、リズム・ループとのコンビネーションによって、簡単にグルーヴィーなトラックを作り出すことができる。

では次に、もっとキャラクターが明確で、ダンス・ミュージックによく使われるような典型的なシンセ・ベースの音色を作ってみたいと思います。

ベースは和音楽器とは違い、音にしっかりとした「芯」がなければいけません。そのため、いくらV-Synth GTがたくさんのオシレーターを使えると言っても、あまり贅沢にオシレーターを使い過ぎると倍音構成が複雑になって芯がなくなり、土台としての役割が果たせなくなってしまいます。

その一方で、1つのオシレーターだけでシンセ・ベース作るというのも、あまり面白くありません。実際に、最近のあらゆる音楽で使われている定番のシンセ・ベースは、複数のオシレーターを使い、適度なデチューン効果やフィルターのレゾナンスを効かせたサウンドによって作られています。

そこで今回のベース・サウンドの制作では、これらのポイントをうまく絞り込みながら進めていこうと思います。

ベース作りのポイントは波形選び!

シンセ・ベースの音色作りで大切なのは、オシレーター・セクションでの波形のチョイスです。今回は、OSC1では、ローランドの名機D-50のアナログ波形をモデリングした「LA-SQUARE」をチョイスしました。そして味付けとして、低音をより強調するために、[Sub OSC]で1オクターブ下の音程をプラスします。ここで、段々とサブ・オシレーターのレベルを上げていき、低音が強調されていく様子を聴いてみましょう。

Sub OSCの設定画面

▲画像3:[Sub OSC]を利用すれば、1オクターブ下の音をプラスするだけでなく、2オクターブ下の音をプラスしたり、同じレンジの音を重ねて音圧を強化することもできる。その際に、デチューン効果を加えることも可能なので、好みに合ったベースの音作りが行える。

では次に、OSC2の波形を選びます。OSC1でチョイスした「LA-SQUARE」より、若干明るめの波形「SQUARE」を選び、Coarse Tuneで2オクターブ下げた音を先ほどのOSC1とミックスしてみます。このように、OSC1とOSC2の基本波形を変えることで、デチューンをしなくても分厚いベース・サウンドを作れることが分かりますね。

OSC2のピッチ設定画面

▲画像4:OSC2の設定画面。Coarse Tune(オシレーター・コース・チューン)で、オシレーターの音の高さを半音単位で±4オクターブの範囲で調整できる。-24に設定した場合は、ピッチは2オクターブ下がることになる。

 
・ワンポイント

ベース・サウンドにとって音の立ち上がりはとても重要で、グルーヴを支える大切なポイントです。ところが、従来のアナログ・シンセの波形を使ってベース・サウンドを作る場合、必ず直面する問題として「アタックの弱さ」が挙げられます。実際に、アナログ・シンセを使用してシンセ・ベースをレコーディングする際には、プロ用のとても高価なアウト・ボード(コンプレッサーなど)をいくつも使用し、アタック感を強める工夫がされているのです。しかし、V-Synth GTならば、そういった手間のかかる作業もワン・アクションで行え、簡単にアタックを補強することが可能です。それが、ここで紹介するアナログ・オシレーター・インパクト(Impact)というパラメーターです。

では、[Impact]の値を徐々に上げていき、アタック感が強まっていく様子を聴いてみましょう。

Impactの設定画面

▲画像5:音の出だし部分で聴こえるコンプで圧縮したような「プチッ」という音が、次第に大きくなっていくのが分かるだろう。この音こそが、楽曲の中にミックスされた時に、シンセ・ベースの存在感とグルーヴを大きく左右する重要なファクターとなるのだ。

 
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