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SYNTHESIZER V-Synth GT 第3回 V-Synth GT サウンド・メイク術 その3 ~シンセの本領発揮!パッド・サウンドを徹底チェック!~ 齋藤久師

みなさんこんにちは! 齋藤久師です。今月は、シンセサイザーの代表的なサウンドである"パッド"を取り上げたいと思います。

持続音であるパッドは、譜面にした時に全音符や2分音符などの白い"おたまじゃくし"で表されることが多いため、別名「白玉(しろたま)」とも呼ばれています。ポリフォニック・シンセサイザーが登場する以前は、プリセット式キーボードの「ストリングス・アンサンブル」などといった名前の音色によるパッド・サウンドがよく使われました。それが70年代後半から80年代になると、よりシンセサイザーらしい、いわゆる"シンセ・パッド"と呼ばれるサウンドが大流行しました。その中でも、ローランドが世界に放ったアナログ・シンセの最高峰マシンJUPITER-8や、アマチュアにも大人気だった初期JUNOシリーズが作り出すパッド・サウンドは、世界中のキーボーディストたちの絶大な支持を得て、ジャンルを超えた様々な楽曲で、その音色が聴かれました。

そんなローランドの代表的なシンセ・パッド波形を元にして作られたパッチが、このV-Synth GTにもたくさん用意されています。そこで今回は、私、齋藤久師オススメのプリセット・パッチを紹介しながら、その音色の構造を解説してみよう思います。

V-Synth GT

▲画像1:ローランド・シンセサイザーのトップ・モデル、V-Synth GT

その前に!カテゴリー・サーチ機能を使いこなそう!

「Pad Strings」のパッチを探すのには、V-Synth GTのカテゴリー・サーチ機能が便利です。これを使えば、膨大な内蔵パッチの中から使いたいパッチをすぐに呼び出すことができます。しかも、たくさんのパッチ・リストの中から、サウンドを聴きながら欲しいパッチをチョイスできるので、是非とも利用してみましょう。

●ステップ1:[サーチ]アイコンをタッチ

[サーチ]アイコン画面

▲画像2:画面左上にある虫眼鏡の形をした[サーチ]アイコンにタッチする。

●ステップ2:[カテゴリー・サーチ・エリア]をタッチ

[カテゴリー・サーチ・エリア]画面

▲画像3:パッチ・リスト下の[カテゴリー・サーチ・エリア]にタッチし、カテゴリー・サーチ・パレットを開く。

●ステップ3:カテゴリー・サーチ・パレットで「Pad Strings」を選択

カテゴリー・サーチ・パレット画面

▲画像4:ステップ2で指定したカテゴリーのパッチだけが表示されるので、使いたいサウンドを音を聴きながらチョイスしていく。

 
・ワンポイント

自分で作ったオリジナルのパッチにも、カテゴリーを自由に付けることができます。

 

キーワード

トーンとパッチ:
V-Synth GTの構成はデュアル・コア(2台分のV-Synth内蔵に相当)となっており、ひとつのコア(1台分のV-Synth)から作る音色を「トーン(TONE)」と呼ぶ。トーンを2つ重ねて作った音色を「パッチ(Patch )」と呼ぶ。

ローランド・パッドの代名詞『JP-8 Softpad』

それでは、まず最初に「これぞローランドの代表的なシンセ・パッド!」と言うべき、『061:JP-8 Softpad』のサウンドを聴いてみましょう。

「JP-8 Softpad」画面

▲画像5:プリセット・パッチ『061:JP-8 Softpad』

シングル・トーンなのに、とてもふくよかで、哀愁を帯びたダークな響きが特徴的なシンセ・パッドですね。どんな楽曲にもマッチしそうな、優しい存在感のあるサウンドです。

では、ストラクチャーを開いて、それぞれのOSCがどのようになっているのか、覗いてみましょう。すると、それぞれアナログ・モデリング波形の「SAW」及び「SUPER-SAW」が選ばれていることが分かります。しかも、OSC2の「SUPER-SAW」のSSデチューンによって、アナログ・シンセ的な音のぶ厚さを作り出しているのが特徴ですね。


「061:JP-8 Softpad」OSC1設定画面

▲画像6:「061:JP-8 Softpad」のOSC1設定画面。名機JUPITER-8のパッド・サウンドを彷彿とさせるアナログ・モデリング波形ののこぎり波が選択されている。

「061:JP-8 Softpad」OSC2設定画面

▲画像7:「061:JP-8 Softpad」のOSC2設定画面。ピッチのずれ具合を設定するSSでデチューンの値を大きくする(ツマミを右に回す)ほど、ピッチのずれが大きくなり、音に広がりが出る。

また、初期のJUNOシリーズで評価の高かったエフェクト「コーラス」は、シンセ・パッドの音作りには欠かせない存在です。V-Synth GTのエフェクト・セクションでは、大幅に音作りの自由度を増したコーラスが用意されており、独特なうねり感を加えることによって、よりシンセらしいパッド・サウンドに仕上げられているのです。


エフェクト設定画面

▲画像8:エフェクトの設定画面。コーラス効果を加えることによって、パッド・サウンドがさらに際立つ。

なお、上のサンプル・サウンドは、録音する際にパネルにあるカットオフのスライダーをリアルタイムに手で動かしながら演奏してみました。こうすることによって、さらに大きくうねるような音色変化を作り出すことができます。

キーワード

SSデチューン:
アナログ・モデリング波形の「SUPER-SAW」選択時に設定できるパラメーター。「SUPER-SAW」は7本のSAW波形で構成されており、そのピッチをずらすことで音に広がりを加えられる。

幻想的なパッド・サウンド『181:eVangelic』

さて、次の紹介する『181:eVangelic』も、アナログ・モデリング波形の「HQ-SAW」を2つ重ねたシングル・トーンによるプリセット・パッチです。

「181:eVangelic」画面

▲画像9:プリセット・パッチ『181:eVangelic』

この音色の特徴は、フィルター・エンベロープの設定によって、ゆっくりとフィルターの開き具合が変化している点です。そもそもパッド・サウンドは、ストリングスのように音の出だし部分のアタックが遅めでリリースが長めという、フワリと漂うような響きの印象がありますが、アタックだけでなく、フィルターが開く動作を遅くすることで、さらに幻想的な雰囲気を簡単に出すことができるのです。


カットオフ設定画面

▲画像10:COSMタイプのダイナミックTVF(フィルター)セクションのカットオフ設定画面。TVFのカットオフの値が、音が鳴り始めると次第に大きくなり、音が消えるにしたがい、だんだん小さくなるようにフィルター・エンベロープが設定されている。

また、最終段のエフェクトでは、深めのリバーブがかけられており、さらにみずみずしく、壮大な雰囲気を作り出しています。ここも、この『181:eVangelic』サウンドの隠れたポイントです。


エフェクト画面

▲画像11:エフェクトの設定画面。ホール・タイプのリバーブが選択されており、リバーブ・タイムはローが8秒、ハイが2秒とかなり長めだ。

 
・ワンポイント

フィルターのカットオフの値を大きくする(ツマミを右に回す)ことを「フィルターを開く」、値を小さくする(ツマミを左に回す)ことを「フィルターを閉じる」と言います。

 

キーワード

フィルター・エンベロープ:
TVF(フィルター)のカットオフ値の時間変化を設定するパラメーター。

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