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SYNTHESIZER V-Synth GT 第7回:V-Synth GT サウンド・メイク術 その6 ~シンセならではの

皆さん、こんにちは! 齋藤久師です。
先日、JSPA(日本シンセサイザープログラマー協会)が主催する毎年恒例の「シンセフェスタ」が、今年は大阪で開催され、私も参加してきました。会場には、ローランドをはじめとする多くの協賛楽器メーカーのブースが出展されており、最新のシンセサイザーを熱心に試奏する多くのシンセ・ファンの姿が見られました。また、昨年から始まった「シンセサイザー最強パフォーマンス・コンテスト」では、一段とレベルアップした出場者たちによる熱いバトルが繰り広げられ、見応え(聴き応え!?)充分でした。そんな中、最終日には、松武秀樹氏、氏家克典氏、そして私の3人で、V-Synth GTやSH-201などをふんだんに使用したステージ・パフォーマンスを行い、大盛況の内に幕を下ろすことができました。来場者の年齢層はとても幅広く、シンセサイザーが万人に愛される楽器になったということを心から喜んだ2日間となりました。

シンセフェスタでの筆者

▲写真1:シンセフェスタのステージで、V-Synth GTとSH-201を演奏する筆者

さて、そんなシンセサイザーですが、皆さんは『シンセサイザー』と言うと、どのようなサウンドを想像しますか? 今月は、そのシンセサイザーがもっとも得意とする、そしてシンセサイザーだからこそ作り出せる"SE(Sound Effect)"をV-Synth GTのユニークな機能をフル活用しながら追求してみましょう。

"SE"こそ、シンセならではのサウンドだ!

現代のシンセサイザーは、80年代後期より高度なサンプリング技術が導入されたことにより「これがシンセサイザーの音だ!」と明確に定義できないほど、実に自由度の高い多彩な音色作りができるようになりました。つまり、機能の進化によって音色作りの制限が取り払われ、電子音はもとより、自然音やアコースティック楽器音までもシンセサイザーで演奏することができるようになったわけです。その一方で、かつて初期のアナログ・シンセサイザーが得意としていた音色は、今では「自然音として、この世に存在しえない音」、そして「電子楽器でしか出しえない音」として、より一層注目を集めています。その代表的なサウンドが、「SE」と呼ばれる音響効果(効果音)です。

ホワイト・ノイズを利用して作った「波」や「風」をイメージしたサウンド。LFOを使用した「機関車」のような効果音。フィルターを発振させることで作り出されるSF映画のレーザー銃のサウンド。そして、フィルターやモジュレーション機能を駆使して作るシンセ・パーカッションの音色。シンセサイザーが作り出すサウンドには、エレクトリック・ミュージックや映像作品の効果音として欠かすことのできない、魅力的な音色がたくさんあります。

オシレーターのタイプを自由にチョイスでき、バリフレーズ技術を用いてサンプル素材を縦横無尽に変化させられるV-Synth GTは、このようなSE作りをもっとも得意とする、最先端のシンセサイザーなのです。

シンセの基本! スウィープ・ノイズサウンドを作ろう!

まず手始めに、ハウス・ミュージックなどの小節の頭でよく使われる、ノイズを使ったシンバル的な『プシュ~~~ン!』というSEを作ってみました。

sweep noise

▲画像3:サンプル音『sweep noise(スウィープ・ノイズ)』

音作りの原理は、いたって簡単。ノイズをスウィープさせるだけです。そこでまず、OSCセクションでノイズの波形を選択します。次にフィルターですが、これはアナログ・タイプの方がサウンドにマッチするので、COSMセクションにて[TVF]を選びます。そして、オケの中でも音抜けをよくするために、[BPF(バンドパス・フィルター)]で特定の周波数帯を強調させ、サウンドを目立たせるようにします。

OSC設定画面

▲画像4:アナログ波形をモデリングした[Analog OSC]の中から、[NOISE]を選択。このようなノイズは、SE作りで大活躍する波形だ。

COSMタイプ設定画面

▲画像5:BPF(バンドパス・フィルター)のカットオフとレゾナンスは、実際にサウンドを聴きながら2つのツマミを動かし、音抜けのよいポイントを探す。

音色をスウィープさせ、なおかつ、自動的にカットオフ周波数を減衰させるために、カットオフ・セクションのエンベロープを画像6のようなカーブに設定してみました。

そして、発音から少し遅延して現れるLFOによるフィルターの揺らぎは、TVF内のLFOセクションで設定します(画像8)。ここの[Delay Time(ディレイ・タイム)]は、鍵盤を押してからLFOがかかるまでの時間を調節するパラメーターです。

カットオフ・エンベロープ設定画面

▲画像6:カットオフの動きをアタックで遅らせることで、音の出だしに曲線を描いたような特徴的なスウィープ感が加わる。

レゾナンス・エンベロープ設定画面

▲画像7:レゾナンスは音の出だしと同時に最大値となり、そこから一旦下がった上で、音の消え際(リリース)でさらになだらかに変化する。

TVF LFO設定画面

▲画像8:ディレイ・タイムを短くすると、鍵盤を押した直後にLFOが効き始める。逆に長く設定すると、鍵盤を押してしばらくしてから、次第にLFOが効き出すという効果を加えられる。

マルチ・ステップ・モジュレーターでノイズ・パーカッションを作る!

次は、ノイズを使ったSEの発展型サウンドを作ってみましょう。

テクノやハウス・ミュージックを聴くと、ドラムやパーカッションの音色以外にも、ノイズを使ったリズム構成音が入っていることに気付くでしょう。これらのサウンドは、後方で楽曲全体のグルーヴを支える縁の下の力持ち的存在から、リフのように楽曲に強いインパクトを加えるフレーズまで、様々な使い方がされます。その中でも、もっとも特徴的な使い方は、2拍目や4拍目で繰り返されるスピーディなノイズ・パーカッション的なサウンドでしょう。これは、ダンス・ミュージックをクリエイトする多くのアーティストが好んで使う定番サウンドと言えます。

このようなSEを作るのに、V-Synth GTの"オイシイ"機能の1つである「マルチ・ステップ・モジュレーター」を利用してみましょう。まずは、今回作ったサウンドを聴いてみてください。

step noise

▲画像9:サンプル音『step noise(ステップ・ノイズ)』

●これは凄いぞ! マルチ・ステップ・モジュレーター!

このサウンドの秘密を明かす前に、「マルチ・ステップ・モジュレーター」について説明しましょう。

マルチ・ステップ・モジュレーターは、アナログ・シーケンサーと同様に、16ステップごとに音色をコントロールできる機能です。しかし、この機能が凄いのは、一般的なステップ・シーケンサーのようにオシレーターのピッチを変えられるだけでなく、V-Synth GTのほとんど全てのパラメーターをコントロールできるという点です。例えば、フィルターのカットオフの値や、エンベロープのADSR(アタック/ディケイ/サステイン/リリース)の好きなポイントの値、LFO値などなど、あらゆるパラメーターを変化させて、多彩なアイデアをサウンドで具現化することができるというわけです。

マルチ・ステップ・モジュレーター設定画面

▲画像10:16ステップのシーケンサー的に利用できるマルチ・ステップ・モジュレーターの設定画面。棒グラフがコントロールするパラメーター値の変化を表す。1ステップを何分音符と解釈させるか、4/8/付点8/16/付点16/32分音符の中から選択可能。16分音符に設定すれば、1小節分の16分音符のシーケンスを作ることができる。

コントロールする各パラメーターの値は、音符的にキッチリとした階段状のステップで設定する以外に、[SMOOTH]ボタンにタッチすることで、グラフィカル的に滑らかな曲線で描くことも可能です。さらに、このマルチ・ステップ・モジュレーターは、1音につき4つのシーケンスを独立に使用できる(つまり、4つのパラメーターをそれぞれ異なるパターンで変化させられる)というのも嬉しいところですね。

マルチ・ステップ・モジュレーター設定画面

▲画像11:[SMOOTH]ボタンをオンにした場合。ディスプレイを指でなぞったそのままのカーブで割り当てたパタメーターを変化させられる。なお、画面はトラックBのシーケンス・パターンを設定している状態を表している。

●摩訶不思議な音色変化もお任せ!

マルチ・ステップ・モジュレーターの凄さが分かったところで、サンプル音『ステップ・ノイズ』のタネ明かしをしましょう。COSM1に通常のBPFを用意しておき、マルチ・ステップ・モジュレーターのトラックAでBPFのカットオフ、トラックBでパンニングを変化させてみたわけです。

さらに、COSM2のセクションで、ローランドの名機TB-303の特徴的なフィルターのテイストをモデリングした[TB FILTER]を選択しておき、フレーズの流れに沿ってフィルターのフリケンシーを開いたり閉じたりするようなシーケンスを、同じくマルチ・ステップ・モジュレーターで加えてみました。このうねるようなTB-303特有のフィルター効果と[SMOOTH]ボタンで、流れるようなパンニングがユニークなSEが完成しました。お聴きください。

COSMタイプ設定画面

▲画像12:COSM2セクションのCOSMタイプで[TB FILTER]をセレクト。V-Synth GTのマルチ・ステップ・モジュレーターであれば、このように複数のパラメーターを同時にコントロールできる。

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