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SYNTHESIZER V-Synth GT 第8回:V-Synth GT サウンド・メイク術 その7 ~2008年型

皆さん、こんにちは! 齋藤久師です。今年もよろしくお願い申し上げます。
先日、東京藝術大学で開催された「日本電子音楽の創成期~藝大音響研究室の活動」というシンポジウムに行ってきました。その音響研究室には、有名なMoogやARP、そしてマニアックなところでは、ブックラなどの巨大なモジュラー・システムなどの歴史的なシンセサイザーが陳列されていました。そんな中、ローランドが70年代に開発した日本最大級のシステム・シンセサイザーSystem-700、そしてその小型タイプのSystem-100Mが、名機シーケンサーMC-8とセットで展示されており、今なお元気良く、魅力的な電子音を奏でていました。

System-700

▲写真1:キング・オブ・ローランド・シンセ、System-700(1月6日、シンポジウム『日本電子音楽の創成期~藝大音響研究室の活動~』より)

System-100M & MC-8

▲写真2:80年代初期に多くのシンセ・ファンが憧れたSystem-100M & MC-8(1月6日、シンポジウム『日本電子音楽の創成期~藝大音響研究室の活動~』より)

このような、初期のアナログ・シンセサイザーやミュージック・コンクレートにおおいに刺激を受けて、帰宅するとすぐに、この講座の原稿を書き始めた次第です。

ミュージック・コンクレートとは、1940年代後半に生まれた非常に実験的なサウンドを取り入れた前衛的な音楽で、日本語では『具体音楽』などと訳されます。シンセサイザーなどの電子楽器がまだまだ一般的ではなかった当時、テープ・レコーダーなどの録音機材を用いて、録音済のテープをツギハギすることによって、実にユニークな音響空間を演出していました。多くのクリエーターは、とても手間のかかる複雑な作業を行って、それまでに誰も聴いたことのないような新しい音色を探求していたのです。このようなミュージック・コンクレートと同様の音作りは、現在の最新シンセサイザーであるV-Synth GTのサンプリング機能を活用することで実現可能です。しかも、より短時間で、よりユニークな音作りが行えるのです。そこで今月は、V-Synth GTのサンプリング機能をフィーチャーして、ミュージック・コンクレートの現代版と言える実験的な音作りにチャレンジしてみましょう。

V-Synth GTのサンプリング機能に注目!

V-Synth GTは豊富な外部入力端子を持っていて、本体で直接サンプリングが行えるほか、外部PCとUSB接続することにより、オーディオ・ファイルをそのまま本体に取り込むことが可能です。

Sample Top画面

▲画像4:パネルのMODEエリアにある[SAMPLE]ボタンを押すと、ディスプレイにサンプル・トップ(Sample Top)画面が表示され、サンプリング可能な状態になります。V-Synth GTでは、マイクを使ったモノラル入力(MIC)、アナログ入力(INPUT L, R)、デジタル入力(OPTICAL IN、またはCOAXIAL IN)、USB入力(USB)によるサンプリングに対応しています。

今回は、野外のいろんな音をV-Synth GTで加工してみようと思い、手軽に高音質な録音が楽しめるエディロールのWAVE/MP3レコーダーR-09を持って、『ぶらりサンプリングの旅』に出発しました。まあ、旅と言っても、ただ近所を散歩がてらぶらりと歩いて、面白そうな音を録音してきただけのことなんですけどね(笑)。

自動販売機の音がV-Synth GTで大変身!

まずは喉が渇いたので、自動販売機でジュースを購入しました。その際、自動販売機にお金を入れるところから、ジュースとおつりが出てくるところまでをR-09で録音してみました。この、皆さん聴き慣れた音(笑)を聴いてみてください。

この素材をR-09からPCに転送し、USB経由でV-Synth GTに取り込みます。それでは、いろいろと加工してみましょう。

録音したサンプル素材をOSCセクションで読み込みます。そして、「Vari」、「Time」、「Pitch」といったパラメーターをいろいろと動かしてみて、面白い音色になるポイントを探してみました。その音がコレです。この時点で、すでに自動販売機の音には聴こえませんね!

このサンプルに、さらにCOSMセクションでSBF(サイド・バンド・フィルター)をかけてみました。これによって、実に独特な質感を作り出せました。完成した音を聴いてみてください。ここからさらに、COSMセクションを2段重ねにして、通常のTVFを使ってフィルタリングを重ねたりしても、かなり面白い効果が出せるでしょう。

自動車のノイズで音楽を奏でよう!

さてさて、次に潜入したのは地下駐車場です(笑)。自動車のタイヤのホイールをアルミパイプで軽く叩いて、その音をR-09で録音しました。もちろん私の車ですので、ご安心くださいね。他人の車は叩いてはいけませんよ(笑)。このサンプルのアンビエンスは、地下駐車場の響きをそのまま活かしました。

ホイール音のサンプリング風景

▲写真5:タイヤのホイール部分の音をサンプリング。『サンプリング』というと難しく感じるかもしれませんが、R-09などのようなデジタル・レコーダーを使って録音すれば、身の周りのいろんな音をV-Synth GTの音源として活用することができるんです!

ラジエーターグリル音サンプリング風景

▲写真6:タイヤのホイールのほかにも、いろんな部分の音をサンプリングしてみると、もっと面白い音色が作れますよ。もちろん、車を傷つけないように要注意!(笑)

このホイールの音を先ほどと同じようにV-Synth GTに取り込み、今度はフィードバックを強めに設定したフランジャーをかけてみました。ホイールのように音程感のないノイズ的な音の羅列でも、今回のようにフランジャーやフェイザーなどのモジュレーション系のエフェクトを上手に使うことによって、ピッチ変化のようなユニークな効果を作り出せるのです。

フランジャーの設定

▲画像7:エフェクトにはフランジャーをセレクト。フィードバックをほぼ最大に近い値に設定してみました。

さて、それではそろそろサンプリングの旅も終わらせて、スタジオに戻りましょう(笑)。

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