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SYNTHESIZER V-Synth GT 第11回:Fantom-G徹底分析 その2 ~スムーズかつナチュラルなパッチ・リメイン~ 齋藤久師

皆さんこんにちは! 齋藤久師です。皆さんは、もう店頭でFantom-Gに触れてみましたか? もしかして「もう購入した!」という方も多いのではないでしょうか。今月からは、初めてFantom-Gに触れる方にも、すでに手に入れたという方にも役立つようなお話をバッチリとしていきたいと思います!

キーボーディストは苦労がいっぱい

昔からキーボーディストのブースというものは、何台ものシンセサイザーが山のように積み上げられ、その運搬や複雑な配線などのセッティングには、大変な苦労を余儀なくされてきました。確かに、壮観な見た目の演出感やインパクトなど、「なんだか凄そうだ!」というイメージは強いと思いますが、現代的な視点からすると、ややスマートさにかける印象を受けてしまうという点も否めません。そもそも、なぜキーボーディストは複数のキーボードをステージ上に並べる必要があったのでしょうか? 大きな理由は2つあります。

まず、それぞれのシンセサイザーの「個性」を使い分けたいから、ということが挙げられます。例えば、アナログ・シンセ、デジタル・シンセ、または伴奏用のポリフォニック・シンセか、リード用のモノフォニック・シンセなど、それぞれのモデルの特徴的な音色を楽曲によって弾き分けなければならないために、何台ものシンセサイザーを用意する必要がありました。

そして、もう1つの大きな理由は、「音切れ」という現象です。1台のシンセサイザーしか用意していない場合、当然ながら、楽曲中に何種類かの音色をチェンジして使うことになります。ところが、これまでのシンセでは、パッチ(音色)を切り替えた瞬間に、前の音色の響きが突然遮断され、次の音にいきなりシフトしてしまう、もしくは、一瞬ですが無音状態になってしまうという、音楽的にはとても不自然な響きになってしまっていたのです。そのために、わざわざ全く同じモデルを2台用意したり、リバーブやディレイなどの空間系エフェクターを使うことで、音切れが目立たないように余韻を作り出してごまかしたりといったような「音楽的ではない作業」に、多大なエネルギーを費やしてきたのです。

Fantom-Gがもたらす多大な恩恵

このように、キーボーディストにとって永遠の悩みのタネであった複数のシンセを使うことによるサウンドの弾き分け、そしてパッチ切り替え時の「音切れ」。この2つの大きな問題を、Fantom-Gが完全に解消してくれたと言っていいでしょう。

Fantom-Gは強力な音源エンジンを搭載しており、アナログ音からデジタル音、さらにリアルなアコースティック楽器まで、あらゆる音色が網羅されています。これらの音色を元にして作り込まれた多彩なパッチが贅沢に用意されているので、他のシンセと組み合わせて使う必要がなく、Fantom-Gだけで、鳴らしたいサウンドのすべてを演奏できるようになったのです。また、パッチ・リメイン(演奏中のパッチ・チェンジ)の際の「音切れ」については、ワークステーション・シンセとしては世界で初めて「前のパッチの余韻を残しつつ、自然に次のパッチへ移行できる」という音楽的なプレイを可能にしてくれたのです。これにより、たった1台だけでも、音切れのないリアルタイム演奏が可能になった、というわけです。

このことは、キーボーディストにとっては革命的な出来事であり、Fantom-Gは、「キーボードの形をした音楽スタジオ」と言ってしまってもいいほどのものだと思います。そんなモンスター・シンセを自宅だけでなくスタジオへ、そしてライブへと気軽に持ち出して使うことができる自由度は、キーボーディストのみならず、多くのミュージシャンに計り知れない恩恵を授けてくれることでしょう。

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