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第27回:デジタル時代のミュージック・コンクレート  その1 R-09HRでフィールド・レコーディング~音素材を集めよう

皆さん、こんにちは! 齋藤久師です。今月から数回に渡り、エディロールR-09HRを使ってフィールド・レコーディングを行い、それらの音素材を組み合わせて音楽的な作品を完成させる過程を紹介していきたいと思います。

今月は、レコーディングの歴史を振り返りながら、実際にフィールド・レコーディングにトライしてみましょう。

R-09HR

▲写真1:R-09HR

テープ・レコーダーの時代~ミュージック・コンクレートの誕生

現代のように、サンプリングやデジタル録音が当たり前に行われるようになるはるか昔、音楽を録音するためには磁気テープが使われ、いわゆる"テープ・レコーダー"によってレコーディングが行われていました。そのテープ・レコーダーも、モノラル・レコーダーから歴史をスタートさせ、ステレオから16トラック、32トラック、そして48トラックへとマルチトラック化が進み、80年代の半ばまで、ほぼすべての音楽制作現場で利用されてきました。

さらに現代音楽の分野では、テープ・レコーダーを単なる"録音機器"としてだけでなく、「音楽をコンポーズするための楽器」としても積極的な活用法が考えらました。その結果、"ミュージック・コンクレート"という音楽ジャンルが生まれました。これは、あらゆる音素材を録音したテープをスライスし、それらをパッチ・ワークのようにつなぎ合わせることで1本のテープ(すなわち、ひとつの音楽)を作り上げるという手法です。さらには、テープの逆回転や再生速度を変えるなどして音色を変化させるという試みも行われ、これらの手法によってこの世に存在しないユニークな音色を作り出すといったサウンド・コラージュが展開されました。このような実験的な音楽作りは、偶然性によって生まれる新しい音色や音楽の面白さはあったものの、その一方で、テープ編集によってイメージ通りに音色を変化させたり、音程やリズムを作り出すことがとても難しく、作品の制作には多くの苦労が伴っていたのです。

デジタル・レコーディングの時代へ

60年代後半にシンセサイザーが登場し、電子音を使った音作りが一般的に広まってからも、テープ・コラージュによりたくさんの作品が生まれました。また、テープ・レコーダーの技術を使った楽器「メロトロン」も登場しましたが、80年代に入り、PCM音源やデジタル録音技術が実用化されると、テープ・コラージュ的な音響合成技法もサンプリング・マシンに取って代わりました。

現在では、メモリーの大容量化(すなわち、長時間/高音質録音の実現)と、サンプリング素材の音程やリズムを思いのままにコントロールできる新技術によって、録音した音素材を、より音楽的に、より自由自在に用いることができるようになったのです。

このように、手軽にいい音でデジタル録音できる時代だからこそ、もう一度見つめ直してみたいのが、フィールド・レコーディングやテープ・コラージュ的な音作りの面白さです。R-09HRで、テープ・レコーダーが登場した当時と同じように"録音"の楽しさを再発見しつつ、それらの素材を使って新しい音楽を作ってみましょう。

▲写真2:デジタル時代の"生録ブーム"の火付け役となったR-09HR。ミュージシャン必須アイテムです。

R-09HRで"音"を"シンセ音源"にする!?

PCM音源を搭載したシンセサイザーは、あらかじめメーカーが用意した波形(つまりサンプリング素材)を元にして、音色を作っていきます。その波形というのは、デジタル録音された音が元となっているわけですから、R-09HRを使ってフィールド・レコーディングすれば、日常的に耳にしているさまざまな音を、シンセサイザーの波形として使用することが可能となるのです。

R-09HRに内蔵された高品位なステレオ・マイクを使えば、ピアノやギターなどのアコースティック楽器の響きや人間の声などを、プロ・クオリティのオーディオ・データとして録音できます。ちなみに、Fantom-Gを使ってトラック制作を行った『第23回:Fantom-G ボーカル録音にR-09HRを活用しよう』でも、実際にR-09HRを使ってボーカル録音を行ってみました。こちらの回もぜひ参考にしてみてください。

このように、R-09HRはスタジオ・レコーディングでも使えますが、今回は携帯性のよさを活かして、スタジオの外で、もっとユニークな"楽器以外の音ネタ"を録音してみたいと思います。

コラム:"R-09HR MEETS クラムボン"スペシャル・ページをチェック!

ポップかつ実験的な楽曲と高い演奏力で人気のバンド「クラムボン」。R-09HRで、彼らのフリー・セッションを収録した音が聴ける特設サイト『R-09HR MEETS クラムボン スペシャル・ページ』をご存じでしょうか? 3人がR-09HRを使用した感想を語っているインタビュー記事も掲載されていますので、ぜひともチェックしてみてください!

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Profile

齋藤久師(さいとう ひさし)

齋藤久師(さいとう ひさし)

91年ビクターエンターテインメントより日本初のテクノユニット『ガルトデップ』でデビュー。ユニット休止後、さまざまなクラブ系ユニットに参加し海外でのディストリビュートも積極的に行う。1996年よりステージ衣装から機材などすべてを完璧に模したYMOの完全コピーバンド『Yセツ王』として活動。リアルタイムにYMOを体験した熱心な固定ファンのみならず、YMOのライブを見たことのない若いファンをも獲得している。チップチューンをフィーチャーしたユニット『8bit project』のメンバーとしても2枚のアルバムをリリース。そのほか雑誌などでのレビュー執筆と、多方面で活躍中。