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第30回:デジタル時代のミュージック・コンクレート その4 R-09HR&SP-404SXで作るループ・ミュージック

みなさん、こんにちは! 齋藤久師です。エディロールR-09HRでフィールド・レコーディングした音源を元に楽曲を制作しようという『デジタル時代のミュージック・コンクレート』連載の第4回目。前回はSP-404SXの強力なエフェクト群をご紹介しましたが、今回は本題に戻り、R-09HRでフィールド・レコーディングしてきたサンプル素材をつなぎ合わせて、楽曲を完成させてみたいと思います。

このシリーズ連載の初回では、あらゆるサンプル素材をR-09HRで録音してみましたが、やはりパンチのある音が面白いリズム効果を生みやすいので、今回はその中から「ドア」の音に絞り込んで使用してみたいと思います。

R-09HR(左)とSP-404SX(右)

▲写真1:R-09HR(左)とSP-404SX(右)

ループとは!?

いきなり余談ですが、サンプリング・マシンが登場して以降、「ループ」という言葉が音楽制作の現場で頻繁に使われるようになり、最近では、一般の音楽にも広く浸透するようになりました。この「ループ」とは、読んで字のごとく「繰り返し行われる」という意味であり、音楽の場では「一定のフレーズを繰り返し再生する」という意味合いで使われます。

かつての音楽は、その多くが"起承転結"といった展開が明確な楽曲構成が一般的でしたが、サンプリング・マシンの登場により、リズムをループ再生させることが大きなブームになりました。ダンス・ミュージックの代表格であるハウスやテクノが、そのよい例ですね。一見(一聴?)すると、同じフレーズを延々と繰り返してループさせることで、音楽が単調に感じてしまい、飽きてしまいそうに感じるかと思います。しかし実は、この「繰り返し」の中にこそループの魅力(魔力)が潜んでいるのです。同じリズムが延々とループされることで、脳から快感物質が分泌されるという説がありますが、いわゆるマラソンを長時間走った際に現れる"ランナーズ・ハイ"に近い現象がループによって起こり、音楽的な心地よさをもたらすのです。

サンプル素材からループを作ろう

ループ・ミュージックの元祖と言えば、やはりプログレッシブ・ロック・バンド「タンジェリン・ドリーム」や「クラフトワーク」などのドイツ勢ミュージシャンの存在なくしては語れないでしょう。彼らは、当時の最先端だったアナログ・シーケンサーとアナログ・シンセサイザーを組み合わせ、延々と続くアルペジオのようなパターンをループ演奏させたのです。アナログ・シンセならではの、ゆっくりとした音色の変化をリアルタイムで操作していました。記憶させられる音数は、せいぜい16~32個程度で、しかもモノフォニック。たったそれだけの音符を繰り返すという、アナログ・シーケンサーならではの制限があったからこそ生まれた名フレーズだと言ってもいいでしょう。

そんなループ再生のメソッドに基づいて、R-09HRで録音したサンプル素材を組み合わせてループ「ループ1」を作ってみました。聴いてください。

▲ループ1

あらゆる"ドア"の音を4小節の中に1拍ずつ展開させてみました。合計で16個のドアの音が何度も何度も繰り返されていくうちに、ドアの音なのにいつのまにかパーカッシブなリズム音に聴こえてくることでしょう。録音した場所や時間帯の違いによって、周りで鳴っている暗騒音(バックグラウンド・ノイズ)などの条件が微妙に異なるため、いわゆる「空気感」の違いまでもがサンプリングされています。そういった違和感の繰り返しがループされることによって、リズムがより心地よく聴こえてくるのです。

個々のサンプル素材は、SP-404SX内蔵のトランケート機能を活用することで、不要な箇所をカットし、1つの音が1拍で終わるように調整しています。また[GATE]ボタンを押すことで、パッドを押している間だけ発音させるようにしても、タイトで面白い効果が生み出せることでしょう。

ループのバリエーション違いを作ろう

次にもう1つ、16種類のサンプル素材を使って、同じように4小節のパターン「ループ2」を組み立ててみました。

▲ループ2

これは通常のドア以外に、壊れかけた箪笥の引き出し、そして水の流れる音やガスコンロの着火音、さらに著者の「う~ん!」という唸り声なども混ぜて、先ほどのループ1の音と変化をつけています。このように、さまざまな音素材を連続して順番に再生するだけでも、とてもユニークなリズムが構成されていくことが分かりますね。これらのサンプル素材も、やはり録音した場所や日時は当然バラバラです。レコーダー&サンプラーとは、その一瞬の時間を切り取って再構成することのできる、タイムマシンのような楽器なのです。

▲写真3:レコーダーもひとつの"楽器"として活用できる時代になりました。

R-09HRがアップデート!

先日、最新システム・プログラム(Ver.2.0)が公開され、R-09HRに「セルフタイマー録音」、「曲の分割・結合」、「メトロノーム」、「チューナー」の4機能が追加されました。すでにR-09HRをお持ちの方も、ローランドWebサイトのサポート・ページからアップデート用システム・ファイルをダウンロードすると、新機能を利用できるようになります。

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Profile

齋藤久師(さいとう ひさし)

齋藤久師(さいとう ひさし)

91年ビクターエンターテインメントより日本初のテクノユニット『ガルトデップ』でデビュー。ユニット休止後、さまざまなクラブ系ユニットに参加し海外でのディストリビュートも積極的に行う。1996年よりステージ衣装から機材などすべてを完璧に模したYMOの完全コピーバンド『Yセツ王』として活動。リアルタイムにYMOを体験した熱心な固定ファンのみならず、YMOのライブを見たことのない若いファンをも獲得している。チップチューンをフィーチャーしたユニット『8bit project』のメンバーとしても2枚のアルバムをリリース。そのほか雑誌などでのレビュー執筆と、多方面で活躍中。