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第31回:デジタル時代のミュージック・コンクレート その5(最終回) エディロールP-10のV-LINK機能で"映像"を"演奏"する!

みなさん、こんにちは! 齋藤久師です。つい先日、私も所属しているJSPA(日本シンセサイザー・プログラマー協会)主催の「シンセサイザーフェスタ2009」が、大阪・WTCホールで開催されました。2日間のイベントでしたが、多くのシンセサイザー・ファンや、これから音楽を作ろうと考えている若い層のお客様にたくさんご来場いただけて、とても嬉しく思うと同時に、電子楽器の未来を感じることができました。イベントでは、各楽器メーカーによる展示やインディーズ・レーベルの新鋭アーティストの出展、そしてシンセサイザー・プログラマーを中心としたセミナーが行われ、大盛況の中、幕を閉じることができました。

私も2つのセミナーを担当させていただきました。その1つとして「V-LINKの概要と可能性」というテーマにお話させていただいたのですが、そこではビジュアル・サンプラーのエディロールP-10を使ったデモンストレーションを行いました。その際に、前回の講座で完成させた楽曲「doors」に映像を付けた作品を披露しました。今月は、『デジタル時代のミュージック・コンクレート』連載の最終回として、この映像作品制作についてお話をしましょう。

P-10

▲写真1:P-10

映像作品『doors/dada』完成!

まずは、完成したムービーをご覧ください。

『doors/dada』
出演:lena/スティーブ平井
撮影/編集:齋藤久師

Flash Playerが最新でないか、インストールされていないようです。ローランドサイトでは、一部Flashを使用したコンテンツがあります。こちらのリンクから最新のFlashプラグインをインストールしてご覧下さい。

この作品は、脚本なしのゲリラ撮影で短時間に素材を集め、さらに映像編集も1時間と、大変スピーディに完成させることができました。実は私自身、映像制作に着手するのは初めての体験でしたが、音楽制作と同様、時間を自由に切り貼りする感覚でとても楽しく作業ができました。

しかしながら、映像の編集作業を進めていくうちに、ちょっとしたやりにくさや違和感を覚える場面に遭遇しました。その違和感というのは、音楽を作る際と、映像を作る際の「時間軸」の違いからくるものでした。

音楽を主体に映像を作る

私のような"シンセサイザー・プログラマー"という音楽家は、音楽を制作する際に基準とする時間軸は、「小節」や「音符」、そしてそれらを司る「テンポ(BPM)」が基本となります。

ところが、多くの映像編集ソフトやデバイスは、何時間/何分/何秒/何フレームなどの「時間表示」が基本です。これは、多くの映像編集機器が「映像主体」に作られているからにほかなりません。このことは、一見すると当たり前のように感じますが、今回、私が試みたのは「音楽」を作った後に「映像」を作るという、いわゆる"ミュージック・クリップ制作"の手法だったのです。

そこで困ったのが、音楽に映像をシンクロさせてシーンを細かく変えたり、リズミカルな場面展開を音符や小節に沿って編集するという作業でした。それを行うためには、シーケンサーでの打ち込みで慣れ親しんでいる「音符」を、一度「フレーム数」や「秒数」に置き換えて、時間軸を考えなくてはいけないのです。

もちろん、最初に音を貼り付けて感覚的に映像を細かくスライスしたり、計算機を使って「16分音符は何フレームに値するのか?」といったことを割り出すことで、きっちりとリズムにシンクロした映像編集を行うことは可能です。しかし、この方法で行うと、とても膨大な時間と労力を要します。そこで目をつけたのが「V-LINK」です。

V-LINKとは?

V-LINKとは、MIDIを使って「楽器」で「映像」をコントロールすることのできるシステムです。現在、ローランド製品のほとんどに搭載されている優れた機能で、今後は他メーカーも発表の準備を行っているという最も新しいMIDI規格と言ってもいいでしょう。この「V-LINK」を利用すれば、日頃から慣れ親しんでいるDAWソフトなどのシーケンサーを使って、映像のコントロールが可能になるのです。

▲写真2:多くのローランド製品に搭載されているV-LINK機能。音楽演奏に映像表現をシンクロさせ、まったく新しいリアルタイム・パフォーマンスが実現できます。

例えば、今回制作した『doors/dada』の冒頭に出てくるような、1拍ごとにシーンがリズミカルに変わっていく場面などは、サンプリング・マシンで音ネタを"ポン出し"するかのようにパッドを叩いたり、シーケンサーで1拍ごとに必要なパッドのノート・ナンバーを打ち込むだけで、簡単に映像を切り替えていくことができるのです。

実際にP-10は、従来のサンプリング・マシンと同じように、映像と音をパッドに割り当てることができるため、本体のパッドを叩くことで、リアルタイムに映像と音を演奏させられます。もちろん、V-LINK機能を使って、外部シーケンサーで演奏させることも可能です。つまり、音楽を作る感覚で、いくらでも細かくリズミカルな映像編集が可能となるのです。

▲写真3:P-10のパッド部分。動画は赤、静止画は青で点灯し、パッドを押せば映像が再生される。まさにサンプリング・マシン感覚!

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Profile

齋藤久師(さいとう ひさし)

齋藤久師(さいとう ひさし)

91年ビクターエンターテインメントより日本初のテクノユニット『ガルトデップ』でデビュー。ユニット休止後、さまざまなクラブ系ユニットに参加し海外でのディストリビュートも積極的に行う。1996年よりステージ衣装から機材などすべてを完璧に模したYMOの完全コピーバンド『Yセツ王』として活動。リアルタイムにYMOを体験した熱心な固定ファンのみならず、YMOのライブを見たことのない若いファンをも獲得している。チップチューンをフィーチャーしたユニット『8bit project』のメンバーとしても2枚のアルバムをリリース。そのほか雑誌などでのレビュー執筆と、多方面で活躍中。