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第36回:GAIA連載その2:OSCセクションを徹底解剖!

みなさんこんにちは! 齋藤久師です。先月、私の参加している「8bit project」という、あらゆるジャンルの音楽を、ファミコンのようなチップ・チューン・アレンジで演奏するユニットで、昨年に続き2度目のヨーロッパ・ツアーに行ってまいりました。

ヨーロッパでは、近年、日本の漫画("MANGA"で通じるんです!)やアニメ、そして音楽など、幅広い日本文化に興味を示す若者が急増し、「OTAKU」がひとつの大きな文化としてヨーロッパ各国で絶大な人気を博しております。我々も、新凱旋門の最上階に設営されたビデオ・ゲーム・ミュージアムを皮切りに、フランス各地で5公演を行ってきました。

▲写真1:8bit projectのヨーロッパ・ツアーの様子

パリっ子との交流で分かったのは、彼らは、純粋な「日本」というブランドを求めているということです。つまり、こちらがフランス語や英語で話したりするよりも、彼らは「日本語」が聴きたいのです。多くの若者たちが、音楽にしてもファッションにしても、「日本独自のオリジナリティに魅了されている」と熱く語っていたのが印象的でした。

さて、前置きはこのくらいにしておいて、早速、新世代シンセサイザー「GAIA」の魅力を探る連載第2弾を始めたいと思います。今回は、シンセサイザーでの音作りにおける、すべての源と言ってもいい「OSC(オシレーター)」セクションを解説しましょう。

▲写真2:GAIA SH-01

音作りの基本"OSC"とは?

OSC(オシレーター)とは、思い描いた音を作るための大元となる波形を選ぶセクションであり、音作りの際に最初に操作する部分です。

例えば、アコースティック・ギターの場合を考えてみましょう。弦をピッキングすると弦が滑らかな波、すなわち「正弦波(サイン波)」のように振動し、それが空気を揺らして音が発生します。実際には、ボディの共鳴など、さまざまな要素が加わって複雑な波となり、それがギターの音色となりますが、音の大元は、この弦の振動です。アナログ・モデリング・シンセサイザーの場合は、その大元の"振動"を電子的な音として発生させるわけで、その役割を担っているのが、オシレーターというわけです。この波形、――つまり"波の形"――は、オシロスコープを使うことによって見ることができます。滑らかに山と谷を繰り返すきれいな曲線が正弦波です。

楽器の種類によって、音色の元となる波形は多種多様です。例えば、正弦波によく似た優しい音色がする「三角波」や、ギザギザな形をした「のこぎり波」、四角いブロックのような形をした「矩形波(くけいは:パルス波)」などが代表的です。この矩形波も、ブロック状のパルスの幅を変化させることで、にじんだような音色変化を加えられます。これを「非対称矩形波(パルス・ワイズ)」と呼びます。

上記のような、同じ形が周期的に表れる波形は音程を持ちますが、周期性がなく、音程を持たない「ノイズ」という波形も存在します。もっともよく使われるのは「ホワイト・ノイズ」というものです。深夜にテレビ放送が終了した後の、いわゆる"砂嵐"状態の時に聴かれるような"ザーッ"といったノイズです。このようなノイズを「一体どんな音色に使うのか?」と思うかもしれませんが、後で説明する「フィルター」や「エンベロープ」などのセクションで加工することで、スネア・ドラムのような打楽器的な音色が作れたり、モジュレーションを加えることでSE的な音色を生み出すことができるのです。

▲写真3:GAIAのOSCセクション。

波形を選ぶ

GAIAのOSCセクションにある[WAVE]ボタン、つまり波形をセレクトする部分では、「のこぎり波」、「矩形波」、「非対称矩形波」、「三角波」、「正弦波」、「ノイズ波」、「スーパー・ソー(のこぎり波が7個同時に鳴っているような音色)」といった、7種類の代表的な電子波形が用意されています。ところが、これだけではないのです。[VARIATION]ボタンを押すことで、各波形のバリエーションが3種類選べるので、合計で21波形を自由に呼び出すことが可能なのです。

各波形の音色(つまり、これがシンセサイザー・サウンドの原石!)を聴いて覚えることで、自分が求めるサウンドと波形の関係を、次第に直感的にチョイスできるようになってくると思います。そのような方向性とはまったく反対に、選んだ波形のサウンド的な特徴からインスパイアを受けて、新しい音色が生まれてくることもあるでしょう。

それでは、GAIAに搭載された基本波形のサウンドを聴いてみましょう。それぞれ「ド・レ・ミ・ファ...」と1オクターブを演奏しています。

●のこぎり形

シンセ・リードからシンセ・ベース、シンセ・ブラスと、とても多くのシンセ・サウンドに使われる万能な波形です。

●矩形波形

ツルっとした質感が特徴的。電子音楽では、特に「ピコピコ」といったシーケンス音などによく使われます。

●非対称矩形波

ワイズ(矩形の幅)を変えれば、さまざまなキャラクターのパルス・サウンドを作り出すことができます。

●三角波

太くて柔らかいサウンド。アナログ・シンセならではの、優しい音色が特徴的です。この波形を元にした音色にポルタメントをかけたシンセ・リードのサウンドは、R&Bなどの定番音色です。

●正弦波

とても滑らかな波形であり、超重低音なベースなど、ボトムを支える音色として使われることが多いです。

●ノイズ波

この音程感のないノイズ成分から、さまざまなSE(効果音)やシンセ・パーカッションが作り出せます。こういった音色作りは、シンセサイザーならではの楽しみですね。

●スーパー・ソー

のこぎり波(SAW波)を7つ重ねて作り出したローランド独自のシンセ波形。バーチャル・アナログ・シンセサイザーJP-8000ではじめて搭載され、トランス・テクノのシンセ・リフになくてはならない音色として、あまりにも有名なサウンドです。分厚くてスペーシーな音色は、アナログ・シンセならではです。

ここまでに紹介したように、ほとんどのシンセサイザーでは、まず、このOSCセクションで波形を選んで音作りを行います。GAIAは「アナログ・モデリング・シンセサイザー」ですので、搭載されたOSC波形は、どれも「電子的」なものばかり。つまり、アナログ・シンセサイザー的な音色を作るために厳選された波形が豊富に取り揃えられているのです。

参考までに、このOSCセクションで「アコースティック・ピアノ」や「バイオリン」といった、生楽器をPCM録音したサンプル波形が用意されているシンセサイザーがあります。これらは「PCM音源(PCMシンセサイザー)」と呼ばれ、Fantom-GシリーズJUNOシリーズなどが、その代表的モデルとなります。

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Profile

齋藤久師(さいとう ひさし)

齋藤久師(さいとう ひさし)

91年ビクターエンターテインメントより日本初のテクノユニット『ガルトデップ』でデビュー。ユニット休止後、さまざまなクラブ系ユニットに参加し海外でのディストリビュートも積極的に行う。1996年よりステージ衣装から機材などすべてを完璧に模したYMOの完全コピーバンド『Yセツ王』として活動。リアルタイムにYMOを体験した熱心な固定ファンのみならず、YMOのライブを見たことのない若いファンをも獲得している。チップチューンをフィーチャーしたユニット『8bit project』のメンバーとしても2枚のアルバムをリリース。そのほか雑誌などでのレビュー執筆と、多方面で活躍中。