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第42回:VP-7連載その1:ボーカル・プロセッサー単体機の魅力を徹底解剖!

みなさんこんにちは! 齋藤久師です。前号までのGAIA特集ですが、読者のみなさまから多くの反響をいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。現代の音楽制作現場では、ついついソフトウェア・シンセサイザーだけを使ってパソコンの中だけで作業を完結させ、しかも、プリセット音色を選んで演奏するだけで終わってしまいがちです。そのような状況の中で、感覚的なパネル操作と新しい音源エンジンによって、オリジナリティに富んだ音色を生み出せるように考え抜かれてデザインされたGAIAは、シンセサイザーの原点を見つめ直し、基本を学ぶという視点でも最適なハードウェア・シンセでした。「ツマミを回して音色を変える」という、シンセサイザーの楽しさの基本を体感できる、数少ない"本物"のシンセサイザーの1つと言えるでしょう。

さて、そんなGAIA特集から引き続き、今回からは4回に渡ってボーカル・プロセッサー『VP-7』を特集してみようと思います。

▲写真1:VP-7

音楽シーンの歴史を変えてきたローランド『VP』の称号

「VP」と言えば、30代以上のシンセ・ファンの方なら、きっとローランドの名機「VP-330 Vocoder Plus」を思い浮かべる方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。あるいは、サンプリング・ミュージック・シーンに大きな衝撃を与えた「VP-9000 VariPhrase Processor」を思い出す方もいるかもしれません。

今回取り上げるVP-7の「VP」とは、「ボーカル・プロセッサー(Vocal Processor)」の略。そうです、みなさんの大好きな「声」を操ることに特化したボーカル専用マシンなのです。

洋楽/邦楽を問わず、最近の音楽シーンでは、ボコーダーによる"ロボット・ボイス"や、ピッチ補正ソフトを極端に使い、エフェクティブに加工したボーカルをよく耳にすると思います。こういった声にかける特殊なエフェクト・サウンドは、実は今から40年以上も前から使われていました。

それは、マイクから入力した音声(人間の声など)を、鍵盤で指定した通りのピッチで発音させるという発想によって、声で和音を"演奏"したり、1人の声から複数の音を出し、合唱のように奏でられるといった、とても画期的な発明だったのです。それがボコーダーの原点であり、ローランドVP-330で一躍注目を集めるサウンドとなったのです。

しかしながら、その音質(声質)は「リアル」とはかけ離れた、いわゆる「機械的」な音色であり、言葉の明瞭度も低く、「特殊な音」として認知されたということも、確かな事実です。ですから、ここぞというポイントで、飛び道具的に特殊な効果を狙って使われることがほとんどで、なかなかポピュラー・ミュージックに浸透していくことがありませんでした。そうして、とてもユニークなサウンドであるにも関わらず、80年代後半には、その存在すらも、音楽シーンからはほとんど忘れかけられていったのです。

ボーカル・サウンドに革命を起こしたボーカル・デザイナー・テクノロジー

ところが2000年代に入ると、この特殊なボコーダー・サウンドが、再び注目を集めることとなります。ダフト・パンクやマドンナなど、海外のビッグネーム・アーティストたちが、こぞって機械的なボコーダー・サウンドを使用し始めたのです。

まさにその頃、ローランドはボコーダーの進化系と言うべき「Vocal Designer」の技術開発を進めていました。クラシカルなボコーダー・サウンドはもちろんのこと、それと対極を行く、超リアルなクワイヤー・サウンドを実現させるという最先端技術でした。その「Vocal Designer」は、V-Synth/VariOS用オプション・カードVC-2を皮切りに、みなさんご存知のVP-550、そしてVP-770へと進化していきました。

▲画像2:ボーカル&アンサンブル・キーボード、VP-770。

今回紹介するVP-7は、これらのモデルからボーカル・プロセッサー部分を抜き出した、究極の単体マシンです。懐かしのボコーダー・サウンドから、最新の超リアルなヒューマン・ボイス・プロセッッシング・サウンドまでのすべてを搭載しているのです。

遂に登場した単体モデル!

まず、VP-7のパネル面をご覧ください。

▲画像3:コンパクトに高機能が凝縮されたVP-7。

厳選された4つのツマミと9個のボタン、そしてLEDランプのみで構成されたシンプルなデザインで、しかも800gという片手で持てる超コンパクトなボディ。ここに、ボーカル・プロセッサーのすべての魅力がぎっしりと詰まっているのです。

それでは、次のページからは、本体の細かい部分をチェックしていきましょう。

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Profile

齋藤久師(さいとう ひさし)

齋藤久師(さいとう ひさし)

91年ビクターエンターテインメントより日本初のテクノユニット『ガルトデップ』でデビュー。ユニット休止後、さまざまなクラブ系ユニットに参加し海外でのディストリビュートも積極的に行う。1996年よりステージ衣装から機材などすべてを完璧に模したYMOの完全コピーバンド『Yセツ王』として活動。リアルタイムにYMOを体験した熱心な固定ファンのみならず、YMOのライブを見たことのない若いファンをも獲得している。チップチューンをフィーチャーしたユニット『8bit project』のメンバーとしても2枚のアルバムをリリース。そのほか雑誌などでのレビュー執筆と、多方面で活躍中。