【コラム】SuperNATURALシンセサイザー・トーンのモジュール解析6~ARPEGGIO編~
今回のコラムは、これまでのSuperNATURALシンセサイザー・トーンのモジュール解析とは少し方向性を変えて、JUPITER-80のアルペジオ機能を掘り下げてみたいと思います。
ローランドがシンセサイザーの創生期から力を入れてきたアルペジオ機能は、80年代前半から現在に至るまで数多くの楽曲で使われ、実に印象的なフレーズを聴かせてくれました。この機能は、一体どのようなものなのでしょうか?
そもそも「アルペジオ」とは、和音を分散させる奏法のことです。ギターを例に挙げると、左手でコードを押さえた状態で、右手で弦を一本ずつ順番に弾いていくような奏法のことです。このプレイは、多くの人が耳にしたことがあるでしょう。鍵盤楽器であるシンセサイザーに搭載されているアルペジオ機能は、この一連のアルペジオ奏法を自動的に行えるものです。
具体的に説明しましょう。JUPITER-80のレジストレーション・コモン/コントロール(Registration Common/Control)画面を開き、アルペジオの設定として「Motif(コードの構成音の鳴る順番)」を【UP】としてみます。そして、鍵盤で「ド、ミ、ソ」を押さえてみましょう。すると、「ド→ミ→ソ→ド→ミ→ソ…」というように、下のノートから上に向かって、順番に演奏されるようなアルペジオ・フレーズが奏で始められます。
▲画像5:[SHIFT]ボタンを押しながらARPEGGIO[LOWER ON/OFF]ボタン、またはARPEGGIO[UPPER ON/OFF]ボタンを押すと、レジストレーション・コモン/コントロール画面が表示されます。
次に「Motif」を【DOWN】にしてみましょう。今度は先ほどとは逆に、「ソ→ミ→ド→ソ→ミ→ド…」と、上から下にノートが流れていくことが分かりますね。このように、「Motif」というパラ―メーターによって、アルペジオの動くパターンを決定することができるのです。
▲画像6:「Motif」では【UP/DOWN/UP&DOWN/RANDOM/NOTE ORDER/GLISSANDO/CHORD/AUTO1/AUTO2/PHRASE】の10種類が選択可能です。
【UP】や【DOWN】の他にも、さまざまな「Motif」が用意されていますが、シンセサイザーのアルペジオ機能ならではのものと言えば、やはり【RANDOM】でしょう。
これは、押さえた和音の構成音を、文字通りにランダムに発音させる機能です。スケールはそのままですが、演奏者が思いもよらないような順番でアルペジオが進むため、とてもフレッシュな気持ちでプレイできますね。DURAN DURANの名曲「RIO」では、ローランド・アナログ・シンセサイザーの名機JUPITER-8のランダムなアルペジオ・フレーズを聴くことができますが、このJUPITER-80の【RANDOM】も、かなりそのニュアンスに近いと思います。
では、JUPITER-80のランダム・アルペジオを聴いてみましょう。
JUPITER-80のアルペジオ機能は、さらなる進化を遂げています。ベーシックな【UP】や【DOWN】などのアルペジオ・パターンにとどまらず、【PHRASE】にして「Style」をプリセットの中から指定すると、指一本で、そのキーのピッチを基準にしたさまざまなフレーズを演奏することができるのです。
その際、たくさんのプリセット・フレーズを利用するだけでなく、SMF(MIDIファイル)をインポートすることで、オリジナルのフレーズをアルペジオ機能で演奏させることも可能です。
▲画像7:「Style」では、アルペジオの基本的な演奏スタイルを設定します。128種類のスタイルがプリセットされており、さらにオリジナルのスタイルを128種類まで保存することが可能です。
さらに、アクセントやシャッフルといったパラメーターを駆使することで、よりアグレッシブなアルペジオ・フレーズが生み出せます。もちろん、設定したBPMに追従するだけでなく、バンドの生演奏に合わせて【TEMPO】ボタンを押すことで、リアルタイムにアルペジオのテンポを変えられるのです。
このように、JUPITER-80のアルペジオは、ライブ・アンサンブルを強力にサポートしてくれる機能なのです。
第59回:JUPITER-80連載その11:JUPITER-80のプリセット・ライブ・セットで楽曲制作~後編
第58回:JUPITER-80連載その10:JUPITER-80のプリセット・ライブ・セットで楽曲制作~前編
第57回:JUPITER-80連載その9:MIDIでの活用法を徹底解剖
第56回:JUPITER-80連載その8:新機能「トーン・ブレンダー」を徹底解剖&SuperNATURALシンセサイザー・トーン・コラム「ARPEGGIO」編
第55回:JUPITER-80連載その7:4パート構成のレジストレーション機能を徹底解剖&SuperNATURALシンセサイザー・トーン・コラム「PORTAMENT&UNISON」編
第54回:JUPITER-80連載その5:インテリジェンスな機能を徹底解剖&SuperNATURALシンセサイザー・トーン・コラム「LFO」編
第53回:JUPITER-80連載その4:最高峰のコンボ・オルガン・サウンドを徹底解剖&SuperNATURALシンセサイザー・トーン・コラム「AMP」編
第52回:レジストレーションを徹底解剖3&SuperNATURALシンセサイザー・トーン・コラム「FILTER」編
第51回:JUPITER-80連載その3:レジストレーションを徹底解剖その2&SuperNATURALシンセサイザー・トーン・コラム「OSC」後編
第50回:JUPITER-80連載その2:レジストレーションを徹底解剖&コラム・スタート!

齋藤久師(さいとう ひさし)
91年ビクターエンターテインメントより日本初のテクノユニット“ガルトデップ”でデビュー。ユニット休止後、さまざまなクラブ系ユニットに参加し海外でのディストリビュートも積極的に行う。1996年より、ステージ衣装から機材などすべてを完璧に模したYMOの完全コピーバンド“Yセツ王”として活動。その後、松武秀樹率いる“Logic System”への参加や、チップ・チューンをフィーチャーしたユニット“8bit project”のメンバーとしても2枚のアルバムをリリース。また2010年には著書「DTMテクニック99(リットー・ミュージック)」を出版した。2011年には自身のユニット「pulselize」のリリースに伴い、neuron recordsを立ち上げ。また、代官山UNITサルーンにおいて毎月行われる、シンセを肴に呑む会「SynthBAR」をプロデュース中。
Hisashi Saito Official Website:
http://www.neuronrecords.com/







