ずっと好きだった音が、歪んだギター・サウンドだったんです
─ 6月にリリースされたミニ・アルバム『海鳴りライダー』は、とても勢いのあるギター・ロックに仕上がっていますが、どのようなコンセプトで制作したのですか?
扇愛奈(以下、O):最初に、これだけはブレないようにしようと意識したのが、"自分の音楽の芯をしっかり出す"という点です。ファースト・アルバム(『ニッポンの150cm』)の時は、早く自分の濃い部分を皆さんに聴いて欲しくて、いろんな方向性の曲を収録したんです。そのため、私の濃い部分は出せたんですが、ちょっとまとまり感が薄くなってしまって。そこで今回は、"これが扇のロックだ!"という太い芯を貫こうと、強く意識して作りました。
─ その自分の音楽の芯とは、具体的にはどのようなものと考えているのですか?
O:自分でも改めて考えてみたんですが、それはやっぱりライブ感だなと思いました。自分が音楽をやっていて、生きていて一番よかったと思える瞬間が、ライブなんです。ですから今回のミニ・アルバムには、これまで何回もライブで歌ってきた曲はもちろん、新しく作った曲でも、お客さんの顔や、その人達に向かって歌っている自分の姿が想像できる楽曲を選んで盛り込みました。1曲目の「ココロジュース」は、1年ほど前から演奏しているライブの定番曲で、ギターの杉本恭一さんと作った曲なんです。飛びきりキャッチーでクレージーなロックに仕上がりました。一番古い曲ですと、2曲目に収録されている「真夏に夜の華」は、私が高校1年生の頃に作った曲なんです。
─ その頃からギターは弾いていたのですか?
O:昔からピアノはやっていましたが、ギターは高校1年生の時に、アンプとギターがセットになった通販の初心者キットを買って、それから始めました。
─ そもそもギターを始めたきっかけは?

O:私はそれまで音楽を聴いていて、とても好きな音があったんです。でも、それが何の音なのか、何の楽器なのか、ずっと分からなくて。そうしたら、その好きだった音が歪んだギターだということがわかったんです。それで、ようやくギターという楽器に巡り合えて、自分が歌を歌うときには、絶対にバックでこの歪んだギターが鳴っていて欲しいと思ったんです。それから、ロックに転がっていったんですね。でも、まだその頃はEマイナーしか弾けなくて(笑)。それでも、一緒に買った小型のマルチ・エフェクターとEマイナーだけで曲を作ったら、それがとてもエキサイティングで。それで、これは絶対に練習してギターを上手くなろうと思いましたね。
─ 何の楽器の音かも分からない状態で感じた、ギターの歪みサウンドの一番の魅力は何でしたか?
O:歪んだギターって、ひねくれた音がするじゃないですか。私自身もひねくれた楽曲ばっかりを作っていたので(笑)、すごく心に共鳴するんですよね。しかも実際にギターを弾くようになると、ネックの振動が指に返ってくる感じがとても気持ちよくて、余計に共鳴感が強まったんです。自分と楽器が一体になっている感じがして。ピアノはピアノで好きな楽器なんですが、ピアノを演奏している時には感じなかったギターとの一心同体感が大好きで、今はとにかくギターを弾いているのが楽しいですね。
─ では、その「真夏の夜に華」もギターで作ったのですか?
O:いえいえ、まだEマイナーしか弾けませんでしたから(笑)、曲を作るためにDTMを始めたんです。中学生時代には、小さなミキサーを使って宅録でデモテープを作ったりしていたので、それにもっとドラムやベースを入たいと思って、パソコンで曲を作り始めたんです。高校受験の合格祝いに両親からエディロールのDTMパッケージ、ミュージ郎を買ってもらって、Sound Canvas DIGITAL SC-D70とシーケンスソフトのSinger Song Writer6.0を使って、パソコンで初めて作った曲が「真夏の夜に華」だったんです。このミュージ郎は、今でも曲作りに使っているんですよ。
SD-1を買ったその日の夜に、一気に「17才」を作りました
─ その後、ギターの歪みはどのように追求して行ったのですか?
O:もともとシンガー・ソング・ライターを目指そうと思ったのは、広瀬香美さんや大黒摩季さん、田村直美さんの曲を聴いたことがきっかけだったのですが、今振り返ってみると、そういう曲の中でも私が惹かれたのは、やっぱり歪んだギターだったりするんですよね。それぐらい、根っからのロック体質だったんです(笑)。それで、ライブをやるならコンパクト・エフェクターだろうと思って、何がいいのかネットでいろいろと調べて、ボスのスーパー・オーバードライブSD-1を買ったんです(写真1)。これが、私が最初に買った想い出のコンパクトなんです。
─ それは何歳の頃ですか?

▲写真2:扇愛奈『ニッポンの150cm』(VICL-61873)
扇さんのファースト・アルバム。1曲目に、「17才」が収録されている。2006年3月8日リリース。
O:17才です。と言うのも、このSD-1を買った日の夜に、とても嬉しくて一気に曲を作ったんです。それが「17才」という曲で、ファースト・アルバムの1曲目に収録しているんです(写真2)。この曲でデビューしたいと思ったくらい自分でも本当に好きな曲で、今でもライブの最初に演奏することが多い曲です。やっとコードも弾けるようになった時期だったので、初めてリードのリフとかも入れて作りました。SD-1と出会ってなかったら、この曲は生まれてなかったかもしれませんね。
─ それまで聴くだけだった歪みギターの音色を自分で作るようになったわけですが、好みの歪みはありますか?
O:王道ですけど、DS-1のディストーションが好きなんです。オレンジ色も大好きですし(笑)。でも、私は普通が嫌いで、何かしでかしたいと思っているので(笑)、ステージではOS-2(オーバードライブ/ディストーション)を使っています(写真3)。昨日、リハがあったんですが、恭一さんに「歪ませ過ぎだ」って怒られて、ドライブの量を下げられました(笑)。

▲写真3:OS-2&TU-2
現在使用中のエフェクター。OS-2は、杉本恭一氏直々のアドバイスで、カラーをオーバードライブ寄りにし、ドライブ量を押さたセッティングで使用している。クロマチック・チューナーTU-2も、オレンジ好きという扇さんにとって、お気に入りのコンパクトのひとつだという。



