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Vol.03 Dr.USUIが語るSonicCell活用法 キャッチーなメロディとクールなトラックで海外での評価も高いネオ・テクノポップ・ユニット、MOTOCOMPO。V-Drumsの活用により、楽曲制作のほぼすべての作業をプライベート・スタジオで行っているというギタリスト兼コンポーザーのDr.USUI氏に、V-Drumsの導入のきっかけや新製品SonicCellの活用アイデアなどをたっぷりと語ってもらった。

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音楽制作&ライブをパワフルにこなす新音源、SonicCell

Fantom-Xクラスの音源とUSBオーディオ/MIDIインターフェース機能を装備した次世代型音源モジュール。

 

いい音でライブをしたい。それがV-Drumsを導入した最大の理由です

─ MOTOCOMPOのライブではV-Drumsを使っているそうですが、Dr.USUIさんは、いつ頃からV-Drumsを導入しているのですか?

Dr.USUI氏所有のV-Drums

▲写真1:Dr.USUI氏所有のV-Drums
音源は、TD-8(販売完了)を使用。ライブでは、トラックにキックの音色を入れておき、TD-8のキックと打ち込みのキックのサウンドをミックスして鳴らすこともあるという。

Dr.USUI(以下、U):去年からになります。現在は販売が完了してしまった音源モジュールTD-8とラバー・パッドのキットを使用しているんですが、ライブと、このプライベート・スタジオでのプリプロで大活躍しています。ドラムは、ずっと一緒にやっているサポートの女性ドラマーに叩いてもらっているのですが、V-Drumsを導入した当初は、最新モデルのようにメッシュ・パッドではなかったこともあって、彼女もちょっと戸惑ったようでした(笑)。でも、このスタジオでプリプロやライブのリハを重ねていくうちに、いわゆる生のロック・ドラム特有の気持ちよさ、つまりサスティーン感や部屋のリバーブ感だけではなく、リズム楽器の面白さに気付いたようなんです。例えば、僕らの音楽はシーケンスを大々的に使っているので、それに対するジャストな感じだとか。そこから自分のプレイ・スタイルを変えるようにまで変化してきて、今ではライブが近くなるとキットを丸ごと持ち帰って、自宅で練習しているみたいですよ(笑)。現在ラインナップされているV-Drumsだと、メッシュ・ヘッドであったり、倍音の鳴り方やリムショットなどもさらにリアルさを増しているようですから、上位モデルも試してみたいな、と思っています。

─ レコーディングでは使用することもあるのですか?

U:昨年参加した有頂天のトリビュート・アルバム(『The Very Best Covers Of 有頂天』)では、基本のリズム・トラックは打ち込みで作っているんですが、フィルはV-Drumsを叩いてMIDI録音をして、後から音色を差し替えて収録しています。

─ そもそも、なぜV-Drumsを導入したのか、そのきっかけを教えてください?

U:最大の理由は、「いい音でライブをやりたいと」思ったからなんです。それまで、なかなかライブのサウンドに満足することがなったんです。もちろん、それはこちら、つまりプレイヤー側の力量にも問題はあるんですが、僕らのようなバンドが生ドラムを使うと、どうしても生ドラムにシーケンスが負けてしまって、シーケンスがヌケてこないんです。

─ 確かに、ライブでの打ち込みトラックと生楽器のバランスは難しいですよね。

V-Drumsについて語るDr.USUI氏

U:ライブハウスだと、PAさんの経験やセンスの違いもあるじゃないですか。実際、打ち込みモノに慣れてないPAさんも少なくなくて、ドラムが生音だけでも十分いけるのにフェーダーを上げられたり、逆にライン楽器の音を「上げてくれ」と言っても上げてくれなかったり。その部分は、かなり悩みましたね。まあ、フェーダーが上がらなければPAさんと戦うわけですが(笑)、そうは言っても対バン形式でライブをやっていく場合は、そこはある意味、避けられない部分じゃないですか。そう考えた時に、「生音をなくして、全部ライン出力にしてしまえばいいんじゃないか」と思いついて、そういうライブをやりたいと、夢として思っていたんです。それが、V-Drumsを入手したことで実現できたというわけです。僕は本気で、V-Drumsはエレキ・ギターと同等、またはそれ以上の発明だと思っていますよ。そもそも、ギタリストの僕が「これは自分の音楽に絶対必要だ」と思って手に入れたわけですからね。それくらい、僕らはV-Drumsを愛しているんです。

─ ドラムを含めたライブのリハも、このスタジオで行っているんですね。

U:ライブ・アレンジを決めるのも、レコーディングのプリプロも、全部このスタジオです。ドラムを叩くのに、わざわざリハスタに行かなくてもいいということは、V-Drumsの大きなアドバンテージですし、一連のすべての作業をこのスタジオで行えるという点も、僕がV-Drumsをここまで気に入っているひとつの理由です。かつて、サポートでベーシストを入れた時などは、ここで全員ヘッドホンをしながら、ラインでセッションもしましたからね(笑)。

─ 完全防音の本格的なスタジオでなくても、自宅でバンドのセッションが行えるなんて、数年前までは考えられないことですよね。

U:V-Drumsによって、音楽が変わっていく可能性すら感じています。きっとね、自宅でV-Drumsを使ってセッションしながら曲を作っているインディーズ・バンドは、今ではたくさんいると思いますよ。具体的にそういうバンドを知っているわけではありませんが、最近のインディーズ・シーンの音楽を聴いていると、緻密な作りの楽曲が増えてきているような気がするんです。これは、よほどの天才か、あるいは相当のお金をつぎ込んでリハスタでセッションを重ねないと無理なプレイなんですよ。でも、インディーズ・バンドですから、きっと自宅でV-Drumsなどを使って試行錯誤していたりするんじゃないでしょうか。こういったプリプロの方法は、90年代以前のロックやポップスではあり得なかった、現代の最先端のものですよね。

UKツアーの初日は、2枚のパッドをイスにくくり付けライブをやりました(笑)

─ 5月に行われたUKツアーにも、V-Drumsを持参されたそうですね。

U:もう、V-Drumsは僕らとは切っても切れない関係になっていますからね。ただ、実は大きなトラブルがあって……。出国の際に羽田で飛行機の出発が遅れて、予定していたのとは違う便でロンドンに向かったんです。それで、急遽パリを経由することになったんですが、そのパリで別の航空会社に乗り換えたら、荷物一式が全部なくなってしまったんです。

─ 本当ですか!?それではライブは……?

U:これまでのツアーの経験から、PCや音源、ギターに関しては手荷物で機内に持ち込むようにしていたんです。ですから、結局それ以外のエフェクター、シールド、パッド、スタンドから衣装などが、すべてなくなってしまって。それでも、僕らは翌日にはブライトンでのフェスティバル(The Great Escape festival)に出演することになっていたので、たまたま手荷物に入れていた2枚のパッドとキック用のペダル、それと音源のTD-8だけでライブをやりました。スタンドもないから、イスにガムテープでパッドをくくり付けて(笑)。ところが、ここのPAさんが実にプロフェッショナルで、こっちの機材の状況がこれだけ酷いのに、出音が物凄くいいんですよ。それは、他のバンドのリハを聴いている段階で気付いて、不思議と「これなら大丈夫だ」って思えたんです。ですから、こちらの問題はいろいろとありましたが(笑)、出音はまったく問題なかったんです。それがせめてもの救いでした。

─ そこまで出音がいいというのは、イギリスのPAさんは打ち込みモノに慣れているからなんでしょうか?

U:それもあるでしょうけど、やっぱりレベルが高いですよね。正直、PA機材はとてもしょぼいんですが、出音が素晴らしいんです。僕らがずっと理想としていた音がバーンと出てきて。イギリスでは、田舎のクラブも含めて、ブライトン、エクセター、マンチェスター、ロンドンと全5公演を行ったのですが、どこも出音がバッチリで、これには感動しましたね。

─ その後、ツアーはどのようにして行ったのですか? さすがに、イスにガムテープでは……(笑)。

U:マンチェスターで、プロモーターに機材に件を相談したら、すぐにV-Drumsをレンタルしてくれて、最終日のロンドンでは、ようやくフル・セットを用意することができたんです。音源だけ自分たちのを使って。マンチェスターやロンドンでは、V-Drumsはかなりポピュラーな存在のようで、プロモーターが知人にちょっと声をかけただけで、すぐに誰それが所有しているという感じで連絡が取れて、レンタルすることができたんです。楽器店にも普通に展示されていましたしね。それで最終日のリハが終わって、さあ本番、という時に、パリでなくなった機材が楽屋に届いたんです(笑)。でも、それまでのライブでパフォーマンスもいい方向に固まってきていたので、機材は今さら変えずに、衣装だけ日本から持ってきた物に着替えて、それまでと同じ状態でライブをやりました。いやぁ、ツアーってこういうものなんだな、って思いましたね。でも、面白かったですよ(笑)。

ロンドンでのライブ・ステージ

▲写真2:UKツアー最終日、5月22日のロンドンでのライブ・ステージ