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Vol.04 DAITAがボスGT-PROの実力に迫る ロック・ギター・インストのソロ作品、ボーカル・プロジェクトBINECKS、そして氷室京介のツアー・メンバーと、あらゆるステージを変幻自在にこなすトップ・ギタリストDAITA。その高度なギター・テクニックに加え、自らがエンジニアリングを手がけるレコーディング・ワークの評価も高い彼に、ギター・サウンド・メイキング術と、ボスGT-PROのインスピレーションについて話しを聞いた。

GT-PRO

ラック・タイプのGTシリーズ最高峰、ボスGT-PRO

世界中のギタリストたちから圧倒的な支持を獲得しているGTシリーズのプロ仕様フラッグシップ・モデル。

 

インスト曲よりも、BINECKSのような歌モノのほうが、ギターの比重は大きくなるんです

─ ソロ、BINECKS、そして氷室京介さんのツアー・メンバーと、実に多彩なシチュエーションでギターを弾かれているDAITAさんですが、やはりそれぞれの場面で、ギター・サウンドに対する発想は変わるのでしょうか?

ギターについて語るDAITA氏

DAITA(以下、D):厳密に言うと、それぞれのシチュエーションで、ギター・サウンドはものすごく考えて使い分けています。ただ、その違いが一般の方が聴いて分かるほどのものかは、分からないですけどね(笑)。具体的に言うと、シチュエーションによってギター本体を変えることが、まず大前提です。同じ4~5本のギターを使うにしても、どれをメイン・ギターにするのかで、必然的に作品の質が変わってきます。この前のBINECKSのレコーディング(『Sacred Vision』)では、意識的にサウンドを変えるために、メイン・ギターはディーンのHardTailを使いましたし、チューニングも全弦1音下げにして、さらにドロップCなども使っています。でも、自分のソロではレギュラー・チューニングだし、ギターも普通のチョイスの仕方になりますね。

─ その他には、ギターはどのような使い分けをしているのですか?

D:ポールリード・スミスを使う場合は、歪みに多少の荒さがあったとしても、手元で表現力をコントロールしやすいので、メロディックなフレーズを弾く時に使うことが多いです。それはピック・アップの特性でもあるんですけどね。トム・アンダーソンは、タイトに弾きたい時に手に取ることが多いです。最近のギターの使い分けは、だいたいこんな感じですね。

─ 曲作りの際は、必ずこのギターというような、決めている1本はあるのですか?

D:家で曲を作ったり、デモを制作する時は、最近弾いてないギターを手に取って、違う気分で弾くことはよくありますね。最終的に、本チャンのレコーディングに入る時は、「この曲でこのフレーズなら、これだろう」というギターが2~3本は思い浮かぶので、その中から実際にアンプをつないで音を鳴らしてみて、一番いいのを選ぶようにしています。

─ インスト曲と歌モノでは、ギター・サウンドの組み立て方は、どのように変わってくるのでしょうか?

D:インスト曲の場合の考え方は比較的シンプルです。歌のように主旋律を奏でるギターが1本あると考えると、実は楽曲の中で各パートに置かれる比重は、ギターよりも、曲の背景や雰囲気を作り出す他のパートのほうが重要だったりするんですよ。だから、レコーディングでは、ギターよりもパソコンをいじっている時間のほうが長くなっちゃいますね(笑)。それとは逆に、BINECKSのように歌ありきの曲の場合にギターの比重は大きくなるんです。ギターでバック・サウンドの面積を積み上げていくので、必然的にギターを弾く時間も長くなりますね。インスト曲の場合は、自分がリードマンになるというか、ボーカルの代わりにギターで歌を歌うわけですから、そういう時は、やっぱり自分の声のように鳴ってくれるギターを選んだり、音作りを行います。一方、BINECKSの場合は、歌よりもギターは一歩後ろに引いて、きちんとサウンドに馴染むような楽器選びや音作り、そしてフレージングを考えますね。

テープ・サウンドを知っている耳では、ギター・サウンドの柔らかさや硬さの感覚が違ってくる

─ DAITAさんのレコーディングでは、どの程度の割合でギターのライン録音を取り入れていますか?

レコーディングについて語るDAITA氏

D:実はこの数週間、次の自分のソロ・アルバムに向けての曲作りを行っているんですが、デモということもあって、最近はラインでしかギターを弾いてないんですよ(笑)。でも、その中で「ラインもいいな」と感じることが、最近は多いですよ。数年前までは、歪み系のプラグインにしてもアンプ・シミュレーター・ソフトにしても、ラインの音を本番のレコーディングで使うということは、あまり考えませんでしたよね。でも最近は、アンプ・シミュレーターの精度は大いに上がっていると感じています。一般的にアンプ・シミュレーターのライン・サウンドは、エアー感がなかったり、音が硬いという特徴はありますが、CDに収録されるアンサンブルとしては、まったく問題ないんじゃないでしょうか。だから、今日試奏するGT-PROも、とても楽しみなんですよ(笑)。

─ このスタジオで、すべてのギター・パートをご自身で録音したというBINECKSのレコーディングでは、アンプに立てた3本のマイクと、ラインで録った音をミックスしてギター・サウンドを作り上げたそうですね。

D:主旋律を取るリードに関しては、必ずアンプで鳴らしました。でも、ラインも同時に録るようにしていて、アンプの音に芯を加えたいなというような場合に、プラグインのアンプ・シミュレーターなどで微調整したラインの音をミックスするんです。そうすると、EQなどとは違った感じで、ギターの存在感を出せるんですよ。

─ DAITAさんは、プレイだけでなく、マイキングを含めてかなりエンジニアリング的な作業もこなされていますが、もともと宅録歴はいつ頃からスタートしたのですか?

D:14~5歳でギターを始めて、高校1年生の頃には、4トラックのカセットMTRで、バンドのメンバーとオリジナルを作っていました。自分の部屋にメンバーを集めて、小さい音で一発録りをしたりして(笑)。そこから始めて、次にハーフ・インチのオープン・リール式のMTRを手に入れて、「トラック数が倍の8トラックになった」って喜んでいましたよ。今のDAWソフトだと、トラック数なんて無限ですからね(笑)。

─ その頃は、エフェクターはどういったものを使っていましたか?

DAITA氏所有のボス・コンパクトの数々

▲写真1:DAITA氏所有のボス・コンパクトの数々。
左上から時計回りに、アコースティック・シミュレーターAC-2、オクターブOC-2、オート・ワウAW-2、ノイズ・サプレッサーNS-2、ダイナミック・フィルターFT-2、コンプレッション・サスティナーCS-3、ターボ・オーバードライブOD-2。「コンプ、オーバードライブ、コーラス、ディレイ。この4つは、当時はマストでしたね。」というDAITAさん。初期のSIAM SHADEのステージでも、歪み系のコンパクトはよく使っていたという。また、現在はライブ用のラック・システムには、VF-1がマウントされており、主に空間系エフェクターとして自身のライブはもちろん、氷室京介氏のツアーや数々のセッションで活用しているそうだ。

D:それこそ、ボスのコンパクトですよ。僕の周囲でも、8~9割方は、ボスのコンパクトを使っていたんじゃないかな。やっぱり、名機のOD-1とかOD-2、ターボ・オーバードライブ、コーラス、ディレイ、コンプとかね。オクターブも使いましたね。エフェクターは、かなり好きなほうで、足元に10個は並べていましたよ(笑)。

─ その頃と比べて、今のレコーディング環境については、どのように感じていますか?

D:当時は、コンピューターでレコーディングするような時代が来るなんて、考えもしませんでした。ギタリストと言えば、腕一本でしたからね。でも、そういう時代も経験しているからこそ、GT-PROのようなデジタル機器でも、使い方は変わってくると思っているんです。やっぱりアナログ的に使いたいというか、最初からデジタル世代の人たちよりも、ギター・サウンドの柔らかさや硬さの感覚は、違うはずでしょうからね。テープで作った音を知っている耳と、ハイファイなデジタル・サウンドしか知らない耳では、やっぱり聴覚が違うと思いますよ。