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Vol.05 beatmania ⅡDXサウンド・クリエーターがV-Synth GTをチェック シンセサイザーをこよなく愛し、そのすべてを知り尽くしたbeatmania ⅡDXサウンド・クリエーター、dj TAKA/L.E.D./DJ YOSHITAKA/Sota Fujimoriの4名が、V-Synth GTの実力をくまなくチェック。彼らが感じるハードウェア・シンセの魅力とともに、V-Synth GTがクリエーターたちの五感をどのように刺激したのか、たっぷりと話を聞いた。

V-Synth GT

ローランド・シンセサイザーのトップ・モデル、V-Synth GT

音源エンジンのデュアル・コア化と新開発AP-Synthesisを搭載し、新次元の演奏表現を実現したフラッグシップ・モデル。

 

ハード・シンセは、"ツール"ではなく、人間の五感を刺激してくれる"楽器"なんです

─ みなさんは、当然ながらソフトウェアとV-Synth GTのようなハードウェアのシンセサイザー(以下、ハード・シンセ)を併用していると思いますが、普段は両者をどのように使い分けているのでしょうか?

L.E.D.(以下、L):ケース・バイ・ケースではあるんですが、僕の場合はハード・シンセをサウンドの芯に使って、その周りをソフト・シンセでお化粧するという重ね方が多いですね。最近のソフト・シンセはクオリティも高いですけど、現実的には自分のお気に入りのハード・シンセが何台かあって、自然とそれに手が伸びるんですよね。

試奏するdj TAKAさん

dj TAKA(以下、T):僕らがハード・シンセに求める部分というのは、やっぱりフィジカルな要素が一番大きいですよね。ディスプレイを見ながらマウスで操作するっていうのは、どうしてもテンションが上がりづらくて。でもハード・シンセを使って、椅子から立ち上がりながら実際に自分の手でマシンを操作して音作りを行えば、自然とテンションも上がってくるよね。

DJ YOSHITAKA(以下、Y):それは僕も感じますね。ダンス・ミュージックって、テクノやトランス、ハード・ハウスもそうですけど、人間的な抑揚が極限まで抑えられた音楽じゃないですか。ドラムも生じゃないですしね。でも、そこでフィルターのツマミを回すことで、ダンス・ミュージックに人間性を盛り込めるわけですよ。そうすることで、平面的な音楽が、3Dのように広がっていくんです。ただ、打ち込みでフィルターを動かしても、人間性は盛り込めないんですね。やっぱり、ツマミは手で回さないと。

Sota Fujimori(以下、S):結局、今のソフト・シンセは物凄くクオリティは高いけど、僕にとっては、あくまでも1つのツールに過ぎないんですよ。楽器ではない。その点、ハード・シンセは演奏ができるし、バンドもできるし、所有する喜びも感じられる。やっぱり、"楽器"なんですよ。ハード・シンセには、ソフト・シンセにはない、何か人間の五感を刺激してくれる要素があるんです。だから僕にとってハード・シンセは、楽曲を作るツールではなくて、音楽を楽しむ楽器なんですね。この違いは大きいと思う。機能面での話しをすると、ソフト・シンセのアルペジエーターって、音を鳴らしてくれるだけでMIDIデータを送信できないものが多いんですよね。でも、ハード・シンセならMIDIを吐き出してくれるから、DAWソフトに取り込んで、自分の好みのフレーズにエディットしたり、他の機器と組み合わせて演奏することもできるじゃないですか。そういった、ハードならではの機能も魅力の1つですね。

Y:僕は、ハードでもソフトでも偏見は持ってないんですけど、改めて考えてみると、ソフト・シンセを使う場合は、どうしても音を重ねたくなるんですよね。何か寂しい気がして。でも、V-Synth GTなんか特にそうだけど、ハード・シンセは、単体でも存在感のあるサウンドを出せますよね。何が違うのか理由は分からないんですけど、そういう部分でも、ハード・シンセに惹かれるところは多いです。

S:例えば、V-Synth GTのプリセット・パッチの「Freak Lead」のリード・サウンドなんか、これはやっぱり、ソフトじゃ出せない音ですよね。ピッチベンダーを使って歪みギターのようにプレイできるし。こういった部分が、僕の言う"ツール"ではなく、"楽器"を感じる部分なんだと思います。

Y:それと、アナログ・シンセ系のベース・サウンドですよね。V-Synth GTは、物凄く音が太い。こういうベース・サウンドは、やっぱり太い音のするハード・シンセを使いたくなりますよね。

S:僕の推測だけど、V-Synth GTはD/Aコンバーター(注:デジタル信号をアナログ信号に変換するパーツ)の品質が物凄くいいんだよ、きっと。初めてV-Synth GTの音を聴いた時に、音がブワーッと押し寄せて来て驚いたんだよね。こういった見えない部分をしっかり作っているからこそ、V-Synth GTのサウンドはオケの中でも際立つし、存在感のある音を作れるんだと思います。

プリセット・パッチ「Freak Lead」

▲画像1:プリセット・パッチ「Freak Lead」。
「このままでもいい音ですが、ロワー・トーンをオフにすると、よりギター・テイストが強まります。こんなにいいリード・ギターを鳴らせるシンセはなかなかありません。演奏していて、とても気持ちがいいサウンドですね」(Sota Fujimori)

AP-Synthesisが、これまで棒読みだった生楽器の音に音楽的な表情を付け加えてくれる

試奏するSota Fujimoriさん

S:V-Synth GTが何より凄いのが、音源部分がデュアル・コア化されていることだよね。要は、僕らがみんな使っているV-Synth XTが2台分使えるのと同じわけだから、V-Synth XTではできなかったアナログ系の音とバリフレーズを活用した音色を重ねて使うなんていう面白い音作りができるよね。あと驚いたのが、ボーカル・デザイナーがプリ・インストールされていて、ボーカル・デザイナーとAP-Synthesisを同時に使えたりするんだよ(注:「AP-Synthesis」と「ボーカル・デザイナー」については、それぞれmnavi Academy SYNTHESIZER の第4回第5回をご参照ください)。

Y:AP-Synthesisの搭載で、遂に生楽器の演奏表現も網羅したわけですよね。

S:今まで、アナログ・モデリングや物理モデリングだとか、いろんなモデリング・シンセが登場したけど、楽器の奏法をモデリングするというAP-Synthesisの発想には驚きましたよ。いくらPCM音源が進化したとしても、サックスを吹いた時に音がしゃくれる感じだとか、フルートの高域が微かにビブラートする感じだとか、こういった要素は、その楽器固有の奏法を知らないとできない表現じゃないですか。プリセット・パッチの「Freak Lead」を使ったリード・ギター的なサウンドでも、結局はピッチベンダーの使い方を知らないと、ただの棒読みの音になっちゃう。それがAP-Synthesisを使うことで、音の表情がとても音楽的に、格段に変わってくるよね。これはシンセにとって革命的な技術と言えるんじゃないかな。サックスのブレスの感じとか、凄いよね。こんな色っぽい響きのサックスは、なかなか他のシンセでは作れないですよ。

T:だからこのシンセは、見た目はテクノ系のモンスター・マシンという印象があるけど、まったくそれだけじゃなくて、物凄くアコースティックな要素が強いよね。

Y:"音作り"という意味で、現状で考えうるすべてのことができる、いわばシンセサイズ機能の"オールイン・ワン"ですよね。

プリセット・パッチ「AP-S Violin」

▲画像2:プリセット・パッチ「AP-S Violin」。
「とにかく音の表情が生々しいですね。ピッチベンダーの上のS1/2ボタンを押すと、ピチカートやトレモロ奏法に変えられるというのは驚きました」(dj TAKA)

─ シンセサイズという部分で言えば、PCM音源はもちろん、アナログ・モデリング音源も入っていますし、COSMやバリフレーズ、ボーカル・デザイナーも入っています。それに今回、AP-Synthesisが新たに加わったということで、ローランドがこれまで蓄積してきたシンセサイザーに関するすべての技術が搭載されたシンセと言えますね。

S:だから、シンセの音なんだけど、魂が宿ってますよね。しかも、これだけの音源エンジンをソフト化するとなると、きっと使い物にならないくらい動作が重たくなるはずですよ。というか、現状ではソフト化は無理でしょう。それくらい膨大な処理がストレスなく行えて、しかも音色を自由自在に作れるというのは、ハードウェアであるV-Synth GTの大きな魅力の1つでしょうね。

beatnation summitのステージにセッティングされたV-Synth GT

V-Synth GTは、2007年8月11日に開催された『beatnation summit -beatmania ⅡDX premium Live-(CLUB CITTA)』のステージでも使用された。