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Vol.06 スティーヴ・ジャンセンがSPD-S&HandSonic 10に見出す可能性 先進的なエレクトロニック・パーカッションを積極的に取り入れることで、独自のドラム・スタイルを確立してきたスティーヴ・ジャンセン。今回、デヴィッド・シルヴィアンのワールド・ツアーでも使われたSPD-Sの魅力を聞くとともに、Handsonci 10を試奏してもらい、これら新時代のデジタル楽器がもたらす可能性について語ってもらった。

SPD-S & HandSonic 10

プレイヤーの感性を刺激する最新パーカッション・パッドSPD-SHandSonic 10

サンプリング機能搭載のパーカッション・パッドと、より使いやすくなったニューHandSonic。

 

OCTAPADの登場がエレクトロニック・ドラムの新しい可能性を感じさせてくれた

─ 最初に、スティーヴさんとエレクトロニック・ドラムとの出会いを教えてください。

試奏中のスティーヴ・ジャンセン

スティーヴ(以下、S):最初の出会いはSIMMONSだった。ただ、あれはアコースティック・ドラムのサウンドを再現するというよりは、シンセサイザーのノイズ的なサウンドで、パッドもとても硬くて、ツアーが終わると手が腫れ上がっているような感じで、あまりいい思い出がないんだ。しかし、その後に、ローランドのOCTAPAD(PAD-8:85年発売)が出てきてから、エレクトロニック・パッドの印象も変わってきて、これを88年のデヴィッドのツアーで使ったんだ。

─ その時は、どのような目的でOCTAPADを使用したのですか?

S:そのツアーでは、デヴィッドのアルバムのサウンドを忠実に再現することを目的にしていたんだ。だから、アルバムのレコーディングで、実際に僕が叩いたアコースティック・パーカッションのサウンドやフレーズをステージ上で、しかもアコースティック・ドラムと一緒にプレイする必要があったんだ。特にこの時のデヴィッドの楽曲は、パーカッションが楽曲のベーシックを形作っていて、そこからメロディが生まれてきたという意味合いも強かったから、そこの部分はどうしても再現しないといけなかったんだ。そこでOCTAPADを使って、ツアーを成功させられたからこそ、僕自身、エレクトロニック・ドラムの可能性を新鮮に感じることができたし、自分のアイデアは間違っていなかったと確信することもできたんだ。

高橋幸宏『Something Blue』ツアーでのスティーヴ・ジャンセン

▲写真1:高橋幸宏『Something Blue』ツアーのステージでSPD-20をプレイするスティーヴ・ジャンセン(2006年9月30日昭和女子大学人見記念講堂/photo:Kenji Miura)

─ その後、2004年のデヴィッドさんのツアーではHandSonic 15、2005年の坂本龍一さんのツアーでV-Drums、そして昨年の高橋幸宏さんのツアーではSPD-20をステージで使用されていましたが、今回のデヴィッドさんのツアーでは、どのようなシステムで演奏されていたのですか?

S:アコースティック・ドラムのキットに組み込んで、1stタムの横にSPD-Sをセットしてプレイした。使い方としては特別なことはしてなくて、レコードなどからいろんなサンプルを取り込んで、曲によって音色を切り替えていたんだ。

アコースティック・ドラムとSPD-Sを融合させたサウンドはとても気持ちよかった

─ そもそも、今回のツアーでSPD-Sを採用した理由を教えてください。

SPD-Sを試奏するスティーヴ・ジャンセン

S:前回のデヴィッドのツアーでは、HandSonic 15を使って、自分の手で、直接的に音を鳴らしていた。これは、ドラマーとしてはとても使い勝手もよく、演奏していても気持ちよかった。ただ、この時は外部のサンプラー音源をMIDIでトリガーして鳴らしていたために、ごく僅かながらレイテンシーを感じていたんだ。今回のツアーではアコースティック・ドラムの中にエレクトロニック・パッドを組み込むということもあって、叩いた瞬間に音を鳴らす必要があったんだ。そこで、どんなサンプルでも内部に取り込めるSPD-Sを早く手に入れたかったんだ。

─ 実際にSPD-Sを使ってみて、感想はいかがでしたか?

S:完璧に仕事をしてくれて、まったく問題なかったよ。凄くよかった。自分のモニターで、アコースティックのドラム・サウンドとエレクトロニック・サウンドをミックスして聴いても、とても気持ちよく、演奏しやすかった。

─ このステージでは、アコースティックのバス・ドラムを使わずに、V-Kick Trigger KD-7を使っていましたが、このようなスタイルにしたのは、なぜですか?

S:実は前回のデヴィッドのツアーで、すでにKD-7は使っていたんだ。そのツアーでは、音楽的にもミニマムな要素が強く、しかも最小限のミュージシャンでパフォーマンスを行いたかった、ということもあって、HandSonic 15とKD-7というシステムにしたんだ。インタビューでも話したけど、僕が興味を持っているアコースティックなサウンドとエレクトロニック・サウンドの融合というのは、ドラムという楽器そのものに対しても言えるんじゃないかと感じて、バス・ドラムがエレクトロニックという組み合わせも面白いんじゃないか、と考えたんだ。

─ サウンド面や演奏面で、KD-7を使うメリットはありましたか?

S:実際的な問題としても、アコースティックのバス・ドラムだと、叩き方でサウンドも変化してしまうし、リハーサル後にチューニングが変化してしまって、リハと本番ではサウンドが変わってしまうということにも、違和感を持っていたんだ。それに比べて、KD-7ならコンスタントにバス・ドラムのサウンドを鳴らし続けてくれるし、レスポンスもとてもいい。そういう意味では非常に演奏しやすかったし、リハーサルの後も、何の不安もなく本番のステージに臨めたんだ。それに、見た目もカッコいいじゃない?(笑) 通常、客席からはドラマーの右足は見えないけど、実はいろいろと足を動かしているんだよ(笑)。そういう部分を見せられるというのも、ひとつのエンタテインメントだと思っているんだ。「No Bass Drum is good!」だよ(笑)。

『The World is Everything』ツアーでのスティーヴ・ジャンセン

▲写真3:デヴィッド・シルヴィアン『The World is Everything』ツアーでのスティーヴ・ジャンセンのセッティング。タムの隣にSPD-Sがセッティングされ、バス・ドラムにはKD-7を使用している。(Photo: Mark Hughes)