SPD-Sを見つけた時に「これかな」と閃いた
─ 新譜『C.O.W.』は、これまでのMO'SOME TONEBENDER(以下、モーサム)の作品の中でも、打ち込み系サウンドがアグレッシブに取り入れられていますが、このようなサウンド・コンセプトは、どのようにして生まれたのですか?

藤田(以下、F):そもそも僕らは、ギターとベース、ドラムというオーソドックスなロック・バンドのスタイルでずっと活動してきたんですが、その間にも、音楽はどんどん進化していっているし、僕の好きな音楽もどんどん変化していっている。その中で、3ピース・バンドというスタイルで、どうやって新しい音楽を作っていこうかということは、ずっと考えていて、そのひとつの方向性として、今回のアルバムを制作したわけです。こういった、新しい試みをどんどん取り入れていかないと、バンドも続かないと思っていますから。
─ 特に今回の作品に関しては、藤田さん主導のもと、いわゆるPCレコーディングのスタイルで曲作りを進めていったそうですが、藤田さんがデモ制作にPCを導入したのはいつ頃からですか?
F:PCで音楽を作り始めたのは……、4年くらい前からかな。
─ それは何かきっかけがあったのですか?
F:何となく、テクノロジーの波が押し寄せて来るのを感じていたんです(笑)。僕らは「バンドやろうぜ!」って3人で始めたバンドで、以前は、スタジオに入って3人で音を出しながら、セッションすることで曲を作ってきました。もちろん、それは今でもやっていますが、それ以外の曲作りの方法にもチャンレンジしてみたいと思ったんですね。そうすることで、また違った新しいタイプの曲がいろいろと作れるだろうと思って。
─ バンド・メンバーの中でも、ドラマーがPCレコーディングや打ち込みをいち早く取り入れるというのは、なかなか珍しいですよね(笑)。

▲写真1:サンプリングしたサウンドをパッドを叩いて鳴らせるSPD-S。モーサムのライブでは、声やサイレンの音などがSPD-Sで鳴らされ、バンド・サウンドに強いアクセントを加えている。
F:周りのバンドを見ていても、こういうことをやり始めるのって、ほとんどはボーカリストかギタリストが多くて、確かにドラマーは少ないかもしれませんね。たいていは、PCで曲作りを始めると、ドラマーが手持ち無沙汰になるのが一般的なんでしょうけど、モーサムの場合は、僕がやり始めちゃったんで(笑)。まあでも僕らの場合は、音源を作る時は、あまりパートは関係ないんですよ。録ってしまえば、誰が発した音かは関係なくなりますし。でも、そうして作った楽曲をライブで演奏するためにはどうしたらいいのか、ということはとても悩みます。元々、自分自身は根っからのアナログ人間で、こういうロックに打ち込みを取り入れた音楽を作っておきながら、どうやってライブで演奏すればいいのか、最初はまったく分からなかったんです。クリックを聴きながらオケを同期させて演奏する、なんていう発想すらありませんでした。それでいろいろ悩んでいた時に、楽器屋さんでSPD-Sを見つけて、「ひょっとしたら、コレかな」と閃いたんです。
─ それまでに、エレクトロニック・ドラムは使ったことはあったのですか?
F:いえ、SPD-Sが初めてです。だから、実は今でも、本当の使い方はよく分かってないんですけど(笑)。
デジタル機器を使って、頭を柔らかくして新しいロックを作る
─ 具体的には、SPD-Sは、ライブではどのように使っているのですか?
F:PCで作ったフレーズや、マイクでサンプリングした音、例えば声などをパッドに散りばめて、それらを鳴らしています。だからどちらかと言うと、飛び道具的な使い方ですね。それでも、SPD-Sを使い始めてから、「いろんな演奏のやり方があるんだ」ということに気付きました。今では、クリックを聴きながらPCからオケを流して同期させたり、ノリとしてクリックを聴きたくないような曲や、それほど大掛かりな同期が必要ない曲では、SPD-Sを叩いてフレーズを鳴らしたりしながら演奏しています。まあ、まだまだいろいろと勉強中、といった段階ですね。
─ お話しを伺っていると、レコーディングの段階ではライブのことはあまり考えずに、楽曲を作っているのですか?

F:昔は、それこそライブでの再現性を考えたうえで曲作りをやっていました。ただ、そこを考え始めると、ギターを何本かダビングして重ねるだけでも、「ライブで再現できないけど、それはどうなの?」ということになるじゃないですか。実際に、以前はそういう話もメンバー間でやっていたんですが、そうすると結局、自分たちの音楽の幅が広がらないというか、創造力に制限を作ってしまうことになるじゃないですか。だから今では、ライブのことは一切考えずに音源を作るようになりました。ライブのことは、後で悩めばいいや、と(笑)。
─ 確かに、レコーディングでしか作れない音楽というものもありますからね。
F:そうですよね。最近では、ドラム、ベース、ギターという楽器に関わらず、いろんなサウンドを組み合わせたロック・バンドもたくさん出てきていますからね。僕らもこういったデジタル機材を活用して、どんどん頭を柔らかくして音楽を作っていきたいと思っています。


