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Vol.11:最先端トラック・メーカーKREVAがFantom-Gのポテンシャルを探る ヒップホップMCとしてはもちろんのこと、トラック・メーカーとして常にシーンをリードし続ける日本ヒップホップ界の最重要人物:KREVA。その卓越したテクニックと秀逸なセンスによって生み出されるトラックは、否応なしに聴く者を熱くさせる。そんなKREVAが、ニュー・アイテムFantom-Gを徹底チェック。新世代のワークステーション・シンセは、最先端トラック・メーカーにどのような刺激を与えたのか。KREVAとFantom-Gによるバトルの様子をお伝えしよう。【撮影:在津完哉(ライブ写真)】

ME-20 & CUBE Street

"楽器"としての圧倒的なポテンシャルをフル装備したFantom-G

最先端クリエーターの感性を全方向から刺激する新世代のライブ・ワークステーション・シンセサイザー。

 

Fantom-Gには、耳を引きつける太いリズム音色が揃ってますね

─ Fantom-Gのサウンドをチェックする際には、真っ先にドラム・キット(プリセット・リズム・セット)から試されていましたね。

KREVA(以下、K):そうですね。やっぱり、まずドラムのサウンドは気になりますね。プリセットの『80'sDigiDrm1』とか、物凄くよかったし、『Fatty 1』のキックなんか、メチャクチャ音が太いですよ。そもそも、キット名が"Fatty"ですからね(笑)。でも、こういうプリセットの名前って、僕にとっては大事な要素なんですよ。シンセの音色でも、制作者の想い入れが伝わるような可愛い名前とかあるじゃないですか。そういった名前のイメージから、曲を作ることもあるんですよ。それにしても、このキックは、音が太いですね。

─ Fantom-Gのサウンドは、楽器の芯となる部分をしっかりと残しつつ、抜けのいい音を追求しました。

K:このキックだけで、ご飯6杯くらいイケますよ(笑)。『Classic HipHop』も気に入りました。まさに、ヒップホップ・ドラムのクラシックですね。あと、『FG Kick Menu』の中にある、ハイハットが混ざっているキックの音色、僕はこれがとても好きなんです。このキックの音色は、Fantom-XR搭載のリズム・キットの中にもありますよね。これまで10曲以上で、僕はこのキックを使っていますよ。

『Fatty 1』の画面

▲画像1:「とにかく太い」とKREVA氏を唸らせたプリセット・リズム・セット『Fatty 1』の画面。

─ ドラムという点では、SuperNATURALエクスパンション・ボードARXシリーズARX-01 Drumsもオススメなのですが、こちらのサウンドはいかがでしたか?

K:アコースティック・ドラムの、スネアのシェルの深さやチューニング、マイキングまで変えられるというのは、ちょっと驚きでした。僕は、シェルを一番薄くした音質が好きでしたね。

─ クリエーターの皆さんは、自分の好みのサンプルを集めた"マイ・キット"をお持ちだと思いますが、通常のサンプリング素材だと、ピッチを変えるとアタック感がなくなったりしてしまって、結局はキットのバリエーションを作ることが、これまでは難しかったと思うんです。でも、ARX-01でドラムをエディットしていけば、アタック感を損ねることなく、スネアのピッチも本当にチューニングを変えるのと同じように変化させられますので……。

K:なるほど! "マイ・キット"から、さらにバリエーションを広げていけるんですね。これはヤバイですよ。それに、シェルの深さだとかのエディットしていく様子が、グラフィカルに目で見て分かるようになっているのが嬉しいですよね。これはヤル気にさせてくれますよ。

─ ARX-01では、このようなアコースティック・ドラムの音作りだけでなく、クラシック・スタイルのTR-808やTR-909のサウンドも、なかなか面白くエディットできるようになっています。エディットしようとすると、ディスプレイにオリジナルのモデルと同じツマミの絵でパラメーターが表示されるんです。

K:これは分かりやすくて便利ですね。しかしこの大型のカラー・ディスプレイ、本当にグラフィックスがキレイだなぁ。とても見やすいですよ。

─ TR-808と言えば、改造によってキックをロングトーンで鳴らすサウンドが、かつてヒップホップでよく使われましたが、そのサウンドもARX-01で作り出せるんです。

K:マジですか!? (サウンドを聴いて)凄い。この音色だけでも、僕はFantom-GとARX-01を買ってもいいと思うくらいの価値がありますよ。驚異的な音の太さですね。これは熱いですよ!

─ サンプリングすればピッチも付けられるので、ベースの音色に使うこともできます。

K:このキック一発で、もう周りの連中を黙らせられる威力がありますよ(笑)。それにしてもFantom-Gは、内蔵のドラム・キットにしても、ARX-01にしても、TR-808的なサイン波のキックだとか、とにかく耳を引っ張る強い音色が満載ですね。

「ARX-01 Drums」のTR-808サウンドのエディット画面

▲画像2:『ARX-01 Drums』のカスタマイズ画面。エレクトロニック系のキックやスネアなどのインストゥルメントを選択してエディットすると、往年のTRシリーズを思わせるデザインでパラメーターが表示される。

月並みな表現ですが、Fantom-Gはメチャクチャ凄いです(笑)

─ 時間を遡ってサンプリングできるという「スキップバック・サンプリング機能」も、かなり興味をお持ちになられたようですね。

KREVA(以下、K):これには驚きました。何となく思いついたフレーズを弾いて、それがイイと思えば、そこでこのボタンを押せば、今弾いたフレーズをサンプリングできるんですよね。実際にやってみると、これは感動しました。凄い。しかも、それをすぐに鍵盤やパッドにアサインできるわけでしょ? これは強力ですよ。

─ Fantom-Gのアウトプットを常にサンプリングし続けているので、内蔵の音源だけでなく、例えばFantom-Gのインプットにターン・テーブルのスクラッチを入力して、それをスキップバック・サンプリングするということも可能です。また、内部のシーケンサーをリサンプリングした場合は、同時にテンポ情報も記録しているので、サンプリングしたフレーズの先頭を後でわざわざ合わせる必要もありません。ですから、フレーズを作りながら、同時にリミックス的な作業もやっていけるわけです。

K:月並みな表現で本当に申し訳ないんですけど、Fantom-G、メチャクチャ凄いです(笑)。要は、このスタジオにある機材で僕がやっている作業のすべてが、この1台だけでできてしまう、それくらいの凄さですよね。ヤバイですよ。それに、サンプルの「リアルタイム・タイム・ストレッチ機能」も強力ですよね。オーディオ編集をしなくても、シーケンサーに取り込んだサンプル・フレーズにすぐにリアルタイムでタイム・ストレッチがかけられるし、テンポを大きく変えても、全然問題なくサウンドが付いてくるのもビックリです。

─ 一般的なサンプラーだと、極端にテンポを落とすとサウンドが破綻してしまいますが、あくまでも音楽的にサウンドが変化するという点も、Fantom-Gならではの特徴です。

K:これなら、大幅にテンポを落とした時のサウンドも、使い方によってはちょっとした面白いネタとして使えそうですよね。このリアルタイム・タイム・ストレッチ機能は、他のサンプラーでサンプリングしたWAVデータを取り込んだ場合でも利用できるんですよね? フレーズをサンプリングして、そこから簡単にベストなテンポを探っていけるわけだから、これはぜひとも試してみたい面白い機能だと思います。

Fantom-Gのサンプリング機能

▲画像3:Fantom-Gには、通常のサンプリング機能はもちろん、最大40秒までさかのぼってサンプリングできる、独自のスキップバック・サンプリング機能も搭載。