mnavi Works

Vol.14:ザ・ジェッジジョンソン藤戸じゅにあがV-Synth GTの使いこなし術を披露

V-Synth GT

ローランド・シンセサイザーのトップ・モデル、V-Synth GT

音源エンジンのデュアル・コア化と新開発AP-Synthesis&ボーカル・デザイナー機能を搭載し、新次元の演奏表現が可能に。

 

新譜でも大活躍しているMC-505は
10年以上愛用し続けている

─ 藤戸さんは、ギターとシンセのどちらの楽器を先に手にしたのですか?

藤戸(以下、F):最初はギターです。元々は、僕はギタリストとして、しかもデスメタルをやっていたんです。それが何で、今じゃこんなエレクトロな曲を作ってるのか、って話しなんですけどね(笑)。

─ デスメタルの話を聞いて納得したんですが、ギター主体のザ・ジェッジジョンソンサウンドの中でのシンセの使い方が、決して飛び道具ではなく、とても重厚でボトムを支えているという印象を以前から持っていたんです。

F:最近流行りのエレクトロニカ的なテイストをバンドに取り入れる手法だと、本当に一部分にだけ電子音を混ぜるという使い方が多くなると思うんです。だから、結果的にシンセが飛び道具的に使われるし、サウンド的にもハイ上がりな傾向になりますよね。ザ・ジェッジジョンソンはそうではなくて、あくまでもシンセでボトムを強くすることをイメージしています。ギター・バンドとしてのしっかりした基礎があったうえに、飛び道具ではない、バンド・サウンドと同じレベルでシンセ・サウンドを突き詰めて行きたいという意識は強いです。

─ そういったシンセの打ち込みは、どのようなきっかけで始めたのですか?

F:学生の頃に、インダストリアル・ミュージックをバックボーンにしながらデスメタルをやっていたんです。前衛的なメタルですね。その頃に、ローランド/ボス製品に出会ったんです。それがボスのドクター・リズム、DR-55でした。ちょうど、ギターの練習やデモ作りに使えるシーケンサー的なマシンが欲しかったんですよ。当時は、まだパソコンだとかシーケンサーが一般的な存在ではなくて、いろいろ探した中で、ドクター・リズムを見つけて。

─ では、ライブで使うというような目的ではなかったのですね。

F:そうなんです。でも、ドクター・リズムは便利でしたよ。曲作りにも役立ちましたし。それでも、使い慣れてくると、次第に「作った曲をストックしていきたい」というように思い始めて、次にステップ入力タイプのシーケンサー、MC-500を買いました。フロッピー・ディスクにバックアップを取るヤツですよ。これと、音源にサウンドキャンバスSC-55mkⅡを使って、DTMを始めたわけです。

─ 必要に迫られて打ち込みを覚えていくうちに、だんだんとエレクトロ的な要素が作品に加わってきたわけですね。

F:ええ。もちろん、シンセだとか電子音楽、テクノ、アンビエント・ミュージックは大好きだったんですけど、まさかそういう音楽を自分がやるとは、まったく考えてなかったんです。ところが、MC-500のようなシーケンサーを使うことによって、努力すれば自分1人で音楽を完成させられると思えたことは、自分の中ではとても大きな出来事でしたね。それでも、SC-55mkⅡとMC-500、DR-55のシステムの限界も見えてきて。例えば、SC-55mkⅡって、サウンドのリリースは調整できるんですけど、ディケイやサステインはコントロールできなかったんですね。そういう部分まで、もっと細かく音色を作り込みたいという欲求が出てきたんです。そこで、もっと音作りの自由度が高い機材ががないかと探していたら、MC-505が発売されたんです。これは衝撃的でしたよ。それ以前にも、ローランドのヴィンテージ・リズム・マシンのTR-808やTR-909、それにベース・マシンのTB-303とかも持っていたんですが、MC-505を使い始めてからは、それらは全部売っぱらっちゃいました(笑)。MC-505は、壊れてもローランドのサービス・センターに修理をお願いして、もうかれこれ10年くらいは使い倒してますよ。今回の、ザ・ジェッジジョンソンのアルバム『Discoveries』でも、シンセ・サウンドの中ではMC-505を一番多く使ってますね。パーカッシブなシンセ・サウンドは、ほぼすべてMC-505なんです。

自分の作品を自らの手で演奏することが、
これからのアーティストの基本原則であり責任だ

─ そこまで愛用しているMC-505の最大の魅力は?

F:操作性と、やっぱりサウンドの質感ですね。MC-505って、音が太くて丸いんですよね。アナログのTRシリーズとかは、音が硬くて太いんですが、MC-505は丸くて、太くて、強すぎないけど、しっかりと音に芯がある。操作性もいいし、MIDIコントローラーとしても使うことがあります。やっぱりハードウェアって、直感的に操作できるという点が一番の強みでしすね。もちろん、ソフトウェア・シンセにはソフトウェア・シンセの優れた利便性がありますが、直感的にリアルタイムでサウンドをコントロールするという点においては、どうやってもハードウェアには勝てないんですよ。ですから、いくらソフトウェア全盛期と言えども、ハードウェアがなくなることはないと思っています。

─ ハードウェアとソフトウェアが共存していくというわけですね。

F:実際に、もう共存し始めていますよね。そういう意味でも、V-Synth GTは新しい時代の強力なツールだと思っています。

─ そのV-Synth GTは、いつ頃から使い始めているのですか?

F:およそ1年半ほど前からです。実は最初は、ボコーダーを探していたんですよ。ザ・ジェッジジョンソンは、ずっとライブでボコーダーを使い続けていたんですけど、新しいボコーダーでいいマシンがないか探していたときに、とある方にVP-550を紹介されたんです。VP-550は、"ボーカル&アンサンブル・キーボード"と名付けられているだけあって、サウンドも優れているし、ボコーディングを知らない人でも直感的に演奏できるくらい操作性が優れていて、すぐにライブで使い始めたんです。その後、メンテナンスのためにVP-550をローランドさんに持って行ったら、今度すごいシンセが発売される、というお話しを耳にして。

─ それがV-Synth GTだったんですね。

F:そうなんです。実は僕は、V-Synth XTのボコーダー機能(ボーカル・デザイナー)を使っていたんですよ。それで、「やっとXTの後継モデルが出る!」という嬉しさもあったし、僕のライブ・システムに完全に統合できるボイシング・ツールを探していたところだったので、V-Synth GTが発売されるとすぐに使い始めました。

─ 実際にV-Synth GTのボーカル・デザイナーを使ってみて、感想はいかがでしたか?

F:まず基本として、サウンドのクオリティーが高いことは魅力的ですよね。これが一番です。ライブでは、ボコーダーを使わない場合でも、ボーカル用のマイクはV-Synth GT経由でPAに送ってるんですよ。ボコーダー用のパッチ(音色)とドライな生声のボーカル用パッチを用意していて、外部シーケンサー経由でパッチをチェンジさせることで、ライブ中に生声とボコーダー・サウンドを使い分けているんです。その生声を入力した場合でも音が劣化しませんし、生声の入力を想定したコンプレッサーやEQ、それにリバーブも搭載されているので、PAに送る前に、V-Synth GT内でボーカルの音作りを完全に行うことができるんです。

─ PAさんに頼まなくても、自分の手でボーカルの微調整が行えるわけですね。

F:逆に、PAさんからサウンド面で要望があったら、それもすぐに対応できますので、これは便利ですよ。ライブで生声とボコーダー・サウンドを共存させようとすると、多くのボコーダー・マシンでは限界があるんですよ。特にライブの現場では。その点、V-Synth GTはスタジオでの楽曲制作で威力を発揮するシンセですけど、実はライブに強い機能もたくさん用意されているんですよ。マイク入力端子がちゃんと現場の業務用機器に対応できるXLR端子という点も、さすがですよね。

─ ミュージシャンとしては、やはり制作とライブの両方でフル活用できるマシンというのは重要ですよね。

F:そうなんです。"アルバム完結型"というアーティストもたくさんいるとは思いますが、やっぱり、スタジオで作った作品を100%に近い状態でライブで表現できないと、僕はダメだと思うんですよ。これだけインターネットが発達して、デジタル・テクノロジーの進化でパソコンに歌わせることができるようになると、作品だけが一人歩きしてしまって、作ってる人間の顔が見えない時代になってきています。ということは、誰が作っていても構わないし、誰が作っているのか分からないという状態なんです。そのような状況で自分のアイデンティティを確立したり、自分が作った作品であることを証明するには、ライブ・ステージに立つしか方法がなくなってきている。だからこそ、自分がクリエイトした作品を自らの手で演奏するということが、これからのアーティストの基本原則になっていくでしょうし、それが作る側の責任だと思っています。まあ、それ以前に、やっぱりライブは楽しいですからね。