mnavi Works

Vol.18:名キーボーディスト/プロデューサー土橋安騎夫がJUNOシリーズを語る

JUNO-D,JUNO-G,JUNO-STAGE

シンセの楽しさとすごさが満喫できる最新JUNOシリーズ

軽量・簡単・高音質のJUNO-D Limited Edition、音楽制作をサポートするJUNO-G、そしてライブ・ステージに特化したJUNO-STAGEの強力3モデル。

 

短い楽曲の中でいかに個性とカッコよさを出せるか、
そこがサントラ制作のポイント

▲画像1:アニメーション『夜桜四重奏』

─ 今回、土橋さんが、アニメ『夜桜四重奏』のサウンド・トラックを手がけるようになったきっかけから教えてください。

土橋(以下、D):このアニメの音楽プロデューサーをやっている野崎圭一さんとは、以前から一緒に仕事をしたいな、と思っていたんです。そもそも野崎さんって、バンドだとかミュージシャンのディレクターをやっている人なんです。そういった方が、『機動戦士ガンダム』などのアニメのサウンド・トラックで、ひと味もふた味も違う作品を作っているということに興味があったんです。

─ 原作のイメージをどの程度意識して、曲作りをスタートさせたのですか?

Dやっぱりストーリーが分からないと何も始まりませんから、まず原作の単行本を読みました。そうしたらなかなか面白くて、特に2巻目くらいからはストーリー展開のテンポ感も上がってくる感じで。そこで、スピード感があって、ギターをメインにした音楽を作りたいというイメージが浮かんだんです。それを打ち合わせで話したところ、プロデューサーの方も同じことを感じていたようで、さらに監督さんも「グラム・ロック的なものをやりたい」と意見が合いまして。みんなが同じベクトルに向いていたので、そこから先は、自然な流れで進んでいきました。

─ 木暮"shake"武彦(元レッドウォーリアーズ/現Mtデリシャス)さん、北島健二(FENCE OF DEFENSE)さん、野村義男さん、是永巧一さん、遠藤一馬(ex.SIAM SHADE【KAZUMA】)さんと、この作品に参加されている5人のギタリストは、いずれもみなさん、土橋さんと馴染み深い方々ばかりですね。

D:そうですね。しかも、わざと違うタイプのギタリストに集まってもらったんです。

─ これだけ豪華なギター陣を集めようと思ったのは、どうしてですか?

D:これは、僕がギタリストではないからできたことだと思っています。例えば、ギタリストがギター・サウンドをメインにしたサウンド・トラックを作ろうと思ったら、当然、ギターは自分で弾きますよね。でも今回は、僕がキーボーディストという点が最大のポイントで、ギタリストでないからこそ、ギター・サウンドを作るには、バラエティに富んだギタリストをたくさん呼ぼうと思いついたわけです。

─ ギタリストの人選は、どのように行ったのですか?

D:shakeや北島さん、是永君、ヨッちゃん、KAZUMAと、まずは「自分が好きなギタリスト」ということでこの5人に絞って、「この曲はこの人に弾いてもらおう」だとか、「これはハードな曲だから、やっぱりこの人がいいな」といったように、ギタリストの個性に合わせて曲を振り分けていきました。まだまだお願いしたいギタリストもいたんですけどね。

─ その作業は、曲がすべて完成してからですか?

D:いえ、曲を作りながら、同時進行ですね。

─ レコーディングの際、ギタリストのみなさんには、土橋さんからはどのようなリクエストを出したのですか?

D:KAZUMAは若いけど、そのほかのみなさんは長いキャリアを持っていて、それでいて40歳を過ぎてもずっとギター少年のような人たちばかり。そもそも、僕が細かく言わなくても分かってくれる旧知の間柄ですから、特別に僕から何かリクエストするようなこともありませんでした。だから、制作の進め方としては、普段のJ-POPのプロデュースをする場合と同じですよ。ただ、サウンド・トラックというのは歌がない分、場面によってミュージシャンの主張を出していけるという点は、とても面白かったですね。

─ なるほど。そこが、いわゆる"歌モノ"とは大きな違いですね。

D:そういう意味でも、ずっとサウンド・トラックをやりたいと思っていたんです。サウンド・トラックを手がけるのは今回が2作目ですが、ほとんどが2~3分の短い楽曲で、その短いメニューの中にいかに個性とカッコよさを出していくか、ということがポイントなんです。ただ1曲だけ、「Tears」という曲なんですけど、これだけは実際の映像を見ながら曲の長さを合わせたりして、きっちりと作り込みました。実は、その映像というのは、最終回のものなんです。ここでは内容は話せませんが(笑)。

─ 一番、グッとくる場面ですね(笑)。

D:そうなんです。この曲だけは、本当にレコーディングの最後の最後、あと数日でニューヨークでマスタリングっていうギリギリの時期に作ったんですよ。

5人のギタリストの個性が共演したテーマ曲

─ 曲作りそのものは、どのようなスタイルで行ったのですか?

D:今回の作品で言えば、ギター専用のソフト・シンセなどを使って、ギター・フレーズやリフを考えました。もちろん、そういったソフト・シンセを使うのはデモ段階だけですけどね。ただ、リフを考える場合は、是永君に「こういう感じで」って実際に弾いてもらったりもしましたね。

─ ギターが入ってないダンサブルな曲もありますが、そのバランスはどのように取っていったのですか?

D:結局、5人のギタリストに来てもらったんで、まず1人4曲と考えて、それで20曲。あと、ギターが入らないトラックを10曲というような感じで考えていきました。実際は31曲が収録されていて、あとの1曲、最終的にテーマ曲になった「Wild Children」は、ギターを誰に弾いてもらうか迷ったんですよ。でも、「それなら、全員で弾いてもらおうか」って思いついて(笑)。

─ その曲は、みなさん、どのようにギターを重ねていったのですか?

D:これがね、偶然だと思うんですが、レコーディングのスケジュールがともてうまく決まってくれて。是永君、ヨッちゃん、shake、KAZUMA、最後に北島さんっていう順番に重ねていったんですよ。まず、是永君とヨッちゃん、つまり非常にアメリカンな骨太のギターを弾く2人で左右を固めてもらったんです。左で聴こえるのが是永君で、それを聴きながらヨッちゃんが「それなら、僕はこうだ」って弾いてくれました。これが右に定位しています。次にshakeが来て、リフやソロなどを弾いてもらいました。やや右寄りから聴こえるのがshakeで、最後のコーダに向かって延々とものすごいソロを弾いてるのも彼ですね。そこにKAZUMAが「オレ、一番年下っすよね」みたいな感じで入って来て(笑)、「じゃあ、センターでリフを弾け!」って(笑)。それで、最後の締めが北島さん。最初、北島さんは「これだけギターが入ってて、オレに何しろって言うの?」っていう感じだったんですが、T.レックスみたいな音で最後を締めたいと思って、ブリッジのところのソロなどを弾いてもらいました。北島さんが入る段階で、僕がイメージしていた通りの個性豊かなギター、是永君の音、義男の音、shakeの音、KAZUMAの音になっていたんですけど、あえてもっとグラム・ロックっぽいギターで締めてもらいたかったんです。この曲のレコーディングは、本当に順番が良かったですね。

─ まず両脇を締めて、どんどん中に入れていったわけですね。

D:こういうことができるから、サウンド・トラックって面白いですよね。普通にJ-POPの歌モノだったら、絶対にできないことですから。「歌にならないじゃないか!」って怒られちゃいますから(笑)。