シンプルさと使いやすさ、そしてサウンドの完成度の高さが、JUNO-Dの魅力
─ 今回のレコーディングでは、シンセはどのようなものを使いましたか?
D:ローランドの楽器はたくさん使いましたよ。Super Jupiter(MKS-80)は、いまだに大活躍です。「Real Crime」のシンセなんて、オールMKS-80です。やっぱり、Jupiter-8やMKS-80のサウンドって、どんなに時代が変わっても「これにしか出せない音」があるんです。逆に、時代が進むにつれて、より一層「これでしか出せない音」になっていますよね。ただ、ビンテージ・シンセだけでなくて、新しいJUNO-D Limited Edition(以下、JUNO-D)やSH-201も使ってますよ。SH-201は、完璧にアナログ・サウンドなんですが、ローランドらしい"癖"がとても好きで。リード音とかも太いんですが、嫌味のない太さがいいですね。

─ JUNO-Dは、具体的にはどのような使い方をしましたか?
D:「Heavy Wall」という曲のエレクトロっぽいシーケンスは、JUNO-DとMKS-80のサウンドをミックスして作りました。あと、「Pellucid Mind」のバッキングでも、トランスっぽい音をJUNO-Dで弾いてます。シンセ・カテゴリーの"Sy22:Trance Keys"っていうパッチ(音色)がドンピシャで、これを元にして、フィルターのレゾナンスやフリケンシーを上手くいじって、さらにエンベロープでアタックを少し削るんです。それに、アタック系の音を足したりしてサウンドを作るといったことをよくやります。JUNO-Dは、本当にバリバリに使ってますよ。
─ 土橋さんは、ライブでもJUNO-Dを使用されていますが、JUNO-Dのどのような点が一番気に入っていますか?
D:軽くてシンプルで、サウンドが完成されている点ですね。ライブでJUNO-Dを弾く時は、エレピだとかをパッチ・モードで使うことが多いんですが、迷うことなく弾けますからね。僕はJUNO-Gも使ってますが、こちらは、例えばどのくらいのベロシティー(強弱)で波形(サウンド)を切り替えるかというようなことも、実に細かく作り込んでいけるじゃないですか。僕も、時間をかけて細かく音色を作っていってたんですが、ある日、ふとJUNO-Dを弾いてみたら、このフィーリングがいいんですよ(笑)。JUNO-Dは、そこまでユーザーが細かく設定することはできないんですが、でもプレイヤーが楽器の鳴り方に合わせて演奏法を変えればいいわけですよ。それって、生ピアノでも同じじゃないですか。だから、音色を本当に細かく、自分用にカスタマイズしたい人はJUNO-Gがオススメですが、プレイヤー志向の人ならJUNO-Dは本当に弾きやすいと思いますよ。これはつまり、それだけJUNO-Dの音源の完成度、作り込み具合が素晴らしいということなんです。プリセットを選んでそのままバンドで弾くだけで、ちゃんとバンドの中でも音が抜けてきますしね。

─ なるほど。「プレイヤーが楽器に合わせる」というのは、面白い発想ですね。
D:もちろん、時間さえあればJUNO-Gの音作りに没頭してみたいという気持ちもあるんですよ。でも僕らの場合、どうしても時間との闘いという側面もあって......。それに、最近のライブ・スタイルは、昔のようにたくさんの機材を並べてMIDIで鳴らしながら演奏するといった感じではなく、完全にプレイヤーとシーケンスを担当するマニピュレーターが別れているから、僕の場合は、ステージではほとんど手弾きなんです。そういう部分でも、シンプルで使いやすく音がいいJUNO-Dが、とても気に入っているんです。
「ありものを自分なりに変えていく」という
新しい楽しみ方ができるJUNOシリーズ
─ そういったプレイヤーとしての視点から、今回試奏していただいたステージ志向のJUNO-STAGEはいかがでしたか?
D:まず76鍵に鍵盤数が増えたということで、演奏表現の幅が広がりましたよね。特にピアノやエレピを弾く際には、最低限あって欲しい音域だし、このくらいの大きなサイズでドッシリしている感じもいいですよね。
─ ピアノやエレピという点では、新開発のおもり付きシンセ鍵盤を採用したり、どの状態からでもすぐにピアノ/エレピに切り替えられるピアノ・モードも新しく搭載しました。
D:サウンドもいいし、ピアノ・モードでピアノやエレピのエディットが手軽にできるというのもいいですよね。VALUEダイヤルを回して、グランド・ピアノの蓋の開閉具合まで調整できるというのは面白いよね。実際にディスプレイで、グラフィカルに蓋が動いたりするし(笑)。普通のパッチ・モードでも、エディットの仕方や細かさはJUNO-Gを踏襲しているみたいだから、JUNO-Gとの違いというと、シーケンサーの有無ですよね。だとすると、やっぱりシーケンサーが搭載されているJUNO-Gは自宅での音楽制作に向いていて、JUNO-STAGEはよりライブ志向ということになるんでしょうね。USBメモリーにオーディオ・データを入れておけば、バッキングを鳴らせるソング・プレーヤーも、やっぱりライブ向けの機能だと思うし。
─ オーディオ・データを再生する際に、ボーカルを消してカラオケ状態で再生できるセンター・キャンセル機能も搭載しているんですが、例えばダンス・トラックでこの機能を使うと、アイソレーターでキックを消すような効果も作り出せて、楽曲にフックを加えることもできるんです。
D:なるほどね。ボコーダー機能も搭載されているし、いろいろと面白いね。さっきも言ったように、今はあまり時間がないからしばらくはJUNO-Dでいこうと思ってたんですが、ちょっと使い方を覚えてJUNO-STAGEを使ってみたくなりました(笑)。
─ そのボコーダーも、JUNO-STAGEではエフェクトの1つとして搭載されているんです。言い方を変えれば、どんな音色でもボコーダーのキャリアとして使えるわけで、いろんなボコーダー・サウンドが楽しめるようになっています。
D:普通に好きな音色を探して、そこでエフェクトをボコーダーに切り替えれば、その音色でボコーダー・サウンドが鳴らせるわけですね。これはボコーダーの可能性が広がるんじゃないでしょうか。これまでのボコーダーって、高額な専用モデルか、チープなオモチャ的なものの両極端しかなかったから、JUNO-STAGEのようなボコーダー機能は、価格的にも効果的にも、とてもユニークですよね。

─ 本日は最新JUNOシリーズ3モデルを試奏していただきましたが、改めてJUNOシリーズに対する印象をお聞かせください。
D:"シンセサイザー"というものに対する敷居の高さを、かなり引き下げてくれたと思いますね。だって、シンセサイズの知識がまったくなくても、シンセを楽しめるわけじゃないですか。かつてのアナログ・シンセって、それこそ波形であったりピッチであったりエンベロープであったり、そういった専門知識がないと、音を出すことすら難しかったけど、「ありものを自分なりに変えていく」という形でシンセを楽しめると現代のスタイルは、すごく簡単だし、とても素晴らしいことだと思います。JUNOシリーズは、その最たるものなんじゃないでしょうか。
─ それでは最後に、シンセをプレイして音楽を楽しんでいるキーボーディストにメッセージをお願いします。
D:今シンセを楽しんでいる人たちって、一時期よりもライブ志向が高まっているんじゃないかって、最近僕は感じているんです。いわゆる、DTM的にデータを作るというよりも、やるほうも観るほうも、もっとはっちゃけてライブを楽しみたい、バンドをやりたいんじゃないかと思うんですね。昔のキーボーディストって、プログラミングも大変だったし、機材も大きくて車でないとリハにも行けませんでしたが、最近では僕の学生時代の同級生も、JUNO-Dを担いでアマチュア・バンドで楽しんでいるみたいです。まあ、「絶対JUNO-Dがいい!」って薦めたのは僕なんですけど(笑)。プロのギター・バンドでも、シンプルにステージにシンセを1台置いてライブをやってるバンドは多いじゃないですか。そういうように、昔に比べて最近はどんどんシンセが手軽に楽しめる楽器になってきているから、アマチュアのキーボーディストのみなさんも頑張って、ライブを、プレイを楽しんで欲しいですよね。やっぱりライブって本当に素晴らしいものだし、バンドって、楽しいものですから。
JUNO-D Limited Edition

JUNO-G

JUNO-STAGE

JUNO Special Website「MY JUNO!」
シリーズ3機種からのチョイスをサポートする「はじめてのJUNO診断」や、楽譜+お手本演奏付き「今すぐ使える練習曲集」など 楽しいコンテンツ満載のスペシャル・サイトです。
Profile:土橋安騎夫
1984年、"REBECCA"のキーボード及びコンポーザーとしてメジャー・デビュー。4枚目のアルバム『REBECCA~Maybe Tomorrow~』で大ブレイクし、 ロック・バンド史上初のオリコン・チャート最高1位を獲得、累計140万枚のセールスを記録した。1990年、REBECCAが日本武道館公演後、活動休止を発表し、ソロ・アーティストとしてVIRGIN JAPANと契約を結び、エンジニアFrancois K.を迎え1stアルバム『FOX』をリリース。その後、さまざまなアーティストのプロデュースや楽曲提供などを経て、1999年には自分のエゴをより深く追求、 幅広いカルチャーを意識した自主レーベル"starfish recordings"を立ち上げる。2002年、"Crude Reality"名義でUKのarthrob recordingsと契約。12インチ・シングル「stay or leave」を全世界リリース。2003年には12インチ・シングル「Octagon Planet」が第二弾としてリリースされた。その年にPARTY"mu-seum"をLOOPにて隔月で開始。2005年にCrude Reality名義でアルバム『Exterior World』をリリース。2007年には、1990年にリリースしたソロ・アルバム『FOX』が新曲2曲を加え再構築されWHDより再発売された。現在、DJ、ライブ、プロデュース、劇伴音楽の制作など、ジャンルにこだわらない幅広い音楽活動を展開している。
オフィシャルサイト:http://www.starfish-r.com/
Information
■CD
『AKIO DOBASHI feels 夜桜四重奏』

VTCL-60079 ¥3,045
