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Vol.20:スペース・ロックの旗手、木幡太郎&稲見喜彦(avengers in sci-fi)がSL-20とDD-7を弾き倒す!

SL-20 & DD-7

個性的なサウンドを生み出すスライサー&ディレイ

スピード感のあるスライス・グルーヴ・サウンドを演出できるSL-20と、8モードの多彩かつ高性能ディレイDD-7

 

スタジオでセッションしながら、楽曲の骨組みに
アドリブ的にエフェクターで装飾を加えていく

─ 新作『SCIENCE ROCK』は、前作(『avenger strikes back』)よりもロック・テイストが強まっているように感じましたが、この方向性は、やはり数多くのライブを展開してきた影響でしょうか?

木幡(以下、K):そうですね。僕たちは、かなりハイ・テンションなライブをやるんですが、ファースト・アルバムの曲って、エレクトロニックな質感にすごくこだわった結果、ライブで自分たちのテンションに楽曲がついてこないというストレスを感じるようになったんです。そこで「もっと細かいことを考えずにライブをしたい」という気持ちがあって、前々から、次はもっとロック色の強いアルバムにしたいと思っていたんです。まあそうは言っても、結局は細かいことをいろいろとやってはいるんですが(笑)。ライブ会場限定のシングル(「PLANET ROCK_CD」)を作った時に、狙っていることがうまく曲にできた感触があったんで、その方向性を突き詰めていきました。

稲見(以下、I):前よりも決めごとが少なくなりました。でも、僕らにとっては本当に自然な流れでしたね。

─ その「決めごと」というのは?

I:ベースに関して言えば、前のアルバムでは、いわゆる歪ませたロック的なガツンとくるテイストよりも、エレクトロ・サウンドのベース・ラインをバンドとして強く意識してたんです。でも、ライブをやっていくうちに、もっとパンチが欲しいと感じるようになって。やっぱり、ステージでプレイしていて気持ちよさを感じるロック感が欲しくなって、それがそのまま『SCIENCE ROCK』のテイストになったわけです。

─ その結果の完成度というか、満足度は?

K:やり切った、という感じですね。3ピース・バンドというスタイルも、誰かが目立つというわけでもなく3人がそれぞれ自由にやりながら、王道ロックを作れているという感触もありますし、今はうまくバランスが取れていると感じています。

▲写真1:木幡太郎(Gt)

─ いつも、曲作りはどのような形で行っているのですか?

K:曲の元ネタは僕が作ってきます。歌が核になったAメロ、Bメロってみたいな展開を基本にして、セッションできるような構成に整えます。そこからスタジオに入って、セッションしながらアドリブ的にコンパクト・エフェクターを駆使しながら装飾を加えていくんです。分かりやすく言うと、「裸の男をスタジオに入れて、エフェクターで服を着せていく」という感じですね(笑)。

─ 各パートのフレージングや音作りに関する部分は、それぞれのプレイヤーにお任せという感じですか?

I:基本的に、音決めは自分でやります。もう、お互いの足元(エフェクターでの音作り)の範囲は決まっているので、ここらあたりを踏んだらこういうサウンドやフレーズが当てはまっていく、ということも分かってるんです。ですから、僕らの定番的なエフェクターの使い方での音作りが半分、偶然性で生まれる面白いフレーズが半分という感じで、その作業をどんどん進めて行く形ですね。あとは、曲の展開に合わせてエフェクターの種類を変えていったり。

▲写真2:木幡氏のメイン・ギター、フェンダー「テレキャスター・デラックス」。

─ 約50台という膨大な数のエフェクターを駆使されていますが、お2人の中で「こういうサウンドの時はこれとこれを踏んで」ということが、だいたい決まってるんですね。

I:そうですね。

─ シンセかと思うようなサウンドも、ほとんどがギターやベースでエフェクターを駆使しながら作っているということですが、シンセではなく、あえてエフェクターを活用している理由は?

K:今回のアルバムから、僕と稲見が本格的にシンセを使うようになったんですが、シンセを使い始めて分かったことは、シンセって万能楽器みたいに言われているけど、実はそうでもないということです。ライブ中にシンセの音色を変えるよりも、僕らにとってはエフェクターを踏むほうが断然スムーズなんですね。曲作りの段階でも、シンセだと音を作り込む作業が必要ですが、コンパクト・エフェクターのほうが自分の出したい音を感覚的にすぐに形にできるんです。もちろん、僕らの機材に対する慣れもありますけどね。あとは単純に、アンプを通して空気が鳴っている音が好きだったりもするんですよね。

▲写真3:木幡氏所有のエフェクター。左上から上段・下段の順に、デジタル・ディレイDD-5、ギガ・ディレイDD-20、スーパー・シフターPS-5、ベース・シンセサイザーSYB-3&5。SYB-3はSE的な音色、SYB-5は単音弾きのフレーズにエレクトロな質感を加える場合と両者を使い分けている。PS-5もアップとダウンの用途で2台を使用しているという。

─ その一方で、ギターという楽器に対するこだわりや、ギターに感じる魅力は?

K:やっぱり、エッジ感。シンセ・サウンドって丸い印象があるんです。突き刺さってこない。ギターは、もちろんピッチが不安定だったり、弾き方によってはうるさく聴こえたりといった煩わしさがある分、フィーリングをストレートに伝えられます。直感的にプレイできるというか、情のおもむくままに表現しやすい楽器。シンセには安定感があって、いつでも100%のサウンドを出してくれますが、200%を出したい時、やっぱり僕はギターを手にします。まあ反面、ギターは30%しか出せない時もあるんですけど(笑)、そういう部分も含めて、そこがギターらしさ、ギターの魅力だと思っています。

─ 稲見さんがベースにコンパクト・エフェクターを多用しているのは、どのような狙いからですか?

I:僕の場合は、ベースっていう楽器に上モノ的なテイストを加えたいんです。シンセだと、そのままストレートに上モノじゃないですか。僕は、ベースはベースとして弾いて、音色的に上モノをプラスしたい、というイメージでエフェクターを使っています。

─ そういう意味では、一般的なロック・バンドのベースとは少し役割が違うんですね。

I:核の要素としては、本当に普通のバンドのベースと同じ役割なんですが、曲の変化によっては、キー・ポイントになるような耳に残るメロディとか、ギターとかぶるような音を出したりもします。曲のイントロでも「ギターかな?」と思わせておいて実はベースだったり、シンセっぽいフレーズもコンパクト・エフェクターのベース・シンセサイザーSYB-5で作ったりしてるんです。

K:他のバンドだと、ベースは常に下にいるっていう決まりごとがありますけど、僕らの場合は、ベースにディレイをガンガンにかけて完全に上モノにしちゃったりとか、曲の展開をガラッと変える時に、大胆にベースの低域ごとすべてカットしちゃったセクションを作ったりというようなこともやってます。

I:ギターが2本いないから、僕がギターのフレーズを弾いたりして、ギターとベースの2人で絡むんです。それが、場合によってはシンセとベース・シンセになったり。

ベースでも「こんな音が出せるんだ」ということが分かって
エフェクターの面白味に気づいた

─ これほどまでにたくさんのコンパクト・エフェクターを駆使してのサウンド・メイクやプレイ・スタイルは、バンド結成当初からのものなんですか?

I:このバンドをスタートさせてからですね。

K:稲見とは、高校時代のコピー・バンドの頃から一緒にやってるんですけど、僕がミクスチャー系のコピー・バンドにサポートで入ってた時期がありまして、その時にボスのデジタル・ディレイDD-5を買ったんです。そこでディレイを導入してから、自分でも「これはオリジナルだな」って思えるフレーズが作れるようになりまして。それで、エフェクターに対応した音作りでオリジナル曲をやってみたい、と思うようになったんです。そのうちに、ギターもベースもコンパクト・エフェクターがどんどん増えていって、いつの間にか、こういうスタイルになりました。

▲写真4:稲見喜彦(Bs)

▲写真5:稲見氏のメイン・ベース、ミュージックマン「スティングレイ」。

I:僕は、最初はベースに歪み系エフェクトを使うことすら知らなくて。コピーする曲のスコア本に使用するエフェクターが書かれていて、そこでベースで歪み系エフェクターを使うんだと知ったことがきっかけで、エフェクターの面白味に気づきました。その後にテクノとかを聴くようになって、ボスのベース・シンセサイザー・シリーズや、飛び道具的なエフェクターを使うようになりました。ベースでも、意外な音が出せるということが面白くて、ギター用のフランジャーとかも普通に使ってましたね。

K:元々、僕はHi-STANDARDとかが好きで、その一派にREACHってバンドがいたんです。そのバンドもどんどんメロコアから離れていって、大量にエフェクターを駆使するようになったんですね。その影響も大きかったですね。

─ ちなみにシンセは、ライブではどのように使ってるんですか?

I:僕はボコーダーとして使ってます。ベースで両手がふさがっていても歌えますしね(笑)。あと、シンセもループ・ステーション(RC-20XL)につなげているんですよ。シンセで弾いたフレーズをループさせて、その上でベースを弾いたりしています。

─ ギターでもループ・ステーションを使ってますよね?

K:はい。普通にフレーズをループさせて別のフレーズを重ねることもありますし、ギターを延々とループさせて、その間にシンセを弾いたり。あと、逆回転(リバース再生)の機能を使ってギターの音をサンプリングしておいて、踏めば音が出るようにして使っています。

▲写真6:稲見所有のエフェクター。左上から上段・下段の順に、ループ・ステーションRC-2RC-20XL、デジタル・リバーブ/ディレイRV-3、ベース・シンセサイザーSYB-3、スーパー・オクターブOC-3、ベース・シンセサイザーSYB-5。木幡氏同様に、稲見氏もSYB-3と5をSEやフレーズなどの用途で使いわけをしている。

─ ドラムの長谷川さんも、サンプリング・パッドSPD-Sやコンパクト・エフェクターを使われているようですが、それらはどのように活用しているのですか?

K:パッドはワン・ショット・サンプルを鳴らしていて、ループ・フレーズをSPD-Sで鳴らすことは、今はほとんどありません。ドラムの所にセットしているコンパクト・エフェクターは、ボーカル・マイク用のもので、声にエフェクトをかけてるんです。

─ 1/23からのツアー("ACCESS ALL UNIVERSE TOUR")で、アルバムの楽曲がライブでどのように演奏されるのか、その点も楽しみにしています。

I:同じフレーズで同じエフェクターを使っても、ライブではアルバムと違った音になりますからね、そういった僕らの「踏み姿」を楽しみにしててください(笑)。楽器が好きな人はもちろんですが、普通に音楽が好きな人も、一緒に汗をかいてくれると嬉しいですね。あと、今日は来てないドラムの長谷川のプレイも、皆さん見てやってください(笑)。

K:このツアーでは、『SCIENCE ROCK』の曲を中心にドシドシやります。本能に従う感じの、メロディックさとパンク精神で、アルバムとはまた違ったライブならではのよさを出していきたいと思ってます。その中で、僕らの音作りの秘密に興味がある人は、ぜひパフォーマンスも楽しんで欲しいですね。