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Vol.24:ブラジル系パーカッションの第一人者、安井源之新がSONAR V-STUDIO 100で録る!

SONAR V-STUDIO 100

モバイル録音も可能なソフト&ハード統合システムSONAR V-STUDIO 100

DAWソフトウェアSONAR VSと、単体での録音も可能な1台4役の専用ハードウェアからなる次世代の音楽制作パッケージ

 

VS-1680で40枚以上の作品をレコーディングした

─ 安井さんは、普段はどのようなシステムでレコーディングを行っているのですか?

安井源之新(以下、Y):私は、今でもVS-1680でレコーディングしているんです。自宅のスタジオにはPCベースのレコーディング・システムも用意していて、エンジニアさんに来てもらう場合はDAWソフトで録音してもらうんですが、自分で作業する場合はVS-1680です。もし、どこかにVS-1680が余っているようだったら欲しいと思うくらい、まだまだ使いまくってるんですよ(笑)。

─ VS-1680を使い始めたきっかけは?

Y:1999年にブラジルに渡って4年間ほど活動していたんですが、その際に、自前でレコーディング・システムを用意する必要があったんです。その頃は、DAWソフトも登場し始めた時期だったんですが、やはり確実性と機動力という点でデジタルMTRのほうがメリットが大きいと感じたんです。当時、すでにVS-880を使っていまして、ちょうど日本を出発する直前にVS-1680が発売されたので、すぐに購入して、そのままブラジルに持って行きました。

─ ブラジルでは、どのようなスタイルでレコーディングを行っていたのですか?

Y:スタジオ・セッションのほか、日本からの依頼があった際に、VS-1680で自身やブラジル人ミュージシャンの演奏を録音したうえでデータを日本に送って、それをエンジニアさんにミックスしてもらうということをやってました。ミュージシャン仲間でも、ドラムの吉田和雄さんやピアノのクリヤ・マコトさんなどがVS-1680ユーザーだったので、データをCD-Rに焼いて彼らに渡したり、場合によってはプロジェクトごとにハードディスクを入れ替えてやり取りをすることもありました。もう私にとって、VS-1680は必需品でした。

─ VS-1680で、録音以外にミックスまで行うこともあったのですか?

Y:2003年にブラジルでリリースした『F to G』(2008年にボーナス・トラックを加え日本発売)では、ミックスもすべてVS-1680内で行いました。ブラジル滞在中に制作したCDは40作品を超えるんですが、録音はすべてVS-1680なんです。アルバム『Oh!Bola!!』でも、私がVS-1680で録った音と、オノ・セイゲン(プロデューサー/エンジニア)さんのスタジオで録った音の両方が収録されているんですよ。でも、誰が聴いてもレコーダーの違いは分からないと思いますよ。この7月に、私も参加しているクリヤ・マコトさんのグループ"Rhythmatrix"のアルバムがリリースされるんですが、そのレコーディングでも、VS-1680とDAWソフトを行き来しながら制作を行いました。

─ それほどまでに愛用しているVS-1680の魅力は?

Y:やはり、すぐに録音できる簡単な操作性と、どこにでも気軽に持ち運べる機動性ですね。それと、電源を入れたらすぐに使えるというスピード感も、大きな魅力です。オノ・セイゲンさんが、よく「気を録る」という言い方をするんです。"気"が充満している一瞬をすくい上げるのがレコーディングだ、ということです。抽象的な言葉ではあるんですが、プレイヤーにとっては、とてもしっくりくる感覚なんですね。そういう意味でも、アイデアが浮かんだ時に、すぐにそれを録音して具現化できるVS-1680の存在は、とても重宝しています。

理想の音に近づくために、
録音ノウハウを学ぶことは大切だ

─ プレイヤーとしてだけでなく、マイキングからレコーディング、ミックスといったエンジニアリングまでご自分で行うようになったのは、どういった経緯からなのですか?

Y:ピアノやドラムは、基本的には一度の演奏で完結できますが、パーカッションはいくつものリズムを重ねてアンサンブルを構築していくことが多いパートなんです。ですから、必然的に多重録音が必要となるわけですが、実際にスタジオでエンジニアさんに録音してもらうと、「えっ!?」と驚くような音で録られることが多かったんです。

─ それはどいうことですか?

Y:昔から、「ピアノとドラムが上手く録れたらエンジニアとして一人前」と言われていて、そのノウハウを蓄積されているエンジニアさんはたくさんいらっしゃいますが、それがパーカッションとなると、困ってしまうエンジニアさんは多いんですよ。そりゃそうですよね。パーカッションは、非常にマニアックな世界で、エンジニアさんに「何?これ?」と絶句されるような楽器がたくさんあるわけですから。

─ プロのエンジニアでも、見たこともないような楽器がたくさんある、と。

Y:その通りです。例えばパンデイロ(ブラジルのタンバリン)を演奏する際、私としては、この楽器でドラム・セットと同じ音色を表現しているんです。低音で生み出すビートもあれば、ハイハット的な高音の刻みもあるわけです。しかし、この楽器がどういう音色を出すのか、どこからどういった成分が出てくるのかを知っていなければ、マイクの立てようがありませんよね。すると結局、オーバー・ヘッド的なマイクが1本立てられて、シャカシャカした音だけが録音されて、はい終了、となってしまうわけです。最近人気のカホンだって、後ろの穴から低音が鳴るわけですが、それを知らずにいくら表からマイクで狙っても、カホンとしての"おいしい"豊かな低音は録れないわけですよ。

─ プレイヤーの演奏表現と録音されるサウンドがリンクしないわけですね。

Y:そうです。プレイヤーとしては、「この楽器は、そんな音ではない!」と感じるわけです。でも、自分自身もどう録ったらいいのか分かってなければ、エンジニアさんに指示が出せないじゃないですか。楽器の音色を知って、マイキングを勉強しておくことで、「いい音で録ってください」というようなあやふやな表現ではなく、「ここからこういった成分が鳴るから、こんなマイキングで録ってください」って具体的な指示が出せるわけです。

─ なるほど。

Y:ミックス時のEQ処理にしてもそうです。この楽器の音色として、どこの成分を出して、どこをカットすればいいのか、というお願いができるわけです。EQのバランスひとつで、パーカッションの表情は大きく変わってきますからね。ですから、より自分の理想に近づくためには、レコーディングのノウハウを知っておくことはとても大切なことだと考えているんです。

─ そういった、アコースティック楽器としてのパーカッション・サウンドを追及する一方で、源之新さんはエフェクターを活用したユニークな音作りも積極的に行われていますね。

Y:パーカッションに、ベース・シンセサイザーとフランジャー、ゲート/リバーブをかけてループ・ステーションRC-50を通したり、さらに効果音にディレイをかけたりというのが、ステージでの標準セッティングです(笑)。使っているエフェクターは、全部ボスのコンパクトですよ。ループ・ステーションが出るまでは、デジタル・ディレイでループさせていましたし、さらにさかのぼれば、SDE-3000のホールド機能を使ったりして......。こういう音作りは20~30年前からやっています。趣味がエフェクター収集ですから(笑)。ボスのGTシリーズも使ったりしてますし、パーカッション・パッド歴も長いですよ。『Oh!Bola!!』のレコーディングでも、SPD-SHandSonic 15も使用しています。

─ いろんな音色に興味をお持ちなんですね。

Y:数千円のおもちゃのキーボードでも、面白い音色があれば使います。そこにタブーはありませんから。生楽器と電子楽器がうまくブレンドされると、予想もしない効果が生まれてくることがあるんですよ。その発想は、生演奏と打ち込みが混ざると躍動感が変わってくる効果と同じなんです。生音を知ることは大切ですが、「欲しい音」は、また別の話ですから、そこは何にも捕らわれることなく、自由な発想でいろんな音色を使っていきたいと考えてます。

▲写真1:安井氏によるパンデイロ録音のマイキング。コンデンサー・マイクを使用し、楽器の下からバスドラム的な低音成分を録音する。こうすることで、録音後にEQで低域を持ち上げてピッチ感を演出することができる。アタック感を表現する高音成分は、同じくコンデンサー・マイクを楽器の上側にセッティングして録音。ドラム録音時のオーバートップ・マイクと同じ感覚で立てればよい。なお、上下のマイクで位相が反転(逆相)しないように、注意が必要だ。