ミュージシャンとして進化するために、
ライブにショルダー・キーボードを取り入れた
─ 今の桃井さんのライブ・スタイルは、どのようにして確立されていったのでしょうか?
M:決定づけられたのは、大学生の時ですね。もうCDデビューしてたので、2000年か2001年ぐらいの頃ですが、リュック1つ背負って、1人でサンフランシスコに行ったんですよ。そこで、あるライブ・ハウスに目がとまったんです。明後日にカルチャー・クラブが来るんだけど、私は明日、日本に帰らなきゃいけない、というような状況で。でも、せっかくだから中に入ったら、そこにいる人達の雰囲気がものすごいんですよ。だって、本物のヒッピーですから。その時に、ああ、自分はこの人達にはかなわないって思ったんです。じゃあ、自分は何で勝負したらいいんだろう、ということを考えてみたら、私の原点は、秋葉原でアイドルのCDを買っていたことだって、改めて気付いたんです。日本人にしかない感性だとか、自分だけのものをもっと大事にしようと思った時に、私がやりたいのは「やっぱりコスプレして歌うことだ」って思えたんです。
─ その際に、桃井さんのトレード・マークとも言えるショルダー・キーボードを演奏しながら歌うといったアイデアは、どこから来たものなのですか?
M:私は歌詞も全部書いてるし、曲も作って、時にはアレンジまでやってるんですが、コスプレで歌っているだけだと、自分がミュージシャンとして音楽に参加してる感覚が薄く思えたんです。2002年から2004年まで活動していたユニット"UNDER17"は、ミュージシャン的な要素をアピールするためにギタリストの方に参加してもらいました。でも、1人で活動するようになった時に、自分はどう進化したいか考えたんです。そしたら、自分はミュージシャンとして進化したいんだっていうことに改めて気付いて、「じゃあ、ステージで楽器を弾こう」って考えたんです。それで、ずっと憧れだったショルダー・キーボードを背負いました。当時は、もう新品が手に入らなかったんですが、奇跡的に赤のAX-1とパール・ホワイトのAX-7を手に入れることができたんです。

▲写真1:彼女のトレード・マークでもある赤いAX-1は、アルバム・ジャケットにもたびたび登場している(写真は、2008年リリースのアルバム『Sunday early morning』のジャケット)。
─ 桃井さんにとって、ショルダー・キーボードの魅力は何でしょうか?
M:やっぱり、ステージ上を動けるという点は大きいです。私はロックが好きで、昔から、パール・ジャムやソニック・ユースが来日すると観に行ってたんです。そういうこともあって、ギターを練習しようと思ったことも何度かあったんですが、やっぱり私は"ピアノ脳"なんですね。思い浮かぶフレーズが、鍵盤で出てくるんです。まあそれに、ギターだと手が痛いとか、そういった根性ナシの部分もあったんですが(笑)、それでも、やはりロック的なステージングには憧れがあるわけです。
─ 確かに、ギタリストのポーズには観客に訴えるものがありますよね。
M:前かがみになって、顔が見えなくてもカッコいいとか、やたらと低い位置でギターを持つとか、そういうロックな見せ方って、やっぱり通常のキーボードだと無理じゃないですか。あと、私はステージの端から端まで動かないと気が済まないんです(笑)。だから、"動ける"という点と"ポーズがキメられる"という点が、ショルダー・キーボードの一番の魅力ですね。

─ ショルダー・キーボードを長年使っている桃井さんからして、新しいAX-Synthの第一印象はいかがでしたか?
M:とにかく「使いやすい」ということに驚きました。どのボタンを押せばどの音色が鳴らせるということが一目瞭然。感覚的に使えそうだな、という印象を持ちました。私って、気分によってライブのセットリストを変えちゃったりするくらい気まぐれなので(笑)、ステージでもアドリブ的に「このフレーズは、いつもと違うあの音色で弾きたい!」って思うことも多いんです。でも実際にはステージの上にいるとテンションも上がってるし、音色を細かく選ぶ作業なんてできないじゃないですか。しかも、AX-1やAX-7のようなMIDIキーボード・タイプだと、わざわざMIDI音源を置いている場所まで行くなんて無理ですし。そういう場合でも、AX-Synthなら「弾きたい!」と思った音色を、間違いなく選べるのでいいですね。しかもボタンが大きいので、押し間違えることがないということも、ステージ用としては重要なことだと思います。
─ それに、主要な操作ボタンはすべてLEDで光るようになってるんです。
M:それは、すごいですよね! 普通の据え置きタイプのキーボードとは違って、実際のステージでは、ほとんどボタンが見えないんですよ。ですから、今使っているAX-1も、必要なボタンやキーとなる鍵盤に、シールを貼って目印にしているんです。指で触ったら分かるように。
─ なるほど。そういう工夫をされているんですね。
M:でもAX-Synthは、背面のボタンまで光るようになってるので、すごく分かりやすいです。
─ サイズや重さはいかがですか?
M:AX-1よりも鍵盤数が増えたりして、全体のサイズは大きくなっているとは思いますが、不思議とAX-Synthの方が軽く感じます。実際は、わずかに重くなったそうですが、でもかえってバランスがよくなって演奏しやすいように思います。「ちょっと大きい」という声も聞きますが、私はいいと思いますよ。女性が大きい楽器を持ってるっていう姿は、ちょっと"萌え"っぽいですし。女の子がバズーカを持ってるのに近い、フェティシュな感じがいいと思いますよ(笑)。





