ユーミンの現場であればRD-700GX、
シンガーと2人ならV-Pianoを弾きたくなる
─ NAMM SHOW 2010では、K-RD700GX1とV-Piano Evolutionの他にも、オルガン、ピアノ、シンセサイザーのサウンドと機能を1台に凝縮させたライブ・キーボード VR-700 V-Comboも発表しました。こちらはいかがでしたか?
T:若いバンドのキーボード・プレイヤーには、オススメできるキーボードじゃないでしょうか。いろんなキーボードの音色が内蔵されているわけですから。僕自身は、左手はピアノでコードを弾きながら、右手でストリングスを弾いたりというプレイ・スタイルが多いので、こういうタイプを使う機会はあまりないですが、この1台でだけでピアノもオルガンも、そしてシンセまで弾けるわけだから、アマチュアのライブの際にはとても便利だと思いますよ。

─ オルガン・セクションは、ローランドがこだわりを持って開発を続けてきた完全ポリフォニックのバーチャル・トーンホイール音源を搭載し、さらにロータリー・サウンドをブラッシュアップしています。そこからボタン1つで、すぐにアンサンブル音色(シンセ・セクション)を鳴らすことができるんです。
T:ハーモニック・バーの右側にあるアンサンブル・ボリュームで、アンサンブル音色とのバランスも直感的にコントロールできるわけですね。
─ はい。ライブ・パフォーマンスという点では、アンサンブル音色を選ぶと、その音色にかけたくなるであろうエフェクトが自動的にセレクトされる仕組みになっています。もちろん、ボタン操作でそれをオン/オフしたり、ツマミでかかり具合を簡単に調整することも可能です。
T:それで、エレクトリック・ピアノの音色を選ぶと、もうトレモロがかかっていたわけですね。よく考えられていると思います。じゃあストリングスだと……ああ、フィルターが動くわけか。なるほど。
─ さらに、アンサンブル音色を切り替えた際に、音切れが起きない「トーン・リメイン」機能も搭載しています。
T:これはいいですね! ストリングスでフレーズを弾いて、その余韻が残ったままピアノに移れるというのは、ライブでの使い勝手はかなりいいと思います。この機能は素晴らしいですね。
─ 今回、タイプの違う3モデルを試奏していただきましたが、全体的な印象はいかがでしたか?
T:この3モデルの中だと、ピアニストとしてはやっぱりV-Pianoが一番気に入りましたね。コンボ・タイプだからステージ上で場所も取らないし、本体上にもう1台シンセを置いて演奏することもできるから、弾き語りやピアノとシンガーのデュオというスタイルに、とてもいいんじゃないでしょうか。
─ V-Pianoが、他のデジタルピアノと一番違うと感じる点は、どのような部分でしょうか?
T:音の深さと言うか、従来のデジタルピアノよりもう一段階、奥行きがあるような気がしますね。デジタルピアノって、どうしても平面的に聴こえがちですが、V-Pianoの音はとても立体的に感じます。それともうひとつ、V-Pianoの魅力は弱音にあるんじゃないかなと思いました。本当に小さいpppの音がストレスなく表現できるということは、これまでのデジタルピアノにはなかったことだと思います。
そうは言っても、用途や目的によってもモデルのチョイスは変わってくるでしょうね。さっきも言ったように、例えばピアノ・メインの弾き語りのアーティストならV-Pianoが向いているでしょうけど、大人数のバンドの中で弾くなら、僕はRD-700GXの方がカジュアルで適しているような気がします。実際に、僕もユーミンの現場であればRD-700GXの方が使い勝手がいいと思いますし、僕とシンガーさんの2人でコンサートをするのであれば、V-Pianoを弾きたくなるでしょうね。まあ、この2台を使い分けるなんて、すごく贅沢な話ですけど(笑)。

─ こういったデジタルピアノの進化について、武部さんはどのようにお感じになっていますか?
T:そこは難しい話なんだけど……。いくらアコースティック・ピアノをシミュレーションしても、アコースティック・ピアノは超えられないじゃないですか。でも、ひとことでアコースティック・ピアノと言っても、スタジオやコンサート会場だとか、場所によって楽器のコンディションは全然違います。全国をツアーで回れば、コンディションの悪いピアノに当たることもあるわけで、そういうことを考えたら、デジタル楽器のメリットを利用して、V-PianoやRD-700GXを持って全国を回った方が、演奏は絶対に安定しますよね。しかも、自分の気に入った音色をいくつか作っておけば、確実にいつでもその音色を再現できるわけですから、それはすごいことですよ。
─ それでは最後に、武部さんの楽器に対するこだわりを教えてください。
T:楽器って、結局は道具じゃないですか。だからこそ、そこにストレスを感じてしまうと、制作時間もかかってしまうし、いいことはないわけです。すなわち「音がいい」ということは、「気持ちよく音楽が作れる」ということとイコールなんです。ただ、「音がいい」という感覚は人それぞれ違うだろうから、「自分にフィットする」と言った方がいいのかもしれません。そういう意味では、僕の場合は鍵盤が思うようにコントロールできないと、ストレスを感じてしまうんです。だから、僕が楽器を演奏する際に一番気にしているは、自分の指と鍵盤のフィッティング、そしてその楽器の響きが空間的に気持ちいいかどうか。この2点ですね。







