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Vol.49:エンジニア間瀬哲史がQUAD-CAPTUREのクオリティを実践チェック

レコーディング/ミックス・エンジニアとしての活躍はもとより、USTREAM配信をはじめとする次世代音楽環境の構築に積極的に取り組む間瀬哲史。自身のスタジオ「cafe2st」のコンセプトや、2009年にPAとして参加した坂本龍一ヨーロッパ・ツアーの秘話などを聞きつつ、一週間に渡りテストしてもらった新製品QUAD-CAPTUREの印象を語ってもらった。

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坂本龍一のヨーロッパ・ツアーでは、
PAをいかに会場の響きと一体化させるかを考えた

─ 間瀬さんのスタジオ「Recording Studio+cafe=cafe2st」は、カフェが併設されているなど、とてもユニークですね(笑)。

間瀬:3年ほど前に、日本一コーヒーの美味しいスタジオを目指して作りました(笑)。元々、スタジオのコーヒーって美味しくないよね、っていう話からスタートした部分もあるんですが、メジャー・アーティストさんの仕事の際は、カフェはクローズしてラウンジとして使うけど、若手のインディーズ・バンドだと、あまりスタジオ代を高くしない分、じゃあカフェを営業させてもらいますよ、という発想なんです。それに、歌録りやソロのダビングでも、業務チックに何時から何時までに録るという感じではなくて、カフェでリラックスしながら、テンションが上がってきたら録りましょうというように、僕も含めて、みんなが音楽を作りやすい環境にしたかったんです。他にも、最近は「Mchan」っていう"音楽D.I.Y.サイト"も立ち上げていて。

─ "音楽D.I.Y."とは、どういったものなのですか?

間瀬:最近って、みんなCDを作れるようになったじゃないですか。でも、肝心の売り方が分からない人は多いですよね。だったら、販売の部分はお手伝いしましょうとか、ミックスまで自分でやれるなら、じゃあマスタリング作業や、プレス工場にデータを送るところを請け負うというように、音楽を作って売るために、自分たちではできない部分を僕らがお手伝いしましょうというコンセプトのWebサイトなんです。

─ それは、アマチュアにとっては嬉しいですね。間瀬さんは、音楽に関わるさまざまな分野を手掛けられていますが、エンジニアとしても、最近はレコーディングやミックスだけでなく、ライブPAも行っているようですね。

間瀬:以前は、どちらかと言うとPAシステムをチューニングするといった仕事が多かったんですが、最近は知人のライブでPAを頼まれたり、あと大きかったのは、坂本(龍一)さんのヨーロッパ・ツアー(2009年)ですね。

─ どういうきっかけで、坂本さんのツアーに参加することになったのですか?

間瀬:そのツアーの前に、坂本さんが日本でシークレット・ライブをやったんです。その時の機材周りの関係者が僕の知り合いで、そのライブPAをやることになったんです。その時に坂本さんが気に入ってくれたのか分かりませんけど、半年くらいして、突然、ヨーロッパ・ツアーの連絡をもらいまして。もちろんすぐに快諾したんですけど、最初はちょこっとヨーロッパに行く程度かと思っていたら、ガッツリ2ヶ月間のツアーでした(笑)。しかも、日本とはもちろん、各国間でも電圧が微妙に違うし、会場に卓(PAコンソール)もないという状況で、すべてを準備しなければいけなかったのは、かなり大変でしたね。

─ どのような準備をしたのですか?

間瀬:まず、スピーカーのスタンドを作るところから始めました。今でも坂本さんがツアーで使ってる物で、あれも僕の会社で作ったんですよ。あと、少人数でツアーを回ることになったので、いろいろ考えた末に、卓はステージ袖に置かせてもらって、僕はノート・パソコンを持って客席に座って、そこから卓をリモート・コントロールしました。ただ「PA」と言っても、僕はリアルタイムにフェーダーをガシガシと動かしたり、エフェクトをかけるようなタイプじゃないですから、もしそういったことを期待されているなら、それは僕ではないと思うということを坂本さんにメールしたんです。そうしたら、坂本さんもホールの響きを活かしたPAにしたいということで、じゃあ、PAを会場の響きと一体化させるにはどうすればいいかという方針で、サウンドを構築していきました。わざわざ築300年とか400年という古いホールばかりを選んで組んだツアーでしたから、坂本さん自身も、ホールによってピアノの鳴りが変わるという部分まで、きちんと表現したいと考えていたようです。

─ 具体的には、どのようにPAシステムを組んでいったのですか?

間瀬:まず2本1組のPAスピーカーを3セット作りました。それで、会場に着いたらホールの響きを確認して、じゃあここは3セット使おうとか、今日は1セットだけにしようと決めていくんです。円形状の天井がすごく高いホールの場合は、別のサブ・スピーカーを用意したり。そういったPAシステムを調整しながら、あとはステージで使っている自動演奏用のグランド・ピアノとのバランスを、坂本さんと2人で微調整しました。ですから、僕としては「PAをやっている」というイメージは持っていなかったんですが、とても貴重な経験でしたね。

─ 今年1月に行われた、坂本さんの韓国公演USTREAM配信(パブリック・ビューイング)のPAも、その流れで担当されたのですか?

間瀬:そうです。TOHOシネマズ六本木ヒルズでのPAをやりました。これも大変でしたね。映画館って音響的に特殊な空間なので、響き方がまったく分からなくて。映画館には、コンパクトな専用スピーカーがあらゆる方向にたくさん取り付けられていて、場内の響きも、サラウンド・オーディオ用に設計されているんです。それで最初は、小型のPAスピーカーをたくさん持ち込んで、ソウルの会場の響きをサラウンドで再現しようという案が出ました。でもその時は、とにかく準備時間が限られていましたし、よく考えてみたら、そもそも僕自身がソウルの会場の響きを知らないわけで(笑)、その案は取りやめて。結局、ヨーロッパ・ツアーで得た感覚を活かして「ここで今、坂本さんが演奏しているかのような響きを再現しよう」という方針で、余計なものは一切使わずに、ツアーで使っていたPAスピーカーだけを使いました。あとは角度ですね。スピーカーの角度によってものすごく音が変わる会場だったので、そこは慎重に調整しました。当日は、映像と音が別系統でソウルから送られてきたんですけど、坂本さんの手元のアップも多いので、映像と音がズレたらダメだし、音はディレイをかけて遅らせられるけど、映像はリアルタイムにズラすことができないとか......。前日と当日の朝に準備は済ませていたんですが、会場はギリギリまで映画館として通常営業していたので、舞台裏は、ものすごく本当に大変でしたね(笑)。

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Profile

間瀬哲史

レコーディング/ミックス/PAエンジニア。1992年にPA会社に入社。1994年に某プロダクション所有のレコーディング・スタジオに勤務した後、コロムビア・スタジオ、レンタル・スタジオ等を経てフリーランスとなり、2003年8月に有限会社セカンドドリップを設立。現在は、スタジオ「cafe2st」を拠点とし、レコーディング/ミックス・エンジニアとしてさまざまなプロジェクトに参加する一方で、音響機材の開発/製造や音楽スタジオのプランニング/施工、CD制作、さらには音楽レーベル「Budding Of Music」を運営するなど、さまざまな方向から音楽制作環境作りのサポートを行っている。

オフィシャル・サイト:
http://cafe2st.blog14.fc2.com/

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